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専門調査報告


さといもの生産・輸入等の動向に係る実態調査

社団法人 農協流通研究所
主任研究員  木村 彰利



1 さといもの国内生産
(1) 作付面積の推移
 さといもの作付面積は、昭和50年の31.2千haから55年には31.7千haに増加したが、それ以降60年には28.5千haと減少し、平成2年以降は、労働力不足、他品目への転換などにより、平成2年26千ha、7年22.4千haと一段と減少傾向している。さらに、平成9年以降は卸売価格の低迷が減少の要因に加わったこともあり、12年以降は20千haを割り込み、14年17.1千ha、15年には16.5千haとなった。過去23年間に15.2千ha(48%)減少し、平成15年は昭和55年の半分になっている。

 さといもの作型は、2月~6月にかけて播種し、7月~12月に収穫する「秋冬さといも」と、12月に播種して6月~7月にかけて収穫する「その他」(トンネルで主に沖縄県で栽培されている)の作型に分けられる。現在では、ほとんどが秋冬さといもの作型である。6月から出荷される早生種については、九州地域の限られた産地で栽培されている。

(2) 収穫量の推移
 さといもの収穫量は、昭和50年の370.2千トンから55年には458.5千トンに増加したが、それ以降は天候などにより変動があるものの、面積の減少もあり、収穫量も減少に転じ、60年には375.1千トン、平成元年363.6千トン、5年299千トン、平成10年258.4千トン、15年には209.5千トンと大きく減少している。
 また、10アール当たりの収量については、過去10年間をみてみても1.04~1.26トンで、平均では1.20トンとなっている。

図1 作型別の作付面積の推移
資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」

(3) 主要産地別の収穫量と出荷量
 さといもについては、野菜生産出荷安定法施行令の一部改正(平成8年)により、平成9年度から秋冬さといもの主たる出荷期間が6月~翌年3月と変更になったため、99%以上が秋冬さといもの作型である。
 平成15年における秋冬さといもの作付面積、収穫量および出荷量の上位5県をみてみると、千葉県が作付面積2,540haで、全国の15.5%の割合を占め、収穫量は34,300トン(単収1.35トン)で全国の16.4%を占めている。次いで、宮崎県が作付面積で1,200ha(全国シェア7.3%)、収穫量で21,800トン(同10.4%)、鹿児島県が作付面積で978ha(同6.0%)、収穫量で12,400トン(同5.9%)、埼玉県が作付面積で905ha(同5.5%)、収穫量で19,400トン(同9.3%)、新潟県が作付面積で726ha(同4.4%)、収穫量で8,250トン(同3.9%)の順となっている。これら上位5県の全国に占める割合は、作付面積で38.7%、収穫量で46.0%となっている。
 秋冬さといもの主産地は、関東および南九州であるが、全国広範囲で栽培されている。

図2 作型別の収穫量の推移
資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」


表1 秋冬さといもの主要産地別作付面積、収穫・収穫量の構成比 (平成15年)




2 さといもの輸入動向
(1) 国内産出荷量と生鮮さといもの輸入量の動向
 平成元年以降の国内産さといもの出荷量と輸入量の動向をみてみると、図3で示すように、出荷量は消費の減少および労働力不足や他の野菜への転換などにより総じて減少してきている。

 出荷量の減少のため、平成2年以降、作型の替わる時期の価格変動が大きく、また、全般的に高値傾向が平成8年頃まで続いたことから、4年までは2千トン以下で推移していた輸入量が5年以降増加した。平成5年の輸入量は10千トンであったが、6年には、高温・長雨などの影響により、生育が抑制され、かつ、病害虫の発生が多かったため、出荷量が前年比22%減少の136.8千トンとなったことから、輸入量が急増して、前年の約3倍の29千トンとなった。

 平成9年には、国内産の出荷量が増えたことに加え、輸入量の90%以上を占める中国山東省産が干ばつの影響で減産したことから、輸入量は大きく減少し6千トンとなった。

 10年以降は、市場価格の低迷が続いたことから、作付面積が減少し、出荷量が再び減少傾向となった。これに対応して輸入量も再び増加傾向を示すようになり、特に12年には、中国産が豊作であったこともあり、20千トン台まで増加した。その後も業務用需要が堅調に伸びたことから、14年24.8千トン、15年29.8千トンと増加し、16年には32.7千トンと過去最高の輸入量となった。

 生鮮さといもの輸入は、国内の不作時に対応するというよりも、作付面積が減少するなかで、特に業務用需要に対応するため、構造的に増加しているとみることができる。

 国内供給量(国内産出荷量+輸入量)に占める輸入さといもの割合をみてみると、4年までは、1%以下であったが、5年には5.8%となり、6年以降は、中国産の不作などで減少した9~11年を除くと、13%以上と高くなっており、15年には過去最高の19.3%まで上昇している。

 この結果、平成元年からの14年間は、国内産出荷量が41%減少したが、輸入量が44.8倍に増加したため、国内供給量は、28%の減少に止まっている。
 11年以降の国内供給量は、150~160千トンで推移しており、一般家庭での消費量も頭打ちとなっていることから、業務用需要により輸入量が変動すると思われる。

(2) 冷凍さといもの輸入動向
 冷凍さといもの輸入について、税番コードが分割された平成2年以降をみてみることにする。冷凍さといもの輸出先はほとんどが中国である。生鮮同様に国内産の作付面積の減少と2年当時の高値傾向から、輸入量は2年13千トン、3年27千トンと倍増し、6年には42千トンとなった。8年には、中国の冷凍加工施設が整備され、低価格、皮むき・整形加工など前処理が行われていることから、業務・加工用などの需要が伸び、過去最高の62千トンとなった。

 9年は、中国山東省産の干ばつに加え、前年の過剰輸入による国内在庫などから54千トンと減少した。しかし、生鮮さといもに比べて数量の減少割合が小さいのは、品質が落ちると言われている浙江省からの輸入が増加したこと、業務用需要が堅調であったことによる。

 10年以降の動向を見ると、14年および15年に中国での残留農薬問題の影響から49千トン台に減少したが、16年には52千トンと回復し、近年は50千トン台の水準で推移している。

 なお、冷凍さといもの輸入については、混合冷凍野菜の中身にも含まれて輸入されていることから、実際の輸入量はもっと多いと考えられる。


図3 国産さといもの出荷量と輸入量の推移

資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」、財務省「貿易統計」


図4 輸入生鮮さといもと冷凍さといもの輸入量の推移

資料:図3と同じ。


図5 生鮮さといもの月別輸入と価格の動向

資料:図3と同じ。


図6 冷凍さといもの月別輸入と価格の動向

資料:図3と同じ。

(3) 月別の輸入動向
 さといもの主産地である中国山東省は、モンスーン気候で、年間平均気温11~14度、年間平均降水量700mmで日本と同様に四季が明確で、農産物の播種期である4~5月に気温が高く、日照時間が長い。北緯で言うと北関東に位置する。作型は、国内と同様で年1作であり、収穫は早い産地で8月中旬であるが、大半の産地は国産の晩生種(10月~12月)と同じである。また、品種は中国の在来種(山東さといも)で、日本でいう土垂に似たものである。

(1) 生鮮さといも
 生鮮さといもの月別輸入量をみると、平成15年の1~5月は3月の3.5千トンをピークに月2千トン台の水準であった。6月は、貯蔵ものの最終となるため、1.5千トンと減少し、7~8月は、1千トンを割っている。9月以降は、新ものの輸入が始まり、また、年末需要に向けて増加し、12月には4.6千トンの輸入量となった。
 16年は、15年とほとんど同じ動きで推移したものの、国内産が9~10月の相次ぐ台風の上陸と長雨の影響で収穫ができなかったこともあり、10月4.3千トン、11月5.6千トンと輸入量が大幅に増加した。
 次に輸入価格(CIF)をみてみる。15年の1~5月は40円/kg前半であったが、6月以降輸入量が減少する時期になると、価格が上昇し、6月55円/kg、7月68円/kg、8月65円/kgとなった。9月以降輸入量が増えるとそれに伴い、再び価格が下がり、年末には40円/kgを下回る水準とった。年平均すると43円/kgであった。
 16年は、1~5月は40円/kgを切る水準であったが、6月以降輸入量が減少する時期になると価格が上昇し、6月49円/kg、7月75円/kg、8月58円/kgとなり、9月以降輸入量が増えるとそれに伴い、再び価格が下がり年末には40円/kg前半の水準となった。年平均すると41円/kgであった。
 このような生鮮の輸入さといもは、国産の端境期などに量販店などの店頭に並ぶこともあるが、そのほとんどは業務用需要である。

(2) 冷凍さといも
 冷凍さといもの月別輸入について同様にみると、10月から翌年1月にかけては年末年始の需要が増えるため、平成15年1月の輸入量は4.7千トンと多く、年末年始の需要が一段落する2月には大きく減少し、2.6千トンとなった。3月以降は再び増加し、9月まで4千トン前後で推移し、10月以降はさらに5千トン台に増加した。
 16年は、15年と同様に推移したが、11月、12月は例年であれば、10月の輸入量と同程度の水準となることが多いが、16年は国内産の不作により、それぞれ7.2千トン、6.9千トンと大きく増加した。
 冷凍さといもは、長期保存ができ、皮むき・整形加工を施した後、冷凍処理された製品であるため、輸入価格は平均すると15年で105円/kgと生鮮の2.4倍と高い。月別の動向では、98円/kg(15年11月)~111円/kg(15年1月)で1年間安定した価格で推移しており、販売先との契約により輸入されていることが伺える。
 16年は、15年に比べて年平均96円/kgと1割弱安いものの、月別の価格の動きは15年と類似しており、88円/kg(16年2月)~99円/kg(15年10月)で推移した。

(4) 国別の輸入量の動向
(1) 生鮮さといも
 生鮮さといもの国別の輸入は、年間輸入量が1千トン以下であった平成元年および2年は、中国、韓国および台湾が中心であった。元年は、中国57.5%、韓国31.2%、台湾8.8%で、2年は、中国41.3%、台湾39.9%、韓国15.2%の割合であった。
 3年、4年と全体の輸入量が増加するにつれて、中国のシェアが高くなり、それぞれ80.1%、92.7%とほとんどが中国産となってきた。
 輸入が多くなった5年以降でも中国産のシェアは高くなる一方で、5年~7年の3年間は、98%台で、8年以降は99%以上となり、11年以降になるとほぼ100%近くが中国産となった。

(2) 冷凍さといも
 冷凍さといもの国別の輸入をみると、生鮮さといもと違い平成2年当時から中国産のシェアが99%以上であり、毎年輸入量が増加し16年まで中国産のシェアも同水準で推移している。
 中国産さといもの生産量の増減が、そのまま冷凍さといもの輸入量の増減につながっていると考えられる。また、冷凍加工業者などが合弁会社を設立し、中国に工場を所有しており、そこでブランチなどを行った後に、冷凍して輸入をしている。

(5) 中国からの輸入
 上述のとおり、国内産の作付面積が減少してきたことから、平成2年以降輸入が増加し、平成6年の国内産が干ばつにより減少した分を埋める形で中国からの輸入がさらに増加した。平成16年には、輸入量全体の中国産が占める割合は、生鮮さといも99.8%、冷凍さといも99.6%とそれぞれほぼ100%近くを占めている。

 そこで、中国から輸入される冷凍さといもの実態について、冷凍加工会社のA社でのヒアリング調査結果を以下に記述する。

 A社が、現在輸入している冷凍さといもは、山東省のもので、9月~2月にかけて輸入しており、ピークは10月~11月である。収穫されたさといもを製品化して中国の冷蔵施設(-25度以下)で貯蔵し、需給動向をみながら日本に輸入している。製品は、合弁で設立した会社の現地工場で加工する場合と、パッカーから買い取る場合とがあり、年々現地工場で加工する割合が高くなり、その割合は現在では50%以上になっている。品種は、中国の在来種で「山東さといも」を使用しており、煮くずれしにくく、国内産と比較しても品質的に余り差がない。

 また、同社は当初関東および九州産を使って製造しており、味も良く、値段が輸入物に比べて3倍でも売れていたが、作付面積の減少から数量を確保することが難しくなったことおよび中国での冷凍技術の発達、手作業による整形・加工の技術が高いということから、中国での生産にシフトしていった。生鮮さといもを整形する場合、歩留まりは30~35%程度である。

 従来、冷凍さといもは業務用向けが99%以上を占めていたが、近年は家庭用52~55%、業務用45~48%と家庭用の需要が業務用を追い越している。これは、包丁を使わず、ただ煮るだけで調理ができ、味も調味料の量などで自分の好きに調整することができる冷凍食品が増えたことによる。家庭用の冷凍食品はほとんど国産さといも使用している。3年前からは、学校給食の使用も増えているそうである。

 この様に冷凍食品が増えた理由としては、同社の社長は、『戦後一貫して発展してきた洋食化傾向が、日本経済のバブルの崩壊と時を共にして、伝統の日本食文化への回帰現象となり、外食への大きな偏りを修正する動きとなった。平成に入って年ごとに増してくる不況感は一時的にせよ、消費者をして中食(特に弁当、惣菜)および家庭内での食事機会を増やすことになった。同じ頃、その他の冷凍野菜の分野においても、和食素材としての、れんこん、乱切りにんじん、ごぼう(乱切り、千切りなど)、たけのこの乱切り、しいたけなどの輸入が急増している。

 冷凍さといもについて、最終的売り場でみてみると、スーパーマーケットの惣菜、コンビニエンスストアの弁当および惣菜、持ち帰り弁当、産業給食などでの利用があげられる。冷凍さといもを利用した代表的な惣菜には、煮っころがし、さといもとイカの煮付け、筑前煮、けんちん汁などがある。しかし、食の傾向が一気に和食に向いたわけでなく、平成8年より洋食系外食産業も力を取り戻し、新たにイタリア、エスニック系の料理も注目を集めている。全体的にいえば、この頃は外食でも内食でも、和風料理、惣菜が大きく見直された時期といえる。』と言及している。

 A社では、国産のさといもについて、現在も九州の産地と契約を継続しており、6年前まで関東の産地とも契約していた経緯がある。消費者は、安全・安心への意識が強いことから、国産原料を使った製品への依存があり、中国産を使った製品の3倍の値段でも購入するという意識がある。製品については、全体の20%程度が国産さといもを使用したものであり、同社としては、安定的な数量が確保できれば国産を使用した製品を消費者に提供したいと考えている。しかし、現状では、国産は価格が高く、農家の高齢化などにより作付面積が減少し、かつ、加工のためのコストが高いことから、国産を原料とした冷凍さといもの販売を増やすことは難しいということである。また、同社としては国産を使用して製品を作るためには、数量の安定供給、一定価格および輸入に勝る品質という3つの条件が必要であるとしている。

 さらに同社では、さといもは現在でも、昔からの品種が各産地で栽培されているが、今後は、加工が容易にでき、皮が剥きやすく、栄養価が高いものといった改良が必要となってきている。このことから、国産の業務用向けシェアの拡大のためにも、新たな品種を種苗会社と協力して開発する必要があると考えている。


3 卸売市場における状況
 東京都中央卸売市場における生鮮さといもの月別入荷量を、国内と輸入に分けてみてみると、平成15年の外国産入荷量は、国産の入荷量の動きとほぼ同じで推移している。総入荷量は年末年始にかけて増加し、外国産の総入荷量に占める割合は1月10.8%、12月が7.7%となっている。その他の月は、3月の9.3%を除いて5%以下となっている。

 平成16年は、国産は前年並みの入荷量で推移したが、一方の外国産は、1~9月まで前年を下回る入荷量となっている。台風などの天候不順から国産の入荷量が10月と12月で前年同月を10%以上下回ったことから、外国産は、10月以降前年を上回る入荷となり、シェアも10月7.6%、11月8.6%、12月11.4%と高くなった。

 このように、総入荷量では15年15,409トン、16年15,057トンと16年は前年比98%と前年並みの入荷量であったことから、国産の不足分を補うような形で外国産が入荷されていることがうかがえる。

 次に、卸売価格の動向をみてみると、平成15年は、1~5月にかけては安定的な価格で推移したが、入荷量が少なくなる6~8月に国産299円/kg(7月)、外国産184円/kg(8月)と高値となるが、入荷量が多くなる9~11月にかけて国産157~194円/kg、外国産80~124円/kgと低下している。再び年末需要で12月になると国産、外国産ともに価格が上昇した。国産と外国産は、ほぼ同じ動きをしており、年間平均では191円/kgとなり、国産196円/kg、外国産96円/kgと外国産は国産の49%の水準で取引されている。

 平成16年は、1~8月まで市況が安値で推移したこともあり、国産は月により若干前後するが平均で前年比80%となったが、外国産については、ほぼ前年並みの価格で推移した。9月以降の国産は、前年に比べて総じて入荷量が減少したことから、価格も上昇して前年比110%となった。外国産については、この時期でも前年並みでの価格となった。年間平均では前年比94.2%の180円/kgとなり、それぞれ国内産185円/kg、外国産96円/kgと国産の52%の水準で取引されている。

 また、この2年間の動きをみてみても、外国産は国産を補完するように入荷されていることから、価格についても、月ごとでは差がみられるものの、ほぼ国内産の50%程度で取引されていることがわかる。


図7 東京都中央卸売市場におけるさといもの入荷量の動向

資料:東京都中央卸売市場年報


図8 東京都中央卸売市場におけるさといもの価格の動向

資料:東京都中央卸売市場年報


4 千葉県におけるさといもの生産状況
(1) さといもの作付面積と収穫量の推移
 千葉県におけるさといもの作付面積は2,700haと全国第1位で15.9%(平成14年)のシェアとなっており、収穫量についても35,900トン、17.2%とやはり全国第1位である。

 千葉県は古くから全国でも有数の産地である。さといも、セレベス、八つ頭を栽培し、主な品種は石川早生、土垂である。定植は3月下旬から5月上旬に行い、収穫については、早いもので8月中旬から収穫し、ピークは9月上旬から12月上旬で、下旬で終了する。

 作付面積の推移をみてみると、昭和50年に5.1千haで全国に占める割合が17.4%であったが、平成元年には3.4千ha、13.6%、10年3.2千ha、15.8%となり14年には2.7千ha、15.9%と減少したがシェァは増加している。面積の減少率をみてみると、昭和50年対比では、全国の42.0%減に比べて千葉県は47.2%減と全国より減少幅が大きかったが、平成元年対比では、全国32.3%減、千葉県20.8%減と減少幅が全国に比べて小さくなっている。

 次に、収穫量の推移をみてみると、昭和50年に45.3千トンで全国に占める割合が12.8%であったが、作付面積の減少もあり、天候の影響などによる作柄変動で増減するものの収穫量についても減少傾向にある。平成元年には51.8千トン、全国シェア15.2%、10年43.8千トン、17.1%となり14年には35.9千トン、17.2%と収穫量は減少しているが、全国シェアは増加している。減少率をみてみると、昭和50年対比では、全国の41.0%減に比べて千葉県は20.8%減と全国よりかなり減少幅が小さく、また、平成元年対比でも全国39.1%減、千葉県30.7%減と減少幅が全国に比べて小さくなっている。これは、栽培している品種にもよるが、農家の栽培技術などにより比較的収量が安定しているためであると考えられる。


図9 秋冬さといもの作付面積の推移(全国に占める千葉県のシェア)

資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」


図10 秋冬さといもの収穫量の推移(全国に占める千葉県のシェア)

資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」

(2) 調査農協の生産状況等
(1) 農業の概要
 今回調査した農協管内の産地は、千葉県北部の北総台地に位置し、標高は40~45mで、耕地の起伏も比較的少なく、大部分が畑作地帯となっている。
 年間平均気温は14℃、年間平均降水量は1,400mmである。土壌は、軽しょう火山灰土のために干害を被りやすく、かつ、冬季の季節風の影響を受けやすい。また、総面積53.9m3で都心より50~60kmに位置している。
 当産地は、明治の開拓以後、純農村として発展してきたが、現在では北部を中心に都市化が進み、昭和46年に東関東自動車道が開通し、昭和53年の新東京国際空港の開港によって、人口が急増している。

(2) さといもの生産状況
 近年の輸入の増加から、生産が縮小し、他の野菜に転換する生産者も増えたことから減少傾向にある。また、さといもの価格が低迷していることから、10アール当たりの収益も年20万円以下と低いため、さといもの専作農家はいないが、さといもは地力を収奪することなく、かつ、労力を比較的必要としないこともあり、農家はローテーションの一つとして作付けを行っている。
 現在生産されているさといもは、品質的にも良く、粘りがあり味もいい。また、輸入の少ない八つ頭、セレベス(系統出荷率60~70%)については、現在も産地として維持されている。
 作型については、3月下旬に定植し、8月上旬から9月上旬まで収穫する石川早生と4月上旬に定植し、11月上旬から12月上旬に収穫する土垂の2つがあり、割合はそれぞれ15%、85%となっている。
 また、生産者は商系、系統のどちらかに出荷する農家にはっきりと分かれている。


表2 A農協管内の作付面積等の推移



表3 さといもなどの市場販売実績


(3) さといもの出荷状況
 さといもの出荷については、30年前は系統出荷率も高かったが、商系の割合が年々増え、現在では全体の10~20%程度までに低下している。その理由は、商系は土付き、洗いなどどの形態でも農家の自由選択で集荷し、業者の貯蔵庫に保存しながら出荷調整を行い、主として業務用に販売されていることによる。商系へは土付きなどで出荷でき、生産者にとって負担が少ないが、系統に出荷(年明け)する場合は、年内に全てを収穫し、一時的に土の中で保管して、出荷の際に再度掘り出して洗浄・調整・箱詰めという行程を踏まなければならないため、平均年齢53歳の農家にとっては重労働であることも系統出荷の割合が減少する要因の一つであると考えられる。

 系統出荷については、生産者が出荷調整を行ったものを管内5カ所にある集出荷場(管内10ヵ所で、さといもは5ヵ所)で集荷し、これまで主として京浜市場の主要4~5社を中心に出荷されてきているが、生産者自らが貯蔵するために出荷が不安定となることもある。市場出荷は、3年前から小分けして5kg段ボールに入れて出荷している。平成16年1月~12月の出荷実績は、表3のとおりである。

 これまで、市場出荷を中心としていたが、近年は外食・量販店などの業務用出荷および管内の2カ所の直売所での販売も行ってきている。業務用については、特定の農家に栽培させており、契約栽培による経営の安定化を図りたいとしている。販売先からの注文は、品質的には問題が全くないのでサイズ(L、M中心)の指定程度である。16年の販売実績は、外食産業754ケース(3,770kg)、量販店19,060パック(500g/パック:9,530kg)である。また、出荷先の割合は近年変わっていないとのことであった。

 今後の課題は、栽培技術、品質などには問題がないことから、高額販売が実現できる販売先の確保、販売方法が確立できれば、今後、作付けが増加する可能性も残されている。そのためには、加工食品メーカとのタイアップを含めた需要開発およびブランド化の推進を図る必要がある。



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