図6 にんじんジュースの月別輸入量と輸入価格
資料:図4に同じ。
にんじん・野菜ジュースは、生鮮にんじんを6~7倍に濃縮した製品であるため、輸入(CIF)価格は平均すると平成15年で250円/kgと高い。月別の動きでは、年初の250円/kgから3~4月には260円/kgにまで上昇し、7月にかけては輸入量の増加とともに230円/kg水準にまで低下している。そして、8~9月は290円/kgと高値で推移し、その後の3ヶ月間も260円/kg水準となっている。
平成16年は、1月が324円/kgと前年同期を20%程上回る水準で始まり、その後も15~20%高い水準で6月まで推移している。下期も7月と10月に310円/kg以上となり、結果として年平均が295円/kgに上昇している。
(4) 輸入相手国別輸入量の内訳
生鮮にんじんの輸入は、年間10千トン程度であった平成5年には、台湾が全体の88.4%を占め、残りがニュージーランド(4.8%)、アメリカ(1.5%)であった。その後、国内産が不作となった翌年の7年には、輸入量が55.6千トンに急増し、そのうち40.4%が台湾、27.4%が中国であったが、その後の2年間は10~30千トン水準で推移し、主に台湾とニュージーランド、アメリカからであった。
平成10年になると、再び30千トンを上回る水準となった。この時台湾が全体の5.9%に止まり、中国が61.6%を占めることとなった。つまり、この時期に相手国が台湾から中国にシフトしている。その後、国内の作柄により輸入量が37~55千トンの間で変動がみられるもの、中国のシェアは、14年72.0%、15年76.5%、16年になると84.8%を占めるまでになっている。
次に、にんじん・野菜ジュースの輸入をみると、輸入量が10千トン未満であった平成5~6年頃は、オーストラリアが全体の50~60%、次いでアメリカが15~20%のシェアであったが、輸入量が常に10千トンを上回るようになった11年頃になると、アメリカからの輸入シェアが高まり初め、12年には41.8%とオーストラリア(40.9%)を上回るようになった。その後2年間この傾向が続き、平成16年には再びオーストラリアが全体の43.3%、次いでアメリカが39.2%のシェアとなった。
このように、生鮮にんじんでは、中国からの輸入が圧倒的に多いのに対して、にんじん・野菜ジュースになると、オーストラリアあるいはアメリカからの輸入が大勢を占めている。この2国に集中している背景は、両国のにんじん生産量が大きいことと、大手野菜ジュースメーカーがアメリカとオーストラリアにジュース工場を保有しており、そこで濃縮加工した原料を輸入していることが大きいと思われる。
(5)中国からの輸入
上述のように、平成5年頃までの生鮮にんじんの輸入は主に台湾、オーストラリアからであったが、平成10年の国内産の不作を契機に中国の産地開発が進み、中国からの輸入の占める割合が大きくなり、平成16年には輸入量の84.8%となった。
そこで、中国から輸入される生鮮にんじんの実態を、輸入商社のヒアリング結果に基づいて以下では整理してみることとする。
日本に輸出される生鮮にんじんは、7~11月は山東省の北部および内モンゴル(8~11月)のものである。このうち、11月に山東省で収穫されたものが貯蔵され12月~1月にかけて輸出される。また、2月以降になると、産地が南の福建省(廈門周辺)に移り、6月まで輸出されている。ただし、6月になると気温が上昇するために、輸出途中での「カビ」や「トロケ」の発生リスクが高まると言われている。
ヒアリングを行った輸入商社によれば、かつて日本で最も作付面積が多い「向陽」の栽培を試みたが、山東省、内モンゴルともに定着せず、現在は「黒田五寸」、「新黒田」となっている。また、福建省では、数年前までは中国在来種が栽培されていたが、一昨年に「サカタ7寸」の栽培が始まり、それ以後品質の安定が図られたとのことである。
輸入した生鮮にんじんは、惣菜メーカーや外食企業向けに乱切りやきんぴら用千切り加工を行う加工メーカーに販売することが多い。そのため、規格は歩留まりの良い200g(2L)以上のサイズを指定する加工メーカーが多く、中国サイドの輸出業者にはLサイズの混入率を30%以内にするように指定している。輸入時の荷姿は、20kg段ボールが標準で、B品のみ20kgネットでの荷姿も扱うとのことである。
また、輸入については、基本的には販売先である加工メーカーからのオーダーに基づいて行うが、国内産地の作柄状況や市況などをにらみ、市場に品薄感がある場合には、販売先の受注以外に自主判断で上積みを行うこともあり、業務用の顧客を抱える一部の卸売市場に相対指値販売を行うこともある。
販売先との契約は、ねぎのように年間需要が安定している場合には、年間契約あるいは中国産地の出荷シーズン毎に契約を結ぶことが多いが、生鮮にんじんのように、国内産の作柄に受注が大きく影響される品目は、月単位の契約あるいは受発注に基づく輸入・販売が多いようでる。
販売先からの受注から納入までのリードタイムは、約2週間であり具体的には図7のとおりである。
図7 生鮮にんじんの受注から納入までの手順
出所:聞き取り調査より作成
なお、中国産の生鮮にんじんは、山東省、内モンゴル、福建省をリレーすることで年間供給が可能とのことであるが、通常は、国内産が品薄となり市況が高まる春先から6月頃の輸入が多く、春先に500トン/月(5コンテナ/週×25トン)程度の輸入から始まり、その後300トン/月(3コンテナ/週×25トン)になり、秋口以降は100~200トン/月(1~2コンテナ/週×25トン)前後の輸入を行っている。
また、輸入に当たっての品質管理上の問題点は、6月にカビやトロケなどの問題が発生することがある以外にクレームはほとんどないが、中国で皮むき加工したものを輸入すると、原因や発生のメカニズムは不明であるが、煮物にした時に仕上がりが黒くなる場合があるようである。
輸入にんじんの多くは、上述のように惣菜メーカーや社員食堂などを運営する外食企業や、これらの企業に下処理製品を納入する食品加工メーカーに販売されることが多く、これらの部門では、一般のレストラン業と比較し、惣菜や給食メニューを手頃な価格で提供しているため、食材コストも低めに押さえなければならない(にんじんの場合卸売価格50円/kg以下と考えられる)。この条件で国産の利用可能な秋期については、国産を使用することになるが、時期が限定される。
このため、国産にんじんと同じ品種(黒田五寸など)である場合が多く、一定価格で利用できる期間が長いこと、作業性の良い大きなサイズだけを利用することができ、さらに、加熱調理用の食材として利用する場合には、国産にこだわる必要がないなどの判断も加わり、中国からの輸入にんじんの需要が高まっているものと考えられる。