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産地紹介 野菜情報 2022年11月号

産地紹介:長野県 JA長野八ヶ岳 『太陽に一番近いはくさい』 ~立地条件を生かして次の日には食卓へ~

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長野八ヶ岳農業協同組合
農業部企画振興課長 篠原 康彦
はくさい写真

1 産地の概要

 長野県東部に位置する長野八ヶ岳農業協同組合(以下「JA長野八ヶ岳」という)は、群馬県・埼玉県・山梨県に接し、千曲川の源流を有する秩父山系から八ヶ岳山麓に広がる標高1000~1500メートル地帯となっている。
 高原野菜生産および畜産を経営の主とする純農業地帯であり、平成13年に小海町・川上村・南牧村・南相木村・北相木村の1町4村の5農協が合併して本年度で21年目を迎えた(図1)。

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 年平均気温は8度前後、年間降水量1500ミリ弱で盛夏でも30度を超えることはほとんどない(野辺山観測所)。この冷涼な気温を生かして、はくさい、レタス、キャベツ、ブロッコリーなどを中心に約30品目のみずみずしく柔らかい高原野菜を栽培している。
 管内の野菜耕作面積は、主力のはくさい1307ヘクタール、レタス1448ヘクタール、キャベツ類421ヘクタール、非結球レタス418ヘクタール、ブロッコリー198ヘクタール、その他173ヘクタール、合計3965ヘクタールとなっており、令和3年の販売品取扱高は図2の通りである。

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2 産地形成の歴史

 昭和の初め頃は、林業や養蚕で生計を立てる生産者が多かったが、昭和9年に試験的に導入したはくさいの結果が良かったことから、10年には増産体制を組んで大阪市場へ販路を拡大し、産地として歩み出した。第二次世界大戦が始まり、生産は一時中断されたものの、その後、レタス栽培と併せ、産地形成がされていった。41年には栽培面積が国の要件を満たし、野菜指定産地となっている。
 栽培技術では、40年代にポリマルチ導入、40年代後半には木箱から段ボール化、貨車輸送からトラック輸送への切り替え、予冷施設導入と大きく環境が変化していった。また、パイロット事業による畑地造成や潅水施設などの整備も進み、50年代に入ると現在の全面マルチ高畝栽培や直播からペーパーポット移植栽培が普及し、品質・数量とも格段に向上した。その後、セル育苗などが導入され、生産者は、品質向上と安定生産体制の構築に努力してきた(写真1)。

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3 農産物の生産2000万ケースの維持と適正生産

 JA長野八ヶ岳では、はくさい、レタス、非結球レタスなどの野菜生産者から生産計画を取りまとめ、市場の入荷期待量など需給バランスを考慮し、重要品目については旬別に生産目標数量などを示して生産誘導を行っており、農産物の生産2000万ケースを維持している。
 現在、管内のはくさい農家戸数は、川上地区181戸、南相木地区22戸、小海地区31戸、南牧地区114戸、野辺山地区54戸の合計402戸である。
 東京、大阪を中心に、名古屋や福岡などにも出荷しており、出荷期間について、夏はくさいは従来の7月以降からを6月以降からへ、秋冬はくさいは従来の10月までを11月まで拡大し販売数量が平均的になるよう取り組んでいる(図3)。

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 また、販売に不可欠な産地情報について、新たな取り組みとして農業用アプリを用いて出荷量の予測を行い、市場関係者や実需者と産地情報の共有化を図ることで有利販売に繋げるための試験運用を始めている。
 さらに、はくさいなどの主力品目だけでなく、総合的に供給可能な産地として新品目および新品種の試験栽培に取り組んでいる。新たに定着する品目は少なく、試行錯誤を繰り返しているが、新品目開発以外に加工・業務用の新たな規格への対応や、それらに適応する品種の選定試験を行うなど、日々研さんを重ねており、新たな販売アイテムを拡大し、実需者要請に柔軟に対応した販売体制の構築と生産者所得の確保に取り組んでいる。

4 安全・安心生産体制の確立

 主力のはくさいをはじめ、年間2000万ケースの農産物を生産販売するにあたっては、安心安全対策本部を設置し、危機管理体制と内部チェック体制を強化している。農薬の管理使用に際しては地域の野菜協議会が毎年更新発行する「栽培防除日誌」において農薬適正使用と記帳を指導している。また、出荷前には栽培履歴の提出と確認を実施し、安全性が確認された農産物出荷を行っている。産地での自主的な残留農薬分析を年間約180検体実施し、安全性の証明のほか、その結果については検出農薬の傾向や他産地の事故例など踏まえ、生産者への啓発に活用している。
 農薬の適正使用に加え、GAP(生産工程管理)の手法を取り入れ、チェックシートによる生産者確認を実施している。異物混入防止や、食品衛生、作業者の労働安全管理など総合的な安全・安心生産体制により商品と産地の安全性を発信し、安心・信頼できる産地作りに努めている(写真2)。

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5 持続力のある産地づくり

 どの産地でも長年同じ品目を作付けしていると、連作障害の発生に悩まされる。異科作物との輪作を考慮して生産計画を立てるものの、特にはくさいなどの主力品目はどうしても連作になる傾向が高くなる。
 効果的な予防技術としては、薬剤や品種特性に頼るところが大きく、農薬・種苗メーカーの協力を得ながら、各支所地域特性に合わせた防除技術の確立や品種選定のための試験を年数回実施し、情報提供と新技術の普及につなげている。試験は、担い手となる若手生産者を中心に依頼しており、新情報の共有や情報交換を行い、お互いの技術研さんや経営に対する刺激にもなっている。
 外国人実習生の受け入れなどにより一戸当たりの生産量は増加し、その結果、圃場(ほじょう)の回転率は2~3回転と20年前より高まっている。
 「降っても照っても強い産地作り」を目標に生産基盤作りを行ってきたが、近年では高冷地であっても30度近い高温や、線状降水帯で見られるような短期間の大雨など環境変化も大きく、作柄安定に向けた更なる対策が求められている。
 当管内では、畜産酪農業も盛んで県内有数の飼育頭数を有しており、各畜産酪農家で製造された堆肥は、はくさいなどの生産圃場へ投入され、地域資源の循環がなされている。これら地域資源の有効利用と合わせ、土壌診断の結果に基づいた適正施肥の実施やJA全農長野のオリジナル配合肥料「私の肥料」の活用により、コスト低減と環境に配慮した持続可能な農業生産を推進していきたい(写真3)。

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6 10年先を見据えた成長戦略と生産者への情報提供

 農業の行く末を案じることはよく聞かれるが、当地区は担い手農家の生産意欲もあり、産地として今後も伸びる要素はあると考えている。この先10年を考えると、資材・肥料・農薬などの新たな開発に伴い、それらの資材に対応できる農家の技術も必要になる。
 現在、スマート農業として取り組み始めた営農支援プラットフォームサービス「あい作」やドローンなどのセンシング技術(センサーと呼ばれる感知器などを使用してさまざまな情報を計測して数値化する技術の総称)を活用したはくさいなどの栽培管理はまだ技術的に難はあるが、今後進めていく中で変更、改善されていくものと考えている。

7 おわりに

 野菜の生産販売状況は、生産コストの上昇やコロナ禍での需要減退、労働力確保の不安定さなどもあり、生産者にとって非常に厳しい状況が続いている。
 少子高齢化などに伴い、流通や食が多様化しており、消費量も減少傾向にある。顧客との取引において、価格はいくつもの条件により成立するが、相手の信頼を得て継続していくために大事なことはやはり、鮮度や歩留まりなどの品質にあるのではないだろうか。
 安全安心は当たり前として、良い物を送り続けてこそ相手の満足もあり、継続されるのではないだろうか。いつの時代であっても、基本は品質であると考えている。
 野菜を調理して、ぜひ子供たちに食べさせていただきたい。野菜は日本人の大事な食料であり、野菜嫌いな子供がなくなるよう、一人でも野菜が大好きな子が増えるよう、産地として新鮮な野菜の出荷を続けていきたい。

 

◆一言アピール◆

 JA長野八ヶ岳は、夏場の晴天と少ない降水量により、高原特有の霧と昼夜の気温差が大きいことから、野菜の生産には最適で、冷涼な気候と溢れる太陽の光で、甘くて柔らかく、みずみずしいはくさいを生産しています。ぜひご賞味ください。

◆お問い合わせ先◆

 担当部署:長野八ヶ岳農業協同組合 農業部企画振興課
 住  所:〒384-1305 長野県南佐久郡南牧村大字野辺山79-7
 電話番号:0267-91-0100
 FAX番号:0267-91-0200
 ホームページ:https://www.ja-yatugatake.iijan.or.jp/