(1)新規就農で若手が多数
表に産地概要を示す。部会の生産者の平均年齢は49歳で、親元就農する若手生産者が比較的多く、この10年間で15人が就農した。このように若手が「農家を継ぎたい」と思える理由がいくつか挙げられる(写真1)。
第一に、部会の1経営体当たりの平均農業所得は1500万円となっており、「稼げる」ことが、事業承継後の経済的安心感につながっている点である。第二に、若手に任せる風土がある点である。部会の一員として、産地の販売戦略や計画出荷の重要性・実践方法などの理解を図るため、就農したての後継者でも部会役員に抜擢するという風土がある。早い段階から部会運営に携わり、個々の経営だけでなく、部会という一つのチームで全国各地の市場に売り込みをかけることなどを通じ、農業経営者としての意識向上が醸成されている。それらを経験した若手部会員は、生産にますます意欲的になる。第三に、地域の後継者世代同士のつながりが新規就農への好循環を生んでいる点である。若手の部会員の多くは、町内会や消防団などの地域活動に参加しており、他産業に従事する若い人たちと交流する機会がある。そのような集まりで、若手部会員同士が交わす熱い農業の話を、親元就農していない他産業勤めの後継者候補が見聞きし、農業に魅力を感じ、自然と就農に興味を示す。このような好循環が、産地を次世代につないでいく潤滑油となっている。
(2)栽培面に関する見直し
現在のように、部会の平均農業所得が1500万円を超える産地に成長するまでには、部会存続の危機にさらされたこともあった。20年ほど前の平成15年、その前年の冷夏の影響により品質が振るわず、市場関係者からの評価が下がり、例年10億円前後の販売額を維持していたところから、5億円台に急落してしまった。危機感を感じた部会は、これを機に品種や栽培方法など各方面の見直しに取り組み始めた。
ア 品種の見直しと計画生産
まず、品種の見直しを行った。市場が求めるすいかは、甘みと水分のバランスが良く、果肉が柔らかすぎずシャリ感があるものだった。そこで、大玉向きで地域の特性に適した品種として、「祭りばやしNK」を独自開発した。
また、6月上旬から7月下旬まで切れ目なく出荷するため、この祭りばやしNKをメイン品種とし、その他の品種も加え、栽培方法や定植時期などを組み合わせ、作型を九つに細分化して栽培カレンダーを作成した(図3)。このカレンダーを基に、全生産者に作付け割合を順守するよう求め、計画生産を行っている。
イ 振り分け整枝栽培技術の導入による大玉比率の向上
平成15年以降、部会は市場出荷に加え、量販店への契約出荷の強化も始めていた。この契約販売に当たり、量販店と情報交換する中で、カットすいかのニーズが高まっていることを把握した。このニーズに応えるためには、2L、3Lサイズの大玉を安定的に生産する必要がある。従来、部会で行ってきた栽培方法は、「多づる栽培」というつるの誘引が不要で栽培管理を省力化できるものであった(写真2)。しかし、この栽培方法は、つるが交差して葉が茂るため、どのつるにいくつ着果しているかを把握しづらく、また、玉の数にばらつきがあるため、大玉を安定して生産することができないという課題があった。そこで、部会では、石川県農林総合研究センターで開発された「振り分け整枝栽培」技術に着目した(写真3)。この方法は、すいかを千鳥植え(株を互い違いに配置すること)に定植して条ごとに同じ方向につるをまとめて誘引する方法であり、株当たりの着果数と着果位置を容易に把握することができる。幾度もの現地実証を経て、適合する技術に昇華し、効果を確認してから導入した。また、よりおいしいすいかを出荷するために、交配した日を木札に記し、「着果標識(着果日を示す目印、写真4)」として
圃場に掲示するよう徹底している。これにより、交配日を基準として計算した目安となる出荷予定日や、圃場の生育状態をより正確に把握できるようになった。
これらを全生産者に普及することにより、平成15年までは40~60%だった大玉比率が、この取り組み以降は65~80%まで大きく向上した。