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産地紹介 野菜情報 2026年4月号

長崎県 JA島原雲仙 ブロッコリー産地として 50年以上、これまでの研鑽とさらなる進化へ

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島原雲仙農業協同組合 西部基幹営農センター 営農指導課 係長 田中 慶輔

1 産地の概要

 島原雲仙農業協同組合(以下「JA島原雲仙」という)は、長崎県にある「雲仙普賢岳」を囲む島原半島の雲仙市・島原市・南島原市の3市を管内としている(図1)。島原半島は、長崎県の東南に位置する半島で、総面積は、県全体の11.3パーセントを占めている。普賢岳(1359メートル)を中心とした雲仙山系と、それに連なる東西南北約30キロメートル四方の緩やかな丘陵帯および海岸沿いに広がる平野部からなっている。平地に乏しく、農地は、傾斜地で細分された耕地が分散している。しかしながら、土壌、気象などの自然条件に恵まれ、土地生産性および労働生産性が高く、耕地面積は、1万1230ヘクタールで、長崎県全体の25パーセント、農業粗生産額は、同じく47パーセントを占める、県下随一の農業地帯である。
 JA島原雲仙管内の総農家戸数は8093戸で、生産する農畜産物は、「いちご」、「畜産」、「ばれいしょ」、「だいこん」、「にんじん」、「ブロッコリー」、「レタス」などさまざまな品目がある(表1)。
 
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2 雲仙ブロッコリー部会の概要とその歴史

 JA島原雲仙のブロッコリー部会(以下「部会」という)は、島原半島の西側に位置する雲仙市の吾妻町、愛野町、千々石町を中心に栽培している。この地域の気候は、年間平均気温が約16.8度、年間降水量は約1991ミリメートルで、温暖多雨の条件下にある。
 雲仙ブロッコリーの生産の歴史は古く、54年前の昭和47(1972)年にブロッコリーの試作を開始して以降、生産量を伸ばしてきた。当時は、ブロッコリーをはじめ、はくさい、かぼちゃ、カリフラワーなど、複数品目の栽培に取り組んだが、その中でも価格の回復が早く、なおかつ安定しているブロッコリーは、栽培面積が増加した。平成10(1998)年に畑地基盤整備事業(山田原畑地基盤整備事業)が始まると、それまで狭く生産性が悪かった丘地の整備が進み、ブロッコリーの産地化が進んだ(表2)。
 今では、若手農家も多く、ブロッコリー専業が多くなった部会も、発足当時は、ブロッコリー生産を複合経営の中の一部として位置付けた生産者が多く、計画出荷および計画販売が難しい状況のため、安定した価格での販売に結びつかず、農業経営の中で、魅力ある品目とは言えない状況にあった。このため、ブロッコリー専業の農家を育成して産地化を図るため、JA島原雲仙と部会が一体となった取り組みを始めた。
 ブロッコリー専業化へのカギは、「省力化」および「規模拡大」だった。セルトレイ育苗と半自動移植機を導入し、山田原畑地基盤整備事業の着工に合わせ、(うね)内部分施用機や成形機、マルチャーなどの機械を導入することにより、機械化栽培体系を確立した。
 また、春どり栽培を始めたことで、長期出荷ができるようになった。従来のブロッコリー栽培は、年内から年明け収穫を中心とした栽培体系で、4~10月に出荷することは難しいとされていた。特に、春どり栽培(4~5月どり)を導入するためには、厳寒期(1~2月)に定植する必要があり、低温時期の育苗および栽培方法の確立が必要であった。この課題の解決方法として、生育温度を確保するため、マルチ被覆およびべたがけ資材を導入することにより、この時期の定植に成功し、春どり栽培が可能となった。
 さらに、平成13(2001)年には、段ボール箱を、それまでの3キログラム縦詰めから、6キログラム横詰めに切り替えたことにより、出荷調整作業が大幅に省力化され、一層の規模拡大が進んだ。現在は、全量JA島原雲仙での共同選別となり、生産者は、栽培および収穫作業に専念できる生産体系を構築するなど、これらの取り組みにより、生産者の省力化と、規模拡大による計画販売で、価格低落のリスク回避が可能となり、経営の安定化につながった。
 現在、部会の部会員数は66人で、栽培面積は約240ヘクタールとなっている。1戸当たりの平均面積は3.6ヘクタールで、1品目の栽培面積としては規模が大きい。規模拡大、単価向上による「儲かる農業」の実現や、部会内に若手後継者会を設立(平成27年)するなどの活動により、当初10人で設立した若手後継者会も、今では31人となるなど、若手生産者が増加し、生産者の平均年齢は55歳と、他の品目と比べて若手が多い部会である。
 約50年前の基盤整備の着工から、産地化の取り組みによるブロッコリー専業農家の増加、若手農家の増加、平成23(2011)年には、発砲スチロールでの氷詰め出荷および全量共同選別による省力化などを進めた結果、令和4(2022)年の部会の販売実績は10億円を超え、大きく成長した(図2)。
 
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3 栽培の概要

 部会では、主要15品種を中心にリレー栽培し、秋冬から春まで切れ目なく長期どりを実践している(表3)。
 1月定植などの厳寒期の作型において、マルチ被覆やべたがけ資材を活用することにより、4月の端境期に出荷できるようにしている。
 マルチについては、すきこみ後、土壌中の微生物と加水分解によって水と炭酸ガスになる生分解性マルチフィルムを使用している。既存の農業用ビニールを使用すると、片付けにかかる労働力と廃棄費用を要するため、生分解性マルチを導入することは、省力化と経費の削減につながる。
 
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 雲仙市は中山間地であり、梅雨期や夏季の大雨により畑地からの土壌が流亡するため、カバークロップ(緑肥作物)の栽培を行い、表土の流出対策や土作りを行っている(写真1)。緑肥は主にソルガムを使用している。そのほか根こぶ病の蔓延している圃場(ほじょう)は、おとり大根(根こぶ病に抵抗性があり、植付けにより根こぶ病まん延の抑制につながる)を作付けしたり、近年では、肥料が高騰しているため、減肥を目的とし、マメ科緑肥のクロタラリアも導入するなどしている。また、緑肥には、土壌流亡対策のほか肥料分の供給や物理性の改善、硬盤(こうばん)破砕や病害虫対策など、さまざまな効果が期待できるため、目的に応じた緑肥の栽培を行い、地形や気候に合わせた対策や土壌改善を行っている。
 
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 播種 (はしゅ)は7月から始まり、緑肥を細断後、本圃の準備を行う。播種はセルトレイの128穴を使用する。培土はN100を用い、覆土は根張りの向上、茎・葉の堅強、徒長(とちょう)防止のために、ケイ酸・カルシウム資材を使用している。育苗は、無加温ハウス内で管理し、夏の高温期にはハウス内の上部に遮光資材を設置して温度が上がりすぎないようにする。育苗箱を並べる際には、台の上にエキスパンドメタル(金属材に千鳥状の切れ目を入れながら引き伸ばし、菱形や亀甲形の網目状に加工したもの)や鉄パイプを設置し排水や風通しを良くする(写真2)。
 本圃については、作付けは排水が良い圃場を選定するが、排水が悪い圃場や水田での作付けをすることもあるので、そのような場合は明渠(めいきょ)や補助暗渠(あんきょ)などを施工して排水対策を行う。基本的には定植前日に、平高成型同時施肥機で元肥施肥と(うね)たてを同時に行う(写真3)。元肥についてはサンソワーで側条施肥を行い、肥料の吸収効率を上げることで減肥ができ、コストの削減につながる。
 定植は、本葉が2.5~3枚程度になったら行う。定植前日から当日に殺虫剤と黒すす病薬剤の(かん)注処理を行う。
 春作は定植後、不織布を用いてべたがけを行う(写真4)。不織布が風で舞うことがないようにピンでとめる。定植直後にべた()けを開始し、花蕾が出蕾し2センチメートル程度のころに撤去する。定植後は、根の活着促進のためかん水を行い、活着後は追肥と中耕を行う。追肥は、年内どりは定植から20日後に中耕と同時に1回のみ、年明けどりは定植から20~30日後に1回目の追肥、2回目は生育状況や天候に応じて行うが、基本的には1回目の追肥から1カ月程度で行う。水田裏作では場合によっては3回目の追肥を行う。
 
タイトル: p051
 
 ブロッコリー栽培において、病害虫防除は重要な作業である。秋冬作はチョウ目害虫、黒すす病、黒腐病、菌核病を中心に防除を行う。春作についてはチョウ目害虫、アブラムシ類、黒すす病、軟腐病を中心に防除を行う。近年、黒すす病の発生が多くなっており暖冬年は冬作も黒すす病の発生が見受けられるため、シーズンを通して黒すす病の防除は行う。また、薬剤抵抗性を持たせないために、同じ系統の薬剤を散布しないよう防除体系を組んでいる。
 定植後、60~120日(収穫日数は時期・品種で異なる)で収穫開始となる。収穫はLサイズ(12~14センチメートル)になったものを拾いどりするため、同じ圃場で何回も収穫作業を行う必要がある。秋作や春作の高温期は、1週間~10日ほどで収穫できるが、厳寒期は1~1.5か月程収穫にかかる。収穫は包丁で茎の下から切り、その後、外葉を切り取り、花蕾の先端から16センチメートル未満の長さにそろえるよう茎をもう一度切る(写真5)。
 収穫したブロッコリーは、出荷用コンテナに入れ選果場へ持ち込む。出荷用コンテナは20キログラムコンテナのほか、軽トラックに合うよう作成したブロッコリー専用の木枠(写真6)を使用している。
 収穫後は、JA島原雲仙に持ち込み、JAの選果場(または予冷庫)で一晩予冷を行う。翌日に選別・氷詰めを行い、市場へ出荷する。
 
タイトル: p052a

4 鮮度保持対策と選果体制の強化

(1)氷詰め出荷による鮮度保持対策
 JA島原雲仙および部会では、ブロッコリーの品質評価は、鮮度にあると考えている。「鮮度=産地の信頼」をモットーに、徹底した鮮度保持対策および品温管理に努めてきた。生産者個々の予冷庫の整備をはじめ、収穫から出荷までの品温上昇を防ぐため、テクミラーシート(断熱被覆シート)を使っている。段ボールの内袋についても、さまざまな鮮度保持袋を使用してきたが、平成18(2006)年に導入したMA包装技術(外気からの酸素の取り入れと二酸化炭素の排出の量をコントロールし青果物の鮮度を保つ包装資材の技術)による鮮度保持フィルム「P-プラス」の導入により、ブロッコリーの鮮度保持が飛躍的に向上し、遠隔地販売が可能になった。
 しかしながら、4月以降の暖候期(当地区においては4~6月)においては、輸送中における黄化など、品質事故の発生がなくなることはなく、消費地での評価を落としてしまうこともあり、暖候期における品質保持対策が課題となった。この状況を打開するため、平成23~24(2011~12)年にかけて、国庫補助事業を活用して低温流通施設を整備し、製氷機(写真7)を導入した。氷詰めによるブロッコリーの出荷(写真8)は、それまで行っていたどの対策よりも、品質保持に優れ、鮮度を保ったまま消費地に届けることができるようになった。これにより、他産地との差別化が図られたばかりか、契約販売など、さらなる販路の拡大ができた。現在は、関東市場を中心に、関西および中国地区の市場を含め、9社との取引を続けている。暖候期ばかりでなく、シーズンを通して氷詰め出荷することにより、市場および販売店のニーズに応え、鮮度感をアピールし、さらなる顧客確保に努めていきたいと考えている。
 安全・安心の取り組みはもとより、「事故ゼロ」を目指し、部会員一同、鮮度の高いブロッコリーを消費者に届けるよう日々努力しているところである。
 
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(2)選果体制の強化
 一方で、選果場においては新たな課題が発生していた。選果作業量が多い日には、選果作業を行う人員が不足し、逆に作業が少ない日は過剰になる状況となっていた。さらに、選果の作業処理が追いつかず、残業の発生や翌日への作業持越しなども起こっており、確立したコールドチェーンでの高品質出荷に支障をきたしていた。
 そこで、スマート農業実証プロジェクトを活用し、光センサーと機械学習による画像認識システムを搭載した選別機を導入した(写真9)。選果作業のスピードアップによる選果工程の効率化、省力化、省人化、また選果作業を行う人員と、発砲スチロールにブロッコリーを詰める人員を区分することで、熟練作業員だけでなく、パート作業員など経験の浅い人員でも箱詰めができるようになり、効率的に処理ができるようになった。スピーディーな選果作業は、品質低下を防ぐことができ、既存の発泡氷詰め、冷蔵トラック輸送によるコールドチェーンと合わせることで、さらに遠方の消費地まで新鮮なブロッコリーを出荷することが可能となった。
 
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5 販売戦略の次の一手

 このように、JA島原雲仙および部会では、徹底した鮮度保持対策および品温管理に努めてきたが、近年は大消費地から遠い産地において、氷詰め出荷は必要条件となってきており、他産地においても氷詰め出荷が進められ、他産地との差別化が薄まりつつある。
 そこで次の一手として、出荷予測システムを活用し、市場へ正確な産地情報を提供することを目標に掲げた。ブロッコリーは、気温の推移など天候に大きく生育が左右される品目である。そのため、消費地へ正確な出荷情報を提供するのが難しい。そこで選果機と同様、スマート農業実証プロジェクトで出荷予測システムを導入した。
 出荷予測システムは、NTTデータの営農支援プラットフォーム「あい作」を活用し、部会内のブロッコリー生産圃場の基本情報を登録するとともに、栽培管理情報(品種、定植日等)を入力する。それらを基に、メッシュ気象データや過去の栽培・出荷実績を取り入れたアルゴリズムを活用し、指導員の経験則も反映した収穫時期および出荷量を予測するものである(図3)。
 現在、この「あい作」での出荷予測を基に、市場へ定期的に情報提供を行い、市場はこの情報を基に販売先の量販店やスーパー、バイヤーへつなぎ、商談を行っている。
 市場からの出荷予測情報は好評で、「数値やグラフ化で見やすく、販売先との商談もスムーズに行えている」や「増えてくるタイミングで特売を組みやすく、その逆もあり、無駄な特売をしなくて済む」などの意見があり、出荷予測情報は価格の下支えとなっている。
 今後も、産地が一体となり、鮮度保持対策はもちろんのこと、正確な産地情報を提供し、市場および販売先のニーズに応え、さらなる顧客確保に努めていきたいと考えている。
 
タイトル: p054a

◆一言アピール◆

 ブロッコリーは鮮度が命。温度変化に弱く、鮮度が落ちやすいため、発砲スチロース箱に氷詰めして低温を保ったまま最高の状態でお届けしています。生産者が鮮度管理にこだわり抜いた、自慢のブロッコリーをぜひ味わってください。
〇おすすめの食べ方~つゆびたしブロッコリー~
【材料2人分】
・ブロッコリー(切ったもの)1株分 ・かつお節適量
・めんつゆ(2倍濃縮タイプ)大さじ2 ・マヨネーズ適量
【作り方】
(1)ブロッコリーをお湯で2分ゆで、ザルに上げて湯切りする。(ゆで時間は目安です。お好みで調整してください。)
(2)めんつゆを加えてあえ、器に盛る。マヨネーズ、かつお節をかける
※ブロッコリーはゆでたら水にさらさず、温かいうちにめんつゆとあえることで、味の染み込みが良くなります。
 
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◆お問い合わせ先◆

担当部署:島原雲仙農業協同組合 西部基幹営農センター
住  所:長崎県雲仙市吾妻町永中名1208-7
電話番号:0957-38-2121
FAX番号:0957-38-3344
ホームページ:https://ja-shimabaraunzen.com/