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産地紹介 野菜情報 2025年11月号

東京都江戸川区 ~ THE POWER OF KOMATSUNA ~

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江戸川区役所 産業経済部 産業振興課 農業係 柳田 佑輝
野菜写真

1 産地の概要

 東京都江戸川区(以下「本区」という)は、東京都の東部に位置し、東を流れる江戸川を挟んで千葉県と向かい合っている。荒川や江戸川という大河川に囲まれ、東京湾に面している点が特徴である(図1)。陸域面積は40.4平方キロメートルで、その中でも、農地面積は令和6年時点で46.9ヘクタール(陸地面積の1.2%)に及び、都市農業の一翼を担っている。なお、水田はない。
 令和5年度時点で、主にこまつな(2677トン)、トマト(73トン)、えだまめ(72トン)、だいこん(54トン)、しゅんぎく(41トン)、高菜(23トン)などが栽培・収穫されている。このほか、花の産地としても有名で、東京の夏の風物詩として有名な入谷朝顔市で使用されている「アサガオ」の多くは、本区で生産されている。
 本区を代表する農産物は、何といっても先にも述べたこまつなである。日本各地で作られているこまつなだが、本区は全国でも有数のこまつなの生産地で、その収穫量は都内で最も多く、都内収穫量の約40%を占めている。
 本区の農業産出額(令和5年産)は、13億1200万円で、東京23区内で第1位である。その内訳は、野菜12億1800万円(92.8%)、花卉(かき)7600万円(5.8%)、その他1800万円(1.4%)となっている。野菜の中でも、こまつなの産出額が最も多く、6億3000万円と本区の野菜産出総額の半分以上(52%)を占めている
 
※出典:東京都農作物生産状況調査結果報告書(令和5年産)
 
タイトル: p032b

2 江戸川区とこまつな

 本区はこまつな発祥の地であるといわれており、そのルーツは江戸時代までさかのぼる。諸説あるが、小松川村(江戸川区)に鷹狩りに来た徳川8代将軍の吉宗公に、地元で採れた菜っ葉を入れて作ったすまし汁を献上したところ、とてもおいしいと喜ばれ、この菜っ葉に名前がないことを知った吉宗公は、地名から「こまつな」と命名したと伝わっている。
 そんな吉宗公も認めた江戸川区育ちのこまつなのおいしさの秘密は、本区の土壌にある。本区は東京湾に面しているため、海からの潮風の影響により、土壌にミネラルが多く、なおかつうま味と甘味を高めているといわれている。本区の農家数は266戸(令和6年時点)で、その多くがこまつな栽培に取り組んでおり、先祖代々、こまつな栽培に携わっている農家も多い。区内の農業者は、その高い技術と伝統を受け継ぎ、誇りをもって本区特産のこまつなを栽培している(写真1、2)。
 
タイトル: p033a

3 生産・栽培上の特徴

 都内の市場に鮮度の高いこまつなを出荷できることも、本区ならではの特徴である。こまつなは主にハウスで栽培されており、他の作物に比べ成長が早く、生育期間が比較的短いため、1年に複数回収穫が可能である。これにより、作付けの延べ面積を増やすことで土地利用効率を高めている。ほぼ1年を通して収穫が可能なため、安定した供給が可能となっている。
 また、品種拡大の面においては、新たな取り組みとして生食用のこまつな「サラダこまつな」の販売も開始した(写真3)。加熱調理が多いこまつなだが、区内農家と弘前大学、本区により発足した「えどがわ農業産学公プロジェクト」の研究により、生でもおいしく食べられることが実証されている。生で食することができる「サラダこまつな」は、小ぶりでいて、えぐみが少なく、また甘味が強く、茎も葉も柔らかくもシャキッとした食感とみずみずしい味わいが楽しめる。
 
タイトル: p033b

4 出荷の工夫

 収穫されたこまつなは、主に市場出荷されるほか、直売所での販売や、区内外の飲食店や学校給食へ納品されている。特に学校給食では、本区内の小中学校の9割以上が本区産のこまつなを使用して地産地消が推進されるなど、地域の住民の食卓に届きやすい産地と消費者の距離の近さが魅力である。出荷の際の特徴としては、他の産地のものは、袋詰めで販売されているものが多い中、本区産のこまつなは袋詰めをせず、かつ根を切らず、茎をテープで留めて結束して販売することにこだわっている(写真4)。茎も根もシャキッと美しく束ねられたこまつなは、高鮮度・高品質の証である。
 
タイトル: p034a

5 本区のこまつなPR・販売促進事業

 本区では、特産品であるこまつなへの関心を深め、ひいては地域に愛着を持ってもらうため、「小松菜PR・販売促進事業」を展開している。
 一つ目の取り組みは、こまつなPR冊子『小松菜力。』の発行である(写真5)。こちらは主にこまつなのトリビアや直売所紹介、こまつなを使用したメニューなど、こまつなに関する情報をさまざまな角度から取り上げ、紹介している。このほか、区内のこまつな商品を扱う店舗を掲載し、商業と農業で連携しながら集客向上・地域活性化を図り、さらに、特産品であるこまつなの認知度アップや消費拡大を目指している。
 二つ目の取り組みは、「小松菜グルメスタンプラリー」の開催である(写真6)。前述したこまつな取り扱い店舗で対象メニューを食べるとスタンプがもらえ、その数に応じてえりすぐりの逸品(区内ホテルのペア宿泊券や江戸川区産旬の野菜・小松菜土産セットなど)が抽選で当たる企画となっており、このイベント開催によってさらなるこまつなの消費の拡大を図っている。
 そのほかにも、大型ショッピングモールと提携し、「小松菜まつり」の企画・運営を行っている(写真7)。こまつな商品の出店・販売、JA直売部会による新鮮野菜の販売などを行い、令和6年度には約3000人が来場するなど、毎年盛り上がりを見せているイベントである。
 このように、区を挙げて刊行物の作成やイベントの企画・運営をすることにより、本区特産のこまつなの品質や味の良さを知ってもらい、区内だけでなく、区外の方のこまつなの購入意欲向上につなげていきたいと考えている。

タイトル: p034b

タイトル: p035
 

◆一言アピール◆

 江戸川区のこまつなは、長い歴史の中で、農家の技術・伝統・誇りが受け継がれてきたことに加え、本区特有の土壌で育てられたことにより、うま味・甘味が豊かであることが特徴である。サラダから炒め物まで幅広く活躍し、毎日の食卓を彩る江戸川ブランドのこまつなを見かけた際は、ぜひご賞味いただきたい。

◆お問い合わせ先◆

担当部署:江戸川区役所 産業経済部 産業振興課 農業係
住  所:東京都江戸川区中央1-4-1
電話番号:03-5662-0539
FAX番号:03-5662-0812
ホームページ:https://www.city.edogawa.tokyo.jp/shigotosangyo/jigyosha_oen/index.html