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産地紹介 野菜情報 2025年9月号

鹿児島県 JAいぶすき  テントウムシと育てた指宿(いぶすき)のオクラは生産量日本一

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いぶすき農業協同組合 営農企画課 課長 物袋 夏樹
オクラ

1 産地の概要

 鹿児島県のいぶすき農業協同組合(以下「JAいぶすき」という)は、薩摩半島の最南端に位置しており、鹿児島市喜入(きいれ)地区・指宿市・南九州市()()地区の三つの市にまたがる広域合併JAである(図1)。組合員数は、9322人(うち正組合員5549人)、役職員数は205人、農畜産物販売高は199億円(うち肉用牛など畜産が89億円〈45%〉、野菜は46億円〈23%〉)である。管内の耕地面積約8400ヘクタールのうち9割は畑で、九州最大のカルデラ湖である池田湖(写真1)の水を利用した畑地かんがい施設が整備されており、日本一の生産量を誇るそらまめやオクラ、かぼちゃ、かんしょ、にんじんなど多彩な野菜が作付けされ「南の食料基地」の役割を担っており、鹿児島県内のJAの中でも野菜の生産量が多いことが特徴である。
 
タイトル: p034b

2 JAいぶすきのオクラ生産の特徴

 オクラは、日本には幕末から明治初期の頃に伝来し、昭和の半ばから一般的に栽培されるようになった(写真2、3)。指宿市では、昭和25年頃から試験的に栽培が開始されたといわれており、本格的にハウスでの栽培が開始されたのは40年代で、生産拡大のきっかけは、南薩畑かん事業(注)による基盤整備により施設建設が容易になったためである。
 JAいぶすき管内にある指宿市のオクラの作付面積は約360ヘクタール、生産量は約4100トンで、オクラの収穫量は全国1位の実績となっており、JAいぶすき管内で鹿児島県産オクラの約8割のシェアを誇る。
 また、指宿市では、「地域資源を活用した市民の健康づくりとヘルスビジネスの創出」実証プロジェクト(オクラ版)を立ち上げ、オクラ・オクラ種子の利活用による健康への効果検証事業として、産学官医および市民が連携して社会実証を行うとともに、その事業化を推進している(写真4)。

(注)南薩畑かん事業は、昭和45年から平成にかけて国営および県営で実施された事業。シラスなど保水性の乏しい火山性土壌に覆われた南薩地帯一帯は、干ばつに悩まされており、周辺の農地を潤すべく事業がスタート。池田湖を調整池とするが、雨水だけでは必要な水量が足りないため、頴娃町を流れる3河川の余剰水をトンネルで池田湖に流し込み、蓄えられた水をくみ上げ、畑地まで送水パイプで配水する仕組み。このパイプラインの総延長は約1300キロメートル(鹿児島から静岡までの距離に匹敵)におよび、総受益面積は6000ヘクタール以上となった。この事業により南薩地帯一帯は収益性の高い農業経営が可能となった。
 
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3 オクラの栽培と出荷

 オクラは代表的な夏野菜の一つで、平均気温が20度以上になる時期から栽培が可能になる。JAいぶすき管内では、加温栽培も多く、ハウス栽培が2月中旬から、トンネル栽培が3月中旬から、露地栽培が4月中旬頃から順次播種(はしゅ)を始め、ハウス栽培の収穫が4月上旬から始まる。また、温泉の熱を利用した加温栽培も実施されており、1年を通して栽培されている品目である。美しい花(写真5)をつけるオクラであるが、成長が早いため、花が咲いてから収穫まで通常7日ほどのところ、夏場のピーク時には4日ほどと短くなることから、オクラの栽培期間中は、生産者は毎日休むことなく、早朝から収穫に追われることになる。
 収穫したオクラは、通常、コンテナや(かご)に入れて全国各地の消費地に出荷する。指宿市では、収穫したオクラをネットに袋詰めにする「詰め子」という仕事が存在し、栽培農家との分業が明確化されている。「詰め子」は、地域の非農家の雇用先としても一役買っている。
 
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4 「安全・安心」への取り組み

 指宿市はオクラの生産量日本一であるが、化学農薬だけに頼らない栽培技術であるIPM栽培(IPMは、Integrated Pest Managementの略で、総合的病害虫管理と訳される)にも取り組んでいる。
 生物的防除(害虫を捕食する天敵となるテントウムシなどの利用など)(写真6、7、8)や物理的防除(防虫ネットなど)を組み合わせ、総合的に病害虫を管理するIPM栽培の推進により農薬散布の回数を減らせるため、農薬の経費削減や、重労働となっている夏季の農薬散布などの労力の削減につながっている。また、環境や生態系への負担を減らしつつ、消費者ニーズに応じた減農薬栽培により産地としてのイメージアップにもつながるなど、人と環境に配慮したオクラ栽培となっている。IPM栽培により、10アール当たりの労働時間は年間24時間短縮でき、コストは3万円低減できることが実証され(実証時点)、IPM栽培に取り組む農家数も増えている。これらの取り組みが認められ、「令和4年度未来につながる持続可能な農業推進コンクール」において、九州農政局長賞を受賞した(写真9)。
 
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5 おすすめの選び方と食べ方

 鮮度の良いオクラは、果実基部のヘタや(がく)の周辺に黒い斑点がなく、全体に濃い緑色で、産毛がしっかり生えているものである。オクラの実を刻んだときに発生するネバネバは食物繊維のペクチンによるもので、ほかにもβ-カロテン、カルシウム、マグネシウムなどの栄養素を含んでいる。おすすめのオクラのお好み焼きを紹介する。
 
【オクラのお好み焼き】(写真10)
 (1)オクラをサッと洗い、水気を拭き取る。
 (2)オクラとキャベツをみじん切りにする。
 (3)水(150ml)を入れたボウルに山芋入りお好み焼粉を入れ、スプーンで混ぜる(ダマが少し残る程度)。
 (4)(3)の生地に(2)の刻んだオクラとキャベツ、天かす、卵を入れて空気を含ませるようにスプーンで混ぜる。
 (5)中火にしたフライパンに生地の半分を流し込み、約2cmの厚みに丸く広げる。
 (6)約3分経過したら、その上に豚バラ肉を乗せてひっくり返す。
 (7)フタをして4分蒸し焼きにする。
 (8)しっかりと火が通ったら、さらにひっくり返して3分焼く。
 (9)お皿に盛り、ソース、青のりをかけて完成。
 
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◆一言アピール◆

 JAいぶすきは、多くの品目で全国有数の産地になっており、南の食料基地として、消費者の皆さまに「安全・安心な農産物」を届けられるよう産地づくりに努め、これからもさまざまな取り組みをしていきたいと考えています。お近くの量販店などで「JAいぶすき産」を見かけた際は、ぜひ手に取りご賞味ください。
 JAいぶすきが経営する直売所「あっど!いぶすきみのり館」では、管内の旬の農産物を販売しているので、近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
 また、産地直送で管内農産物の宅配も承ります。詳しくはJAいぶすき販売課(0993-35-3414)までお問い合わせください。
 
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◆お問い合わせ先◆

担当部署:いぶすき農業協同組合
所在地:鹿児島県指宿市山川成川3830
電話番号:0993-35-3414(販売課)
ホームページ:http://ja-ibusuki.or.jp/