全国農業協同組合連合会福岡県本部(以下「JA全農ふくれん」という)なす部会(以下「なす部会」という)は、現在(令和6年度)、県内6JAに加入する計377戸の生産者で構成されている。福岡県南部の筑後平野に位置するJAみなみ筑後、JA柳川、JAふくおか八女を中心に、JA糸島、JA筑前あさくら、JAたがわの県内地域をまたいで生産を行っている(図1)。福岡県産ブランド「博多なす」は、ハウス施設での促成栽培による冬春ものが中心であるが、一部の地域では、雨よけ栽培や露地栽培による夏秋ものの生産もあり、周年での供給体制の強化に取り組んでいる。
なす部会の設立は平成12年であるが、福岡県のなす栽培の歴史については、50年以上前までさかのぼる。昭和48年に県内統一品種「黒陽」の栽培をスタートしたことが、現在のブランド「博多なす」の普及への第一歩となった。その後、生産面・販売面において産地が継続して努力し、品種を「筑陽」、単為結果性品種
(注1)「PC筑陽」へ更新し、販売は京浜市場、京阪神市場への販路拡大に取り組んできた。
(注1)受粉せずに果実が形成される品種。
「博多なす」は地域団体商標であり、令和5年度産で50周年を迎え、その間、部会・JA・県が一体となってブランド産地育成に向け、努力を重ね、今日では全国で認知されるブランドなすとしての地位を築き上げている。
令和5年度産(8月~翌7月)におけるなす部会の栽培面積は88ヘクタール、出荷数量は1万1411トン、販売金額は49億円となっている。
現在は、98%の生産者が「PC筑陽」を栽培している。PC筑陽は漆黒紫色の太長果形で、単為結果性のため単花処理や虫媒による受粉がなくても着果肥大する。また、果実のヘタや茎葉にトゲがなく、栽培管理や収穫、袋詰めでの作業効率の向上につながっている(写真1)。
本県の冬春作の栽培は、8月下旬から9月上中旬にかけて定植が始まり、9月下旬から翌年7月上旬まで収穫される(図2)。11月下旬頃から4月下旬にかけては暖房機を設置した加温栽培で生産されており、光合成促進装置や環境測定装置を導入し、データに基づいた栽培管理をしている(写真2、3)。
