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産地紹介 野菜情報 2025年3月号

岐阜県 JAひだ 肉厚で甘くて柔らかい栄養満点の「飛騨ほうれんそう」

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飛騨農業協同組合 営農部園芸課 和田 将弘
ほうれんそう

1 産地概要

 飛騨農業協同組合(以下「JAひだ」という)は、岐阜県の飛騨地域を管内とし、岐阜県の北部に位置する(図1)。管内の総土地面積は、4178平方キロメートル(石川県、福井県の面積とほぼ同じ)で、そのうち88%を森林が占め、耕地面積はわずか1.87%と典型的な中山間地域である。この地域は、3市1村(高山市、飛騨市、下呂市、白川村)からなっており、令和6年12月現在の総人口は10万2300人、世帯数は4万1909世帯となっている。管内を概観すると、 東に3000メートル級の乗鞍岳をはじめとする北アルプスや御岳山、西に2700メートルの白山連峰を望み、高い山々に囲まれた地域である。気候は、地域や標高によって差があるものの、全般として冷涼で冬期は積雪が多く、本店のある高山市における年平均気温は11度、年平均降水量は1699ミリメートル、一日の寒暖差は年間を通じて10度前後となっている。
 令和5年度における管内の農畜産物販売額は219億円で、そのうち野菜は51.4%の112.5億円となっている(表)。令和6年の飛騨蔬菜(そさい)出荷組合ほうれんそう部会の部会員数は281人、作付面積は166ヘクタール(平均作付:4.2回/年<延べ面積698ヘクタール>)、出荷量は5580トン(155万箱)、販売額は40億円となっている。
 
タイトル: p034b

2 飛騨式雨よけハウスと肉厚で甘くて柔らかい栄養満点の「飛騨ほうれんそう」

 ほうれんそうは暑さに弱く、15~20度の冷涼な気候を好み、かつては都市近郊で夏以外の期間に生産される野菜であった。飛騨地域でほうれんそうの栽培が始まったのは、今から約60年前の昭和30年代である。当時、夏が涼しい飛騨地域でも雨が降ると立枯病(たちがれびょう)を引き起こすことから、ほうれんそうの夏作は難しいといわれていたが、飛騨地域で開発された「雨よけハウス」による栽培技術の導入で本格的な生産を開始した(写真1)。飛騨式雨よけハウスの特徴は、ビニールフィルムのほぼ全面を巻き上げによって換気できる点である(写真2)。日中は冷涼な外気を取り入れつつ、雨よけ効果により収穫量が安定したこともあり、生産農家が増加した。その後、真空予冷施設の導入などにより、夏場の暑さによる品質低下を克服し、高品質な夏ほうれんそうとして高い評価を得るようになった。
 高標高地(約300~1200メートル)で栽培される、管内のほうれんそうは、日中に光合成により栄養分を蓄え、気温が下がる晩から朝にかけて糖分をためる。高冷地の気象条件と生産者の高い技術が、葉に厚みがあり甘くて柔らかい「飛騨ほうれんそう」をつくり出している(写真3)。
 JAひだでは、ほうれんそうの収穫後、生産者が調製・袋詰め・箱詰め作業(1箱3.6キログラム入り)を行い、管内10カ所の集荷場に持ち込み、直ちに真空予冷装置(写真4)で20~25分かけて5度まで冷却される。予冷されたほうれんそうは、コールドチェーンで鮮度を保持したままの状態で京阪神や関東などの店舗まで輸送される。出荷最盛期は5~10月である。
 
タイトル: p035

3 飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会「若菜会」

 飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会には、20~40歳代の若手生産者の勉強会である「若菜会」が組織されている。若菜会の現在の会員数は60人程度となっており、若手生産者同士の横のつながりとともに、先輩農家やほうれんそう以外の葉物類の産地を訪問する勉強会、量販店での消費宣伝活動など、産地の発展を目指してさまざまな活動を行っている(写真5、6)。飛騨地域も、高齢化による生産者数の減少や雇用労働力不足(調製作業員)などの課題を抱えており、ほうれんそう部会と若菜会が中心となり、生産基盤の維持とさらなる産地の発展を目指している。
 
タイトル: p036a

4 飛騨ほうれんそうを盛り上げる取り組み

 ほうれんそうは幅広く料理に使用される食材の一つだが、消費者アンケートを取ると、おひたしで食べる人が多い。ほうれんそうをもっといろいろな料理に取り入れていただくため、生産者が普段家庭で食べている料理のうち、特に簡単で短時間で作れるレシピなどを、リーフレットやインターネットなどを通じて広く紹介する活動を行っている。レシピについては、以下のホームページでも紹介している。

○飛騨ほうれんそうの生産農家のお母さんたちが考案したレシピの紹介
https://www.ja-hida.or.jp/product/recipe/pdf/10.pdf

○梅花女子大学食文化学科の皆さんが考案したトマト・ほうれんそうのレシピブック
https://www.ja-hida.or.jp/product/recipe/tomato_spinach.php

 また、「飛騨ほうれんそう」を消費者に認知していただき、より身近なものに感じていただくためにイメージキャラクターの「ひだのほうちゃん」(図2)を商品袋や出荷用段ボールにも印字し、消費宣伝活動や販売促進資材などに活用している。
 
タイトル: p036b

◆一言アピール◆

 ほうれんそうは、おひたし、炒め物、和え物、スープなど、どんな調理法にも合い、1年を通じて栄養満点の食卓づくりにかかせない食材である。自然豊かな飛騨地域で育った、肉厚で甘くて柔らかい栄養満点の「飛騨ほうれんそう」を是非ご賞味下さい。

◆お問い合わせ先◆

担当部署:飛騨農業協同組合 営農部園芸課
住  所:〒506-0001 岐阜県高山市冬頭町15-1
電話番号:0577-36-3880