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産地紹介 野菜情報 2025年1月号

京都府 JA京都 ~盆地特有の寒暖差と「丹波霧」で育まれた「聖護院かぶ」~

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京都農業協同組合 営農部 企画営農課 係長 能瀬 伸昭
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1 産地の概要

 京都農業協同組合(以下「JA京都」という)は、北は日本海沿岸の京丹後市から南は京都市に隣接する亀岡市まで、京都府の北部・中部にまたがる広域JAで、京丹後市、宮津市、与謝野郡(与謝野町・伊根町)、福知山市の一部、京丹波町、南丹市、亀岡市、京都市右京区京北を管内としている(図1)。
 気候は、管内北部は日本海側気候により冬季は多くの積雪があり、中部・南部は山に囲まれた山間部や盆地を形成する平たん部がある内陸性気候で、昼夜の温度差が大きい地域である。この各地域の気候を活かした農産物生産振興が管内各地で展開されている。

タイトル: p028c
 
 2023年度の米を除く販売品取扱高は21億8886万円で、うち7割強の16億1200万円が野菜となっている。その他には花き類(コギクなど)、林産物(「丹波くり」など)、果樹(「京たんご梨」)などが栽培されている。
 管内で生産されている野菜の中には、京みず菜、賀茂なす、聖護院(しょうごいん)かぶなど「京のブランド産品(野菜については「ブランド京野菜」と呼称)」に認定された品目が、産地指定を受けて生産されている(表1)。京のブランド産品は、安全・安心と環境に配慮して生産された京都産農林水産物の中から、(1)京都らしいイメージ(2)出荷単位としての適正な量の確保(3)品質・規格を統一(4)他産地に対する優位性や独自性の要素がある―の四つの条件を満たしているものが認証を受け、これに「京マーク」(図2)を表示して流通させている。
 
タイトル: p028c
 

2 聖護院かぶの生産状況

 「聖護院かぶ」は、安土桃山時代の慶長年間に栽培が始まった近江かぶが原種とされ、江戸時代の享保年間に、現在の京都市左京区聖護院に住む農家が、近江(おうみの)(くに)堅田(かたた)から近江かぶの種子を持ち帰り改良し、聖護院かぶが誕生したとされ、その後、聖護院地区を中心に長く栽培されてきた。
 その「聖護院かぶ」の京都府内最大の産地が、亀岡市である(図3)。亀岡市は周囲を山に囲まれた標高約120メートルの盆地であり、盆地の中心には大堰(おおい)(がわ)(桂川の上流域)が流れ、その中でも丘陵地である亀岡市篠町が栽培に適していることから、現在では当地区が府内における生産の中心地となっている。昼夜の気温差が大きく、11月には「丹波(たんば)(きり)」と呼ばれる霧が発生し、これらの当地域特有の環境が、引き締まった聖護院かぶを育むのに最適であることから、2007年にブランド京野菜の産地指定を受けた。その品質は市場において高く評価され、特に京都の冬の特産品である「千枚漬け」の原料として重宝され、一大産地を形成している。

※丹波霧が圃場を覆う様子は、機構ホームページの以下のURLからご覧いただけます(https://youtube.com/embed/ExxUUf4KFE4)。
 
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 JA京都では、京野菜など地域に根差した野菜の生産出荷を行う「JA京都京野菜部会」を生産者で組織し、栽培技術や出荷調製作業の高位平準化を図るための部会活動を展開している。聖護院かぶにおいても「JA京都京野菜部会篠支部かぶら部会」を組織し、18人の生産者が日々の栽培管理や出荷時の調製について相互共有を行いながら、さらなる品質向上に向けて切磋琢磨している。
 生産出荷状況は、生産面積はブランド産地指定を受けた2007年の18ヘクタール、販売金額は2013年の1億7500万円をピークに減少傾向となっており、2023年度は13.5ヘクタール、販売金額は7825万円となっている(図4)。生産者の高齢化に伴う1戸当たりの栽培面積の減少とともに、栽培地域で宅地化や工業用地への転用などが進み、栽培圃場の減少に拍車がかかっている状況にある(写真1)。
 
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3 聖護院かぶの栽培と出荷

 聖護院かぶは連作障害や害虫の被害を受けやすいことから、播種(はしゅ)から生育初期の8月下旬から10月中旬までの管理は特に注意をしている。また、ブランド京野菜の産地として「京都こだわり栽培指針」に基づき、農薬や化学肥料の使用を減らした栽培に取り組んでいる。
 栽培は露地栽培のみで、8月下旬から9月中旬に播種を行い、その後、間引き、追肥・中耕を行い、11月中旬頃から収穫が始まり、12月から翌1月中旬が出荷のピークとなる(表2)。
 収穫は鮮度保持のため、霧が漂う早朝から作業を行い(写真2)、圃場で葉を切り落とし、気温が上がらないうちに生産者個々の調製作業場に持ち込み、丸ごと洗える洗浄機で泥などの付着物を手作業により取り除いて、聖護院かぶを美しく整え(写真3)、出荷規格(表3)に準じて厳格に選別し、ダンボールに詰めていく。
 荷造り後は、産地内にあるJA京都の集出荷施設へ持ち込み、京都卸売市場へ出荷する。
 
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4 販売戦略

 聖護院かぶは、京都の冬の特産品として親しまれている「千枚漬け」の原材料としての販売が大半を占める(写真4)。このため、消費者には聖護院かぶそのものではなく、千枚漬けなどの漬物での提供が主となっている。生産者部会では安全・安心で信頼ある高品質な聖護院かぶの生産を目指し、栽培管理記録簿の記帳や栽培技術の高位平準化に取り組み、有利販売につなげている。
 近年は漬物だけでなく、新たな需要喚起を目指し、京野菜部会女性部による料理レシピの作成やイベントなどでの販売促進活動を通じ、多くの消費者へその魅力をPRしている。また、企業とのタイアップにより加工食品(スープなど)の販売を行うなど新たな取り組みを行っている。
 
タイトル: p031

◆一言アピール◆

 JA京都では、京都独特の気候を生かし「京野菜の産地」として消費者のご期待に応えるため、生産者が一丸となって丹精込めて生産に取り組んでいます。聖護院かぶは、緻密で歯ごたえがあり、漬物だけでなく、さまざまな料理において「主役」としても「名脇役」としても風味と食感を楽しんでいただくことができます。ぜひ、京都の雰囲気を感じながらご賞味ください。

【料理レシピ】 麻婆かぶら
 ◆材料◆
  聖護院かぶ・・・1/3個    豚ひき肉・・・100g  ごま油・・・適量
  しょうが、にんにく・・・適量  きざみねぎ・・・適量
  豆板醤・・・小さじ1      片栗粉・・・大さじ1
  (A)とりがらスープ・・・150cc  しょうゆ・・・大さじ1
    みそ・・・大さじ1  酒・・・大さじ2  砂糖・・・小さじ1
 ◆つくり方◆
  (1) 聖護院かぶの皮を厚めにむき、2cm角に切り、やわらかくなるまでゆでる。
  (2)(A)を混ぜ合わせる。
  (3) フライパンにしょうが、にんにくを入れて炒め、豚ひき肉、豆板醤、(A)を入れ炒める。
  (4) 豚ひき肉に火が通ったらゆでた聖護院かぶを入れて絡ませ、水溶き片栗粉、ごま油、
     きざみねぎを入れてなじませると完成。

◆お問い合わせ先◆

担当部署:京都農業協同組合亀岡中部支店
住  所:京都府亀岡市曽我部町寺西川1-1
電話番号:0771-29-5723
FAX番号:0771-25-4446
ホームページ:https://jakyoto.com/