「聖護院かぶ」は、安土桃山時代の慶長年間に栽培が始まった近江かぶが原種とされ、江戸時代の享保年間に、現在の京都市左京区聖護院に住む農家が、
近江国堅田から近江かぶの種子を持ち帰り改良し、聖護院かぶが誕生したとされ、その後、聖護院地区を中心に長く栽培されてきた。
その「聖護院かぶ」の京都府内最大の産地が、亀岡市である(図3)。亀岡市は周囲を山に囲まれた標高約120メートルの盆地であり、盆地の中心には
大堰川(桂川の上流域)が流れ、その中でも丘陵地である亀岡市篠町が栽培に適していることから、現在では当地区が府内における生産の中心地となっている。昼夜の気温差が大きく、11月には「
丹波霧」と呼ばれる霧が発生し、これらの当地域特有の環境が、引き締まった聖護院かぶを育むのに最適であることから、2007年にブランド京野菜の産地指定を受けた。その品質は市場において高く評価され、特に京都の冬の特産品である「千枚漬け」の原料として重宝され、一大産地を形成している。
※丹波霧が圃場を覆う様子は、機構ホームページの以下のURLからご覧いただけます(https://youtube.com/embed/ExxUUf4KFE4)。
JA京都では、京野菜など地域に根差した野菜の生産出荷を行う「JA京都京野菜部会」を生産者で組織し、栽培技術や出荷調製作業の高位平準化を図るための部会活動を展開している。聖護院かぶにおいても「JA京都京野菜部会篠支部かぶら部会」を組織し、18人の生産者が日々の栽培管理や出荷時の調製について相互共有を行いながら、さらなる品質向上に向けて切磋琢磨している。
生産出荷状況は、生産面積はブランド産地指定を受けた2007年の18ヘクタール、販売金額は2013年の1億7500万円をピークに減少傾向となっており、2023年度は13.5ヘクタール、販売金額は7825万円となっている(図4)。生産者の高齢化に伴う1戸当たりの栽培面積の減少とともに、栽培地域で宅地化や工業用地への転用などが進み、栽培圃場の減少に拍車がかかっている状況にある(写真1)。