野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 愛媛県 JAおちいまばり ~しまなみ彩野菜(伊予美人<さといも>)の取り組みについて~

産地紹介 野菜情報 2024年12月号

愛媛県 JAおちいまばり ~しまなみ彩野菜(伊予美人<さといも>)の取り組みについて~

印刷ページ
越智おち今治いまばり農業協同組合 営農振興部 営農指導課 西部 純一
imo

1 産地の概要

 愛媛県今治市は、愛媛県の北東部・瀬戸内海のほぼ中央に位置し、タオル、縫製、造船などを基幹産業として発展をとげた商業都市である。中心市街がある平野部や、緑豊かな山間部、瀬戸内しまなみ海道が架かる世界有数の多島(たとう)()を誇る島しょ部からなる変化に富んだ地域が、越智今治農業協同組合(以下「JAおちいまばり」という」)の管内となっている(図1)。また、農業については瀬戸内の温暖な気候を利用したかんきつ栽培が盛んであり、地域農業の柱となっている。野菜についても、多品目多品種の野菜が栽培されている。JAおちいまばりでは、管内で採れた野菜を「しまなみ彩野菜」としてブランド化し、国内屈指の売上げおよび規模を誇る複合型大型直売施設「さいさいきて屋」などで販売するなど、地産地消にも取り組んでいる(図2)。
 
タイトル: p030b
 
 JAおちいまばりの令和5年度販売品取扱高は59億9979万円となっている(表1)。このうち、野菜は8億1876万円であり、全体の14%を占めている。主な品目はきゅうり、さといも、なすなどである。
 愛媛県の令和5年産のさといもの生産量は、全国第4位となっている。JAおちいまばりのさといもの生産は、約10年前の平成25年は、作付面積が約7ヘクタール、生産量が68トン、販売高が1608万円であったが、直近の令和5年は、作付面積が約39ヘクタール、生産量が759トン、販売高が2億750万円と、この10年で作付面積は約6倍、生産量と販売高は10倍以上に増えており、JAおちいまばり野菜全体の4分の1を占める主要な品目である。

2 産地づくりの取り組み

 JAおちいまばりのさといも栽培の歴史は、平成24年の葉タバコ廃作に伴う品目転換を機に、部会員21戸、栽培面積約2ヘクタールからスタートした(写真1)。
 JAおちいまばりでは、平成28年から農家所得増大に寄与することを目的とし、管内20カ所で組合員と意見交換会を開き、課題を整理して制定した所得増大に向けた七つの方針「レインボープラン」があり、(1)指導体制の強化(2)販売戦略(3)生産資材の安価供給体制構築と農機事業の充実(4)農業経営支援体制の確立(5)農業ファンづくりと労働力支援(6)地域における課題解決(7)担い手の育成と活力ある産地づくり―からなる。
 また、この中で、7品目を重点推進品目として掲げたが、その一つにさといもを選び、生産量を重点的に拡大していくこととした。
 令和6年度のJAおちいまばりの里芋部会は、部会員数86人、部会員の平均年齢は59歳であるが、直近3年で新規部会員が28人増加し、その平均年齢は49歳と多くの若い世代が栽培を始め、新旧メンバ-でおいしいさといもを作るため、日々切磋琢磨をしている(写真2)。
 新規部会員に対しては、生産拡大に向けた助成や栽培管理の支援を行った。また、後述するが「愛媛さといも広域選果場」により集荷ロットの拡大や長期安定出荷、コスト低減の取り組みなどが進展した。このように、生産から販売までをトータルでサポートした結果、JAおちいまばり管内では平成30年から令和元年にかけて、農家1戸当たりの所得が61%増加した。
 
タイトル: p031
 

3 生産・栽培上の特色

 さといも栽培は水田を活用できることが大きな強みである。水稲の作業とも競合せず湿害もないが、連作を嫌うため、多くの生産者は、前作で水稲を栽培した場所でさといもを栽培し、栽培する圃場(ほじょう)を入れ替えながら、水稲や麦との輪作を行っている。主な作型は図3の通り。3~4月に定植し、夏場の暑さに負けず、かん水や除草、施肥や防除をしっかりと行っている(写真3)。さといもの栽培期間中は生育に大きく影響する水の管理が重要であるため、夏場には2~3日に1回かん水を行っている。病害虫の対策にも注力し、水を切らさないよう管理し育てたさといもは、夏頃には背丈ほどの草丈になる(写真4)。収穫は、葉がある程度倒れた9月下旬頃から始まり、翌4月まで長期間にわたり出荷を行っている(写真5、6)。丁寧に掘り起こしたさといもは、一株ずつ土を落としながら分割して収穫する。
 
タイトル: p032

 手作業の農家と機械化している農家があり、掘り取りのみを機械化した部会員や、定植から掘り取りまですべて機械化一貫体系とした部会員までさまざまな体系があり、作付規模によりその面積と労働力に見合った機械を選択し栽培を行っている(写真7)。機械は各部会員で購入するが、新規参入や増反を行う部会員に対しては、農協から機械の半額助成(1機械の上限は35万円、1農家の上限は50万円)を行っており、機械化の導入に当たる栽培規模の分岐点はおよそ1ヘクタールと見込んでいる。このように部会員とJAおちいまばりが協力して機械化一貫体系や、栽培規模に応じた機械の導入を推進することにより、省力化につながり、栽培面積の拡大が実現した。また、前述の通り、これらが農業所得の増大にもつながっている。
 また、その他の取り組みとして、重労働となる収穫などの作業については、JAおちいまばりが人材派遣会社と業務委託契約を結び、労働力不足解消に向けて対応している。
 栽培管理において重要な作業が防除であるが、特に夏場は暑く、さといもの葉も大きく成長していることから、非常に労力のかかる作業となっている。そこで水稲で一部行っていたドローン防除を試験的に活用し、労働時間の短縮と防除効果について検証を行っている(写真8)。
 JAおちいまばりでは、生産面積拡大と単収の増加を目指し、「里芋機械化体系支援事業」や「派遣労働者研修事業(野菜収穫支援)」といった助成事業を展開しており、管内一丸となって生産量拡大に取り組んでいる。
 また年に複数回、愛媛県や今治市などの行政や全国農業協同組合連合会愛媛県本部(以下「JA全農えひめ」という)などの関係機関と連携して栽培講習会を行い、よりよいさといも生産ができるよう地域全体で取り組んでいる。
 
タイトル: p033

4 出荷の工夫(加工・業務用も含む)

 JAおちいまばりのさといもは「愛媛農試V2号」という愛媛県オリジナルの品種を栽培している。平成20年2月に愛媛県が品種登録した愛媛農試V2号は、JA全農えひめが商標登録し、愛媛県内のJAから出荷されたものだけを「伊予美人」という名でブランド化し販売している。
 JAおちいまばりは、令和3年3月より東予地区の3JA(JAうま、JAえひめ未来、JA周桑(しゅうそう))と連携し、愛媛さといも広域選果場(四国中央市)で共同選果を開始した。これまで選果基準がバラバラであったものを、基準を統一し広域で集荷をすることにより、出荷ロットもまとまり、近年問題になっている物流問題についても、1車1~2市場へ集中して出荷できるようになった。また量が確保できるようになったことにより、愛媛県産ブランド「伊予美人」を全面的にアピールしたことで、市場からの評価もこれまで以上に高まった。関西圏を中心に指名買いされるようになり取引価格も安定した。

5 販売戦略

 毎年行われている災害復興イベントに参加し、兵庫県にある甲南大学でさといもの販促活動を対面で行い、産地のPRやさといも「伊予美人」のおいしさを若い世代に知ってもらうためのイベントを実施し、認知度の向上と今後継続して購入してもらえるような取り組みを行っている(写真9)。
 
タイトル: p034
 

◆一言アピール◆

・さといもには、親いも、子いも、孫いもがあり、場所によって柔らかさや食感などが少しずつ異なります。
・「伊予美人」は柔らかく、さといも本来の粘りも強い一方、濃厚な甘みを持ち、白くきめ細かな食感であり、味に癖がないのでどんな料理にも相性が抜群です。
・JAおちいまばり産「伊予美人」は、寒い季節は芋炊きや煮物、あんかけなどがおすすめです。心も身体もほっとするおいしさをぜひお試しください!
 
【伊予美人 3つのスゴイ!】
 (1)味の良さ        やわらかく、粘りも強くうま味がある!
 (2)栄養豊富         特有のネバネバには栄養素がいっぱい!
 (3)変幻自在の調理法  色白だから見た目も美しい!
                  味に癖がなくどんな料理にも相性バツグン!

◆お問い合わせ先◆

担当部署:越智今治農業協同組合 営農振興部 営農指導課
住  所:愛媛県今治市阿方甲246-1
電話番号:0898-34-1871
FAX番号:0898-23-3764
ホームページ:https://www.ja-ochiima.or.jp