露地野菜産地化の一貫で「重点推進普及拡大品目」に位置付けたブロッコリーは、その鮮度を保つ氷冷箱詰出荷(発砲スチロール箱に氷を詰めて出荷)を行うため、製氷機第1号機を平成22年度に導入した(写真1、2)。これを機に、作付面積は約60ヘクタールから徐々に拡大し、25年度の第2号機の製氷機増設を機についに100ヘクタールを超え、27年度には、「JAやつしろブロッコリー部会」を設立し、さらなる品位
(注3)の統一と規模拡大を図ったことなどにより、200ヘクタールを超えた(図3)。28年度に製氷機3号機を増設したことにより、さらに規模拡大し、30年度は300ヘクタールを超えた。
(注3)品質により合格と格外に区分したもの
露地野菜を規模拡大する上で、そのけん引役となっているブロッコリーの規模拡大は、製氷機導入などにより順調に成長していたが、令和3年、出荷数量および販売金額が減少に転じた(図4)。
これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などもあったものの、一方で、ブロッコリーの急激な作付面積拡大による出荷量の増加により、既存の集出荷および予冷施設のみでは対応できなくなってきていた。これまでの製氷能力では対応しきれず、当日に氷詰め出来なかったブロッコリーを、「総合青果物センター」の予冷庫でストックしていたが、品質管理が困難で品質の低下が見られたため、新たに集出荷施設および予冷施設・製氷施設を整備する必要が生じた。
そこで令和3年、集荷体制を整えるべく、5カ所あった集荷所を2カ所(北部総合青果物センターおよび総合青果物センター)に集約した(写真3、4)。同年10月に北部総合青果物センターを稼動させ、氷詰め作業をすべて自動化し(製氷能力1日当たり約30トン)、出荷作業を省力化した。この製氷施設の整備前までは、手作業での氷詰めをしており、生産者も作業に入ることがあったが、全自動化した現在は、生産者は圃場の管理や出荷準備作業に専念できる環境が確保された。このような取り組みにより、適期の収穫や集出荷を安定させることで、品質の安定化・収穫量の向上を図っている。
全国的にも課題となっている「出荷の平準化」については、さまざまな条件が異なるため、細やかな「品種構成」と「栽培または作付け時期・適期」の見極めは必須であると考えられ、JAやつしろでは、八代地域の「気象条件」+「土壌条件」をうまくマッチングさせて、この安定出荷を確立しつつある。10月~翌6月までの9カ月間と収穫期間が長いことによって、1シーズン2作型の作付けが可能となっている。秋冬~春作までの植替えを伴う長期栽培および、長期出荷を継続するために多数の品種を導入し、主要10品種を中心に、試作を含めれば約35品種の作付けを行っている(図5)。特に、品種の切り替わりとなる「12月下旬~1月上旬どり」「1月下旬~2月上旬どり」「3月どり」が安定供給の課題となっており、品種選定に重点を置きながら、消費地に対する「定時・定量」供給を念頭に、産地の拡大を図っている。