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産地紹介 野菜情報 2024年10月号

秋田県 JA秋田おばこ~JA秋田おばこの純国産しいたけを召し上がれ~

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秋田おばこ農業協同組合 営農経済部 営農指導課 小笠原 真生
しいたけ

1 産地の概要

 秋田おばこ農業協同組合(以下「JA秋田おばこ」という)は、秋田県南部の内陸に位置し、東は奥羽山脈、西は出羽丘陵に接し、その間を南北に流れる雄物川(おものがわ)とその支流である玉川に沿って仙北平野が開け、管内の総面積は2129平方キロメートル(東京都(島しょ部を含む)の面積とほぼ同程度)で、県全体の18.3%を占めている(図1)。
 
タイトル: p036b
 
 管内は内陸型の気候を示し、県内でも豪雪地に属する積雪寒冷地帯で、1年の3分の1が積雪下にある。冬季の気温は秋田市などに比べ低く、夏季は比較的高温多湿だが、近年は春先の強風、夏場の猛暑に加え、集中豪雨や長雨などにより農産物の収穫にも影響が出ている。
 管内の農家人口は1万7357人(農林水産省「農林業センサス2020」)で、前回(2015)と比較すると23.8%の減少となっており、担い手の高齢化や後継者不足などの問題を抱えている。
 管内の農業生産の根幹となるのは稲作であり、全国屈指の米どころとして知られているが、農業の複合化による所得確保や新規生産者の確保を目指し、園芸や畜産への取り組みにも力を入れている。JA秋田おばこの取扱高は令和5年度で、米140億円、園芸19億円、畜産17億円ほどとなっている。
 管内の園芸作物生産は多岐にわたっており、取扱額の高い順に、しいたけ、花き、トマト、ねぎ、えだまめとなっている。このほかにも、春から冬にかけて多くの品目を出荷しており、県内有数の多品目産地となっている。令和5年度は、7月にかつて例を見ないほどの大雨とその後の猛暑により、管内の農産物は大きな打撃を受けた。園芸作物も露地物を中心に大幅な減収となり、取扱高は当初計画と比較し、20%以上落ち込んだ(表1)。

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2 産地栽培カレンダーおよびマニュアル

 しいたけ栽培は、平成22年から冬季でも収穫できる野菜として作付誘導を行い、さらにパッケージセンターが出来たことで生産者の作業負担が低減したことから、生産者数が増加した。また、新しい品種が追加されたことにより、種菌メーカーと協議の上、栽培マニュアルを作成し、部会内で周知・活用している(表2)。

タイトル: p037b

3 菌床しいたけの生産・栽培上の特色

 近年は栽培コスト全般の上昇により、コスト低減や売上向上が一層重要となっている。菌床しいたけ栽培を安定的に行うためには、栽培の「省エネ化・省力化・省人化」「菌床1ブロック当たりの売上追及」を念頭に置いた品種選定と栽培方法が重要となる。
 
(1)品種選定とその栽培方法について
 JA秋田おばこ管内で生産されている主な品種は以下の2種類である。

ア 北研607号
 発生方法については、2種類の方法を薦めている。一つ目が、昼夜の寒暖差(5度以上の温度差)を利用してしいたけを発生させる「自然上面栽培秋冬発生型」であり、栽培施設のコストやハウス温度管理の光熱費を抑えた省コストの栽培ができる(注1)。メリットとしては、(1)自然温度の最大限利用による省エネ化(2)温度管理や散水での発生による省力化(3)少ない芽数での発生によるしいたけの品質向上-といったことが挙げられる。ただし、栽培の注意点として、入念な高温障害対策と夏季カット管理による菌床ブロック褐変被膜の強化が必須であることや、秋口に集中して発生するリスクに留意し、適切な刺激の選定を行うことが挙げられる。刺激が強すぎると、芽が細かくなり、成長した際にしいたけの軸が細く、かさ部分も小さい規格外品が増えてしまう。刺激の強さの順番は、弱い順から(1)(弱)温度刺激(温度差をつける)(2)(中~強)打床刺激(菌床ブロックを叩く)(3)(強)水浸刺激(水に浸けて窒息させる)-である。
 二つ目は、強制的に温度差をつけて発生刺激とする「空調短期栽培」である(注2)。この栽培方法は、(1)ハウスの管理光熱費を低減しつつ周年の出荷量が増強できること(2)ハウス内での連続散水や打床刺激も併用することにより省力化でき、年間を通してしいたけの品質が向上-といったメリットがある。打床刺激は菌床のたたきやすい部分を木づちで1回コツンとたたく程度の刺激であり、労力は少ない。ただし、だんだんと菌床ブロックが弱くなり崩れやすくなるため打床刺激に対する菌床の耐久性確保のための管理が必須となる。

イ 北研705号
 長期型品種で、「自然上面栽培秋冬発生型」を薦めており、菌床管理にかかる労力や光熱費を低減できる。発生操作は打床刺激が主のため、(1)省力化できること(2)少ない芽数での発生によるしいたけの品質向上-のメリットがある。栽培の注意点としては、発生が鈍く1日の発生量が少ないため、入念な高温障害対策が必須である。

(注1)自然栽培とは、パイプハウスなどの簡易な施設を利用して、自然の気候を利用しながら行う省コスト栽培方法。上面栽培とは、菌床袋の上部を開け、上面だけから発生させる方法で作業の効率化と収量増加を図ることができる。
(注2)空調栽培とは、空調機を利用した施設栽培のことで、年間を通して計画的に生産できる栽培方法。

 
(2)害虫対策について
 しいたけ栽培では農薬を使用することができないため、その対策として、ハウス内に虫を入れないことと、ハウス内で虫を殖やさないことが重要となる。
 ハウス内に虫を入れないため、害虫の侵入経路であるハウスの出入口や側面・給気口・排水溝をふさぐ対策を行う。キノコバエなどは、防虫ネットの使用のほか、夜間照明や誘引灯の光が外に漏れないようにし、ナメクジは、ハウス周辺の清掃の徹底と物理的に排水溝蓋からの侵入を防ぐことや、スラゴ粒剤や消石灰の散布で対策する。
 ハウスで虫を殖やさない対策としては、キノコバエなどは腐敗しいたけの廃棄や、防虫シートで成虫を駆除すること、湯散布などにより幼虫駆除を行うこと、ナメクジは、活動する夜に捕獲駆除するか湯散布による洗浄駆除を行うことなどが挙げられる。

4 しいたけ部会の取り組み

 JA秋田おばこ管内で生産されている菌床しいたけ品種の大半が、株式会社北研の登録品種であり、その割合は北研607号が50%、同705号が20%、残りはその他となっている。特に、秋冬菌が主となっており、収穫期間は秋(10月)~春(5月)頃までの8カ月となっており、この間の合計収量は、平均で菌床1ブロック当たり7.5パック(1パックは約100gの定量詰めで6~10個入り)となっている。また、しいたけ部会では、期間ごとに次のような取り組みを行っている。
 
(1)培養
 冬季の1~2月上旬仕込みの菌床ブロックは、3月中旬まで5度前後に温度管理することにより燃料費の削減につなげている。また、夏季の管理として、ヒートポンプを持たない生産者については、ハウス内温度の上昇を防ぐためハウス内側面に遮光ネットなどを張り、これに水を吹きかけ冷却カーテンのようにする「点滴散水」や、写真1の培養棚の下にあるパイプから水を散水する「土間散水」などにより風を発生させ、温度調節をしている。
 
(2)収穫
 燃料費などのコストを低減するため、菌床ブロックの状態が良好な10月から年末年始までに、菌床1ブロック当たり5パック以上の出荷を目指している(写真2)。また、1~2月については低温栽培という菌床ブロックに休養を与えて発生を抑え、3月からは休養を挟んだ菌床ブロックに刺激の強い水浸刺激による発生を行っている。3月以降の出荷目標は菌床1ブロック当たり2.5パック以上の出荷を目指している。
 
(3)課題と今後の方向
 現在、産地では燃料費などの高騰による生産コストの上昇や高齢化による生産離脱などの課題に直面しており、さらなる作業の効率化と安定生産に導く新たな技術変革が求められている。

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5 出荷の工夫について

 JAではかつて、個々の生産者による個選出荷対応だったため、生産者間での品質にバラつきが目立ち、市場からのクレームなども多く見受けられた。それらを解決すべく、平成20年にしいたけパッケージセンター(共選施設)を開設し、出荷規格の見直しを行った結果、品質の安定化が実現できた(写真3)。
 共選施設とは、生産者が粗選別して出荷したしいたけを規格ごとに分け、パッキングや段ボール詰めを行う施設である。これにより、生産者側はパッキングなどの作業負担が減り収穫に専念することが出来る。また、大型法人の加入などにより、年間を通じて安定した出荷量が確保できるようになった。このため、消費者や実需者などのニーズに対応した市場取引が可能となり、市場評価を高めることができた。現在では、関東方面を中心に出荷しており、寒さが増す年末年始が年間で最も出荷が多い時期に当たる。寒さとともに鍋物などの需要が増え、市場取引も活発となる。

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6 販売の工夫について

 しいたけの経営を安定的にするには、ここまで紹介した品種選定や栽培コストの低減のほか、生産されたしいたけをいかに有利に販売していくかが重要である。このため、消費者に生産物の安全安心をPRするため、栽培原料原産地商標(※)の活用や、正確かつ迅速な産地情報を発信することなどの工夫により、信頼の確保に努めている。パッケージセンターから出荷されたしいたけは、肉厚でボリューム感があり棚持ちの良い高品質なものとして、京浜市場において高い評価を得ている。

(※)栽培原料原産地商標(通称:どんぐりマーク)について

 菌床から国産原料を使用して栽培されたしいたけ(きのこ)にのみ使用できるマークであり、これにより国外で植菌した菌床を輸入して日本で栽培したしいたけとの差別化を図る。
 当JAでは、菌床原料の木材チップやおがこに国産材料を使用していることをわかりやすく消費者に伝えるために、当該マークを商品パッケージに取り入れて(図2)純国産をアピールし、販売力強化につなげている。

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※どんぐりマークについては、alicホームページでもご紹介しております。https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001357.html

◆一言アピール◆

 JA秋田おばこ女性部で考案した、イチ押し簡単レシピ「しいたけとチーズの豚三枚肉つつみ」をご紹介します!幅広い年齢層に好まれ、しいたけの香りやチーズのおいしさが口いっぱいに広がる逸品です。食が進みごはんのお供にもぴったりです。肉厚でボリューム感があるJA秋田おばこの純国産しいたけでぜひお試しあれ!

しいたけとチーズの豚三枚肉つつみ(写真4)
  ◆材料(4人分)
  ・しいたけ …8個
  ・豚三枚肉(豚ばら肉) …200g
  ・スライスチーズ …2枚
  ・塩コショウ …少々
  ・小麦粉 …適量
  ・卵 …1個
  ・パン粉 …適量
  ・米油 …適量
 
 ◆つくり方
  (1) しいたけの石づきを取り、かさに十字の切り込みを入れる。スライスチーズはそれぞれ
         4等分に切り分けておく。
  (2) スライスチーズをしいたけのかさ裏側へ均等に重ねる。
  (3) (2)を豚ばら肉で包み、塩コショウを振って小麦粉、卵、パン粉の順にまぶす。
  (4) 米油を170~180度に熱して(3)を揚げ、衣がきつね色になったら完成!

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◆お問い合わせ先◆

担当部署:秋田おばこ農業協同組合 営農経済部 営農指導課(栽培・指導)
住    所:〒014-0017 秋田県大仙市佐野町5-5
電話番号:0187-42-8096営農指導課(栽培・指導)  0187-88-8615園芸課(販売)