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産地紹介 野菜情報 2024年9月号

宮城県 JAみやぎ登米 ~「サイボーグ009とめきゅうり」で水分補給を~

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みやぎ登米農業協同組合 営農部園芸課 課長 千葉 久美
きゅうり

1 産地の概要

 宮城県の北東に位置し、岩手県と接する()()市は、2005年(平成17年)に登米郡8町と本吉郡津山町の合併によって誕生した(図1)。
 市内中央部には平坦で肥沃(ひよく)な土地が広がり、西部から南東に向かう迫川(はさまがわ)は、東部を流れる北上川と合流し、北上山系を眺めながら市外まで南下した後、やがては太平洋につながる。その豊富な水源は生活用水のみならず、広大な平野で営まれる稲作や野菜栽培など、農業を支える農業用水として非常に重要な役割を果たしている。
 また、迫川の西方には国内2番目のラムサール条約(注)指定登録湿地である伊豆沼や長沼があり、毎年多くの渡り鳥が訪れる。

(注)正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」であり、水辺の自然「ウェットランド(湿地)」やそこに生息・生育する動植物の保全を促進することを目的とした国際条約である。
 
タイトル: p036b

2 登米地域におけるきゅうりの施設栽培の始まり

 登米市では国の指定産地の指定を受けているきゅうりやキャベツのほか、いちご、なす、りんご、スプレーぎくなど、さまざまな園芸品目の栽培に取り組んでいる。
 中でもきゅうりは年間3000トン以上を出荷する県内最大の産地となっており、市内にあるみやぎ登米農業協同組合(以下「JAみやぎ登米」という)の指導の下、JAみやぎ登米胡瓜(きゅうり)部会に所属する生産者が「促成」「夏秋」「抑制」の栽培に取り組み、早春から晩秋まで安定した出荷体制を整えている。2024年(令和6年4月時点)のJAみやぎ登米胡瓜部会は生産者数113人、総栽培作付面積 約36ヘクタール(うち促成4割、夏秋・雨よけ2割、抑制4割)となっている。令和5年度の出荷実績重量は3040トンで、その販売額はJAみやぎ登米の園芸作物全体の約7割に及ぶ(図2)。また、栽培講習会や現地検討会を作型ごとに開催するとともに、新品種についても栽培試験を行い、栽培技術と生産性の向上に努め、安全で安心なきゅうりを届けられるように努めている。
 登米市がきゅうりの一大産地となるまでの歴史の始まりは1971年(昭和46年)までさかのぼる。施設栽培が定着していなかった当時、現在の産地の中心となる登米市中田町をひょう害が襲い、収穫を間近に控えていた露地栽培きゅうりに壊滅的な被害を及ぼした。
 しかし、一時は肩を落とした農家たちも翌年の7月に「災い転じて福となす」を合言葉に再起を誓い、同じ(てつ)を踏まない復興を模索し、施設栽培による取り組みをスタートさせた。
 きゅうりの生育には大量の水を必要とすることから、水田から畑作への経営転換を推し進めながら、基盤整備や施設導入に着手した。以来50数年、世代は変わったが、先人たちの努力と意思は承継され、生産者一人一人が協力し、理解を深めて活動を行っている(写真1)。

タイトル: p037
 
タイトル: p038a

3 選果機導入による出荷の工夫

 JAみやぎ登米が、平成10年に管内の野菜集荷拠点となる「グリンポートなかだ」に導入したきゅうり選果機は、稼働から16年経過した26年には老朽化による不調が生じ始めた。また同時期に生産者の利用申し込みが増加し、消費者・市場ニーズへの対応も必要となったことから、集荷の一元化による効率化を図るため「グリンポート胡瓜選果機建設委員会」を設置し、既存の選果場プラント機器の機能強化や入れ替えについて検討を重ねた。翌27年、国庫補助事業に申請を行い「攻めの農業実践緊急対策事業」を活用し、新たなきゅうり選果機を導入することが決定し、28年に完成を迎えた。
 導入した選果機の能力は、1日当たり最大で約5000ケース、重量換算では約25トンの製品化が可能となっている。4月から12月まで間、その日に搬入されたすべてのきゅうりが箱詰めされるまで作業が続き、日々各地へ新鮮なきゅうりの出荷を行っている(写真2~5)。
 なお、宮城県内できゅうりの選別場を構えているのはJAみやぎ登米のみとなっている。

タイトル: p038b
 
タイトル: p039a

4 販売戦略

 宮城県登米市は日本を代表する漫画家「石ノ森章太郎」の生誕地であり、氏の作品である「サイボーグ009」のキャラクターを起用したコラボレーションブランド「サイボーグ009とめきゅうり」の統一デザインの段ボールを利用した販売を展開している(図3、写真6)。
 また、図4のとおり季節ごとに促成・夏秋・抑制と栽培方法を切り替えることで長期的な出荷を可能としている。また、JAみやぎ登米胡瓜部会の生産者はきゅうり選果機を共同利用することにより、安定した品質のきゅうりを規格ごとに揃えて箱詰めしている(写真7)。
 その他、定期的に宮城県仙台市で開催される「県産フェア」などの販促活動に参加し、精力的なアピールを行っている(写真8)。
 
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タイトル: p040

◆一言アピール◆

 JAみやぎ登米が取り組むきゅうりの栽培体系は、ほぼ通年の収穫が可能となっています。昨今では、夏場の猛暑が年々厳しさを増してきていますので、水分が多く体温を下げる効果のあるきゅうりの摂取は、熱中症対策に期待ができます。また、秋から冬にかけても暖房や空気の乾燥によりかくれ脱水に陥る可能性がありますので、健康維持のためにも、みずみずしいJAみやぎ登米の「サイボーグ009とめきゅうり」を1年を通じてぜひご賞味ください。

◆お問い合わせ先◆

担当部署:みやぎ登米農業協同組合 営農部園芸課
住  所:宮城県登米市中田町石森字駒牽265番地の1
電話番号:0220‒23‒8561
FAX番号:0220‒23‒8721