登米市では国の指定産地の指定を受けているきゅうりやキャベツのほか、いちご、なす、りんご、スプレーぎくなど、さまざまな園芸品目の栽培に取り組んでいる。
中でもきゅうりは年間3000トン以上を出荷する県内最大の産地となっており、市内にあるみやぎ登米農業協同組合(以下「JAみやぎ登米」という)の指導の下、JAみやぎ登米
胡瓜部会に所属する生産者が「促成」「夏秋」「抑制」の栽培に取り組み、早春から晩秋まで安定した出荷体制を整えている。2024年(令和6年4月時点)のJAみやぎ登米胡瓜部会は生産者数113人、総栽培作付面積 約36ヘクタール(うち促成4割、夏秋・雨よけ2割、抑制4割)となっている。令和5年度の出荷実績重量は3040トンで、その販売額はJAみやぎ登米の園芸作物全体の約7割に及ぶ(図2)。また、栽培講習会や現地検討会を作型ごとに開催するとともに、新品種についても栽培試験を行い、栽培技術と生産性の向上に努め、安全で安心なきゅうりを届けられるように努めている。
登米市がきゅうりの一大産地となるまでの歴史の始まりは1971年(昭和46年)までさかのぼる。施設栽培が定着していなかった当時、現在の産地の中心となる登米市中田町をひょう害が襲い、収穫を間近に控えていた露地栽培きゅうりに壊滅的な被害を及ぼした。
しかし、一時は肩を落とした農家たちも翌年の7月に「災い転じて福となす」を合言葉に再起を誓い、同じ
轍を踏まない復興を模索し、施設栽培による取り組みをスタートさせた。
きゅうりの生育には大量の水を必要とすることから、水田から畑作への経営転換を推し進めながら、基盤整備や施設導入に着手した。以来50数年、世代は変わったが、先人たちの努力と意思は承継され、生産者一人一人が協力し、理解を深めて活動を行っている(写真1)。