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産地紹介 野菜情報 2024年8月号

群馬県 JA邑楽館林 ~猛暑に負けないにがうり栽培~

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邑楽館林農業協同組合 園芸部 園芸指導課 玉岡 竜吾
にがうり

1 産地の概要

 邑楽(おうら)館林農業協同組合(以下「JA邑楽館林」という)は、平成21年3月1日、JA館林市(館林市・明和町)、JA群馬板倉(板倉町)、JA西邑楽(邑楽町・千代田町・大泉町)の三つのJAが合併し、1市5町の広域農協として誕生した(図1)。

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 当地域は群馬県の南東部に位置し、北は渡良瀬川を境に栃木県佐野市・足利市、群馬県太田市、南は利根川を境に埼玉県と接する館林市・板倉町・明和町・千代田町・大泉町・邑楽町からなる標高10~35メートルの平坦地である。総面積は、193.3平方キロメートルで、面積は広い順に、館林市60.98平方キロメートル、板倉町41.84平方キロメートル、邑楽町31.12平方キロメートル、千代田町21.76平方キロメートル、明和町19.67平方キロメートル、大泉町17.93平方キロメートルとなっている。
 年平均気温が約15度、年間降水量が1200ミリメートル程度で、県内では比較的温暖な気候である。また、夏季は雷雨が多く、高温多湿で、冬季は雨の日が少なく日照量が多いという特徴がある。
 関東平野の中央で太陽に恵まれた日本随一の暑い大地と、赤城おろしの「からっ風」、利根川と渡良瀬川に挟まれた肥沃(ひよく)な土壌に恵まれた日本有数の野菜の産地であり、JA邑楽館林では、露地栽培では、夏はなす、にがうり、冬ははくさいや加工・業務用キャベツなど、またハウスなどの施設栽培ではきゅうりやいちご、トマトといった多くの品目を生産している(図2)。
 
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2 産地づくりの取り組み

 JA邑楽館林管内は、日本で指折りの酷暑となる地域である。にがうりは、温暖な気候を好むため、地域の特性と相性が良い作物として注目され、平成9年に、板倉町の施設きゅうり生産者の数人が試験栽培を始めた。JA邑楽館林管内の施設きゅうりの栽培期間は、2月から6月と8月から11月までの2期作となっている。栽培期間の中で、太陽熱消毒(薬剤などを使わずに土壌を消毒する方法で、夏の高い気温を利用)に取り組む7月から、2作目のきゅうりの収穫が始まる9月までの間、収穫できる作物がない時期の所得確保の作物として、にがうりを採用したのである。また、施設きゅうりと違い、初期投資が少ないことと栽培が比較的容易といった点から、にがうりは新規就農者に向けた栽培提案品目となっている。令和6年5月時点で、生産者約250戸、栽培面積約50ヘクタールとなっている。
 また、労働力不足の対応のひとつとして、JAが中心となり、無料職業紹介、求人募集サイト「農業ジョブ」、一日農業バイトアプリ「デイワーク」を通じて雇用斡旋を行っており、繁忙期の労働力確保につながっている。

3 生産について

(1)露地栽培(写真1)
 露地栽培は、4月中旬から5月下旬にかけて定植を行い、収穫期間は6月中旬から9月までとなっている(図3)。JA邑楽館林管内は例年、定植期間中に強風や遅霜(おそじも)に遭うことがあるため、肥料袋を使用した風よけ(あんどん、写真2)や、農業用ビニールを使用したトンネルで対策を行う。近年、温暖化による気温上昇と干ばつが生育に悪影響を及ぼしており、干ばつ時には潅水(かんすい)を適宜行っている。

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(2)ハウス栽培(写真3)
 ハウス栽培は、春作は3月から定植が始まり、収穫期間は5~7月である。3月中は気温が低いため、トンネル被覆を行い、夜間の保温に努めている(写真4)。秋作は8月に定植し、9月から12月中旬ごろまで収穫を行う。にがうり栽培において重要なのが、受粉作業である。露地栽培では、ミツバチなどの訪花昆虫が受粉を行うが、ハウス栽培では人の手で受粉作業を行う。
 また、今年度は高温対策として、夏季のハウス内の気温上昇を抑制するため、遮光剤のドローン散布を試験し、生育・作業環境の改善に努めている(写真5)。

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4 出荷と販売について

(1)出荷規格
 長さ23~35センチメートル、重量280~350グラムのにがうりを、10本入り3キログラムとなるよう箱詰めする(写真6)。
 9月が近づき気温が低くなると、にがうりの肥大が遅くなるため、長さ18~25センチメートル、重量200~250グラムの1箱14本入りの規格を増やすことで、にがうりの取り逃しを防ぐように工夫している。
 また、主品種は久留米原種育成会の「ゴーヤ(ふし)(なり)」である。ゴーヤ節成は、節成性(着果結実すること)が高く、初期より多収であることや、果実の重量感があり、食感がよく、苦みがマイルドなことが特徴である。

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(2)出荷時期と販売の工夫
 前出の通り、ハウスにがうりの出荷が5月上旬から始まり、12月中旬ごろに終わる。露地にがうりの出荷は6月中旬から始まり、気温が低くなる9月下旬ごろに徐々に少なくなる。
 6~9月は群馬県全体でまとめて共計販売(※)を行っている。共計販売は、他産地の出回りもある中、群馬県全体で販売することのスケールメリットを生かし、市場での優位性を維持している。
 主な販売先は首都圏に近いメリットを生かし、京浜市場を中心に、北は岩手県、西は大阪府まで販売を行っている。
 10月以降は共計販売が終わり、出荷量も減少傾向になるため、12月のハウスにがうりの出荷終了時まで、販路を維持することが重要になる。また、ハウスにがうりの出荷は、5月8日の「ゴーヤの日」を目指して始まるが、その後露地にがうりが始まる夏季までの販路確保も重要となる。

※一定期間内にJAが出荷した同品質の農産物を、その期間内の平均価格で精算する方式。

◆一言アピール◆

 にがうりは、昨今では夏季のスーパーマーケットなどでは定番の野菜になりつつありますが、独特の苦味から、子どもからは人気低迷気味です。この苦みには「モモルデシン」という成分が含まれ、血糖値や血圧を下げる効果と、整腸作用があるとされており、夏バテ予防が期待できるといわれています。猛暑が続く夏こそ、暑い土地でたくましく育った当管内のにがうりを食べて、元気に夏を過ごしましょう!

◆お問い合わせ先◆

担当部署:邑楽館林農業協同組合 園芸部 園芸指導課
住  所:群馬県館林市赤生田町847
電話番号:0276-73-4991
FAX番号:0276-73-7140