(1)生産地区
管内では、
印南町、御坊市、みなべ町、日高町、日高川町、美浜町、由良町と多くの市町できぬさやえんどうを栽培している。
栽培は、1920年代に印南町(旧
切目村崎山)で始まった。昭和30年末に品種「マストラ」(育成者:木下虎蔵、屋号
桝屋と名前の虎から付けられたといわれている)が育成され、戦後の食糧不足に貢献した「かんしょ」に代わって栽培が増加した。その後、当地で品種改良が行われ、温暖な気候や土質が適していたこともあり、生産者が増加していった。
管内のさやえんどう(うすいえんどうを含む)の栽培面積は約80ヘクタールであり、全国有数の生産量を誇っている(写真1、2)。
(2)作型
きぬさやえんどうの栽培体系は、(1)8月上中旬に
播種し、9月下旬から12月に収穫する「抑制栽培」(2)10月に播種し、1月下旬から5月下旬まで収穫する「春取り栽培」(3)9月上旬に播種し、10月中旬から5月上旬まで収穫する「ハウス栽培」ーの3つの作型に分かれ、9月下旬から5月下旬まで長期間にわたり消費者に提供できる生産体制を構築している(図3)。
現在、管内のきぬさやえんどうの栽培面積および農家戸数の内訳は、抑制栽培が10ヘクタール(148戸)、春取り栽培が3ヘクタール(52戸)、ハウス栽培が11ヘクタール(153戸)となっている。
きぬさやえんどうは、連作障害による生育不良が発生するため、栽培終了後はビニールを
圃場にかぶせ、地温を上昇させて土壌病害を殺菌する太陽熱土壌消毒を中心に対策を講じている。また、昨今の温暖化に対応するため、発芽率が落ちないよう
播種時期をずらすなどの調整を行っている。
(3)収穫・出荷作業
当産地のきぬさやえんどうは、需要の高いL級を中心に、子実が大きくならないうちに適期収穫している。収穫時期を目視で確認する必要があることから機械化が難しく、はさみを用い、手作業で収穫作業を行っている。そのため、栽培面積が大きい生産者は、収穫繁忙期になると季節雇用者を導入して作業に当たっている。
省力化や輸入品との判別の観点から、二つのさやがくっついた
双莢で収穫しており、ボリュームがあり、通気性に優れる「アベックさや」として流通し、市場関係者に知られている(写真3)。
収穫後は、個々の農家が作業倉庫で等級(L級、A級、2L級、Ⓐ)を目視確認により選別した後、専用のコンテナでJAに搬出し、中京地区を中心に、京阪神、関東などの各市場に出荷している(写真4)。