現在、徳島県全体のれんこんの作付面積は約500ヘクタールである。このうち40%以上を占める約220ヘクタールがJA大津松茂の管内であり、生産者数は118人である。
JA管内では、中国種の一つである晩生品種の「
備中」を多く栽培している。近年は、同じく中国種の一つである早生品種「ロータス」も多く生産されるようになってきたが、「備中」は節間が長く色白できめ細かな肉質をしており、古くから関西市場での評価が高いことから管内での主要品種となっている。また作付体系は主にトンネル栽培と露地栽培であるが、近年はハウス栽培に取り組む生産者も増加傾向にある。
さらに収穫方法もさまざまで、すべてのれんこんを掘り取る「総掘り法」、すじ状にれんこんの一部を残して掘り取り、翌年の種として使用する「すじ掘り法」、作付け年には収穫せず
湛水したまま越冬する「二年掘り法」などがあり、これらの作型と収穫方法を組み合わせることで周年出荷を可能にしている(表1)。
管内におけるれんこん栽培の最大の特徴は、その土壌にある。他産地の多くの圃場は水をたっぷり含んだ比較的軟らかい泥だが、管内のれんこん圃場はすべて硬い粘土で形成されている。それゆえに収穫方法も特別だ。れんこんの収穫方法には、水を張った状態の圃場でポンプを用いて水圧により掘り出す方法と、水を完全に抜いた状態の圃場で掘り出す方法の主に2種類であるが、土壌が粘土質であるため、水圧により掘り出すことは困難で、後者の方法を用いて一本一本丁寧に手掘りしなければならない。れんこん掘り機でれんこんを傷付けない範囲で大まかに表土(30~40センチ)を取り除いた後(写真2)は、熊手を使った手作業で10センチ程度慎重に掘り取る(写真3、4)。芽の方向かられんこんが伸びている方向を見極め、折れたり傷が付かないように、付け根から掘り出すのは熟練の技術が必要で、重労働である。
また、定期的に土壌診断を行い、過去の生育反応を考慮して堆肥を施用した土作りをするとともに、肥効調整型肥料
(注1)を使用することで、化学肥料の低減を実現している。化学農薬の使用を低減するための工夫としては、性フェロモン剤を利用したトラップ(フェロモントラップ)を設置し(写真5)、葉を食害するハスモンヨトウの幼虫の防除を行うことで、産地全体での被害発生密度を低下させている。
土作りにこだわり、安全で安心な、消費者に信頼されるれんこん作りを心掛けて日々取り組んでいる。こうした生産者などによる多大な努力のもと収穫され、市場に送られる当JA管内のれんこんは、すらりと色白で艶がある美しい見た目と、多様な食感が高い評価を受けている。
注1:肥料効果を持続させるために、肥料が溶ける量や溶ける時期を調節した化学肥料。肥料成分の流出を防ぐことにより減肥が可能になるとともに、環境への負荷が小さいとされている。