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産地紹介 野菜情報 2023年10月号

青森県 JA十和田おいらせ ~健康な土に育まれたおいしい「十和田おいらせミネラルごぼう」~

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十和田おいらせ農業協同組合 藤坂支店 営農担当 古川 麻衣子
ごぼう

1 産地の概要

 十和田おいらせ農業協同組合(以下「JA十和田おいらせ」という)は、青森県の東部に位置しており、主要都市の青森市へは60キロメ-トル、八戸市へは30キロメ-トル、空の玄関口三沢空港へは20キロメ-トルの距離にある。
 平成20年に、十和田市農業協同組合、ももいし農業協同組合、下田農業協同組合が合併してJA十和田おいらせが誕生した。平成22年4月には、八甲田農業協同組合、横浜町農業協同組合、はまなす農業協同組合と合併し、2市5町3村に及ぶ広域JAとなった(図1)。

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 JA十和田おいらせの組合員数は、令和5年4月現在、1万1411人(うち正組合員6145人、准組合員5266人)である。
 JA十和田おいらせの北部地域は、(おそれ)(ざん)(かま)(ふせ)(やま)を代表とする山間部が多く、南部地域は平たんな台地(海抜65メ-トル)で、西方に八甲田連邦がそびえ、十和田湖を源とする奥入瀬川が流れる自然豊かな環境を誇っている。
 本店のある十和田市の気候は、年平均気温が9.7度、年間降水量が1100ミリメ-トルであり、冬は晴天の日が多く、県内では積雪量が少ない地域である。しかし、6月から7月にかけては、オホ-ツク海高気圧による偏東風(やませ)が吹くこともあるため、天候に左右されにくい根菜類の栽培が盛んである。
 土質も、ローム質火山灰が堆積し、地表面より黒色の腐植に富む層が50センチメートル程度で深いところでは1メートルに達し、(れき)などが含まれていないことも、ながいもやだいこん、ごぼうなどの産地を形成する要因となっている。
 令和4年度のJA十和田おいらせの販売金額は、野菜が約60億3000万円と全体の4割以上を占める。そのうち、ながいも約14億3000万円、にんにく約11億6000万円、だいこん約8億8000万円の3品目で約6割を占めており、ごぼうは約5億8000万円となっている(図2)。

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2 管内の生産概要

 JA十和田おいらせのごぼう栽培は、ながいもの輪作体系の一つとして、昭和49年から作付けが始まった。減反面積の増加や掘り取り機の進化により、作付面積は年々増加しており、令和4年度は414ヘクタ-ル、生産者数340人となっている。
 ながいも栽培においては、GPS機能を装着した自動操舵トラクターの導入が進んでおり、今後、ごぼう栽培でもスマ-ト農業の普及により、さらに作付面積の増加が期待される。
 栽培品種は、「柳川理想」が8割、残り2割が「おいらせ150」である。
 3月中下旬までは圃場(ほじょう)に雪が残っており、その後、施肥や耕起などの作業を行うことから、管内生産量の8割が春播き(5月以降)であり、収穫時期は10~12月および一部翌年の3~4月となる(図3、写真1、2)。

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3 特色ある産地づくりを目指したミネラル栽培への取り組み

 JA十和田おいらせでは、特色ある産地づくりを目指し、平成12年に大手ス-パーからの働き掛けを契機に始めたのが、十和田おいらせミネラル野菜「TOM-VEGE」(T=十和田 O=おいらせ M=ミネラル VEGE=野菜、以下「トム・ベジ」という)の取り組みである。
 トム・ベジは、国立公園十和田湖から注ぐ奥入瀬のきれいな水と健康な土づくりを特徴としており、野菜の苦手な子どもにもおいしく食べられる糖度と硝酸の基準値を満たした野菜の生産を目指している。具体的には、従来の窒素、リン酸、カリに偏った施肥体系を改め、徹底した土壌診断(写真3~5)を基に、土壌に不足しているミネラルをバランス良く補給している。これにより、野菜の活性酵素が良く働き、光合成の働きが増してアミノ酸や糖度が上がり硝酸値が下がるため、作物本来の甘みやうま味が戻り、甘くてえぐ味の少ないおいしい野菜になる。

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 この取り組みにより、生産者は土壌成分(土の健康状態)の把握が可能となり、生産コストの低減と良品質で安定した収量の実現につながっている。
 品目ごとに糖度と硝酸(葉物野菜などの一部品目)の基準値を設定しており(ごぼうは糖度16度以上)、基準をクリアしたものをミネラル野菜として出荷し、クリアしないものは一般出荷となる。
 当初は、にんにく、ねぎでスタ-トしたが、現在では、ごぼうをはじめとした根菜類、果菜類や葉菜類など多くの品目で取り組んでおり、価格転嫁にもつながっている。
 また、野菜ソムリエが一大消費地である関東圏で、ごぼうを含む十和田ミネラル野菜のPRを定期的に行い、消費者への認知度向上を図っており、大手ス-パ-からは「日持ちが良い」「食感が良い」と高い評価を得ている。

4 出荷体制・出荷先

 出荷に係る調製については、以前は太さを図る規格板を使用し、手選別が主流だったが、労働力軽減や出荷規格・揃い向上を目的として機械選別が普及してきた(写真6)。
 出荷形態については、販売がしやすい10キログラム段ボール箱から、生産者の出荷調製作業の労力軽減などを図るため、ポリ袋出荷(4キログラムと10キログラム)へ変更した(写真7)。これにより、集荷量の増加につながり、結果として、取扱数量が増加した。
 JA管内の7カ所で集荷を行い、関東を中心に、中京、関西、東北地区へと出荷している。また、ごぼうは地域により好みが異なるため、関東地域はM以上の太さで、中京地域以西は2M以下の細物を中心に、その地域が好む規格のごぼうを出荷している(表)。

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5 販売戦略

(1)計画出荷による長期販売に向けた取り組み
 出荷については生産者が個々に収穫および選別を行う個選出荷と、収穫物をJAが預かり選別を行う共選出荷がある。管内の7割以上が個選出荷であるが、近年は生産者の労働力軽減や集荷対策のため共選事業にもJAとして力を入れて取り組んでいる。
 個選出荷については、収穫時期である11~12月上旬が出荷量のピ-クとなるが、出荷の集中による価格の下落を防ぐため、冷蔵庫での保管などにより定時定量出荷に取り組み、逆に出荷量の少ない12月から翌3月までは、共選出荷の活用により消費地への出荷物を確保し、安定供給や価格維持を図っている。
 
(2)消費地への情報提供を通じたPR
 毎年、出荷前にはJA役職員、野菜振興会役員およびごぼう専門部会役員が、栽培状況や作柄状況を市場へ正確に伝えるために、販売要請という形で市場訪問(写真8)を行い、安定供給や価格維持に努めているほか、トム・ベジのPRなどを行っている(写真9)。

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(3)今後の取り組み
 昨今、生産者にとって、肥料や燃料などの高騰に伴う生産コストの増加や、価格転嫁できない青果物の厳しい販売情勢ではあるが、JAとしてこだわりを持った栽培方法と安定販売のため、今後もメディアなどを活用したPRや独自の販路開拓などに取り組み、生産者の取得向上とごぼう産地の維持に取り組んでいきたい。

◆一言アピール◆

 ごぼうは、低カロリー、ヘルシー食品として人気が高いほか、食物繊維を豊富に含み、整腸作用や抗酸化作用、動脈硬化予防などさまざまな効用が期待できます。
 体の調子を整える効果が期待できるごぼうを、JA十和田おいらせではミネラル栽培に取り組むことにより、さらに自信をもってお薦めしたいと思っています。
 えぐ味がなく、柔らかくておいしい、我らのごぼう! ぜひご賞味ください!!

◆お問い合わせ先◆

担当部署:十和田おいらせ農業協同組合 藤坂支店
TEL:0176-23-3128
FAX:0176-25-1314
ホームページ:https://www.jatowada-o.or.jp/