ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 秋田県 JA大潟村 ~栄養豊富な土壌で栽培される栗のようにホクホク甘い「特産かぼちゃ」~
(1)高品質なかぼちゃ生産に向けた取り組み
ア 栽培カレンダー
5月上旬から下旬にかけて苗を定植し(写真1、2)、主枝のわき芽をかき取る芽かき、つる押さえ、授粉、着果後の皿敷き(果実全体に太陽が当たるよう、プラスチック製の皿を果実の下に敷く作業)、日よけ作業の行程を経て、7月下旬から8月にかけて収穫している(図2)。
大潟村では、親づる1本仕立て栽培を推奨している。これは、親づる1本にのみ着果させることで、かぼちゃ1つ1つに養分が行き渡るように生産することが可能であるためである。
収穫は、一定の積算温度に達した頃に試し割りを行い、果実の色と種子の充実度合いを見て熟したことを確認してから開始することで、未熟果の出荷を防いでいる。
イ 品種の選定
平成23年以前は、「みやこ」が主品種であった。しかし、樹勢が強く、大潟村の親づる1本仕立てにすると収穫直前まで芽かきを行う必要があった。
そこで、「みやこ」よりも栽培が簡単で、かつ大潟村に合う品種を探すため、「雪化粧」や「ダークホース」「くり将軍」「くり大将」などの複数品種で試験栽培を行った。その結果、「くり大将」が生育面で大潟村の環境に適していると判明したため、現在は「くり大将」を栽培している。
「くり大将」は、着果後45日前後で収穫が可能な早生品種で、後熟をしなくても収穫直後から糖度が高いため、収穫後は数日間の風乾を行うだけですぐに出荷が可能である。
(2) 栽培上の工夫
ア 安全・安心な農産物づくり
圃場の準備を始める生産者に対しては、肥料過多などを避けるため、圃場やハウスの土壌分析を案内している。
当JA組合員限定のサービスとして、無料の簡易版では土壌の栄養分などを、有料版では土壌の保肥力測定を加えて行い、肥料設計の参考として活用してもらっている。
また、農薬および肥料の散布時期や散布量、希釈倍率を把握するため、当JAを通して出荷する生産者全員に、栽培圃場や量を記載した栽培協定書のほか、栽培履歴書を提出頂いている。授粉はホルモン剤を一切使用せずに人の手とミツバチのみで行っており、農薬に関してもミツバチに影響が及ばないような種類を推奨している。
併せて、かぼちゃ圃場の周囲のほとんどが水稲栽培であるため、水稲で使用する農薬が飛散していないか確認する目的で、出荷シーズン前に残留農薬検査を行い、安全・安心なかぼちゃづくりに努めている。
さらに、芽かきや皿敷きなどの作業が始まる時期には、新規生産者に向けた芽かき・皿敷きマニュアルの作成および配布の他、毎年栽培マニュアルの内容を生産組合の役員と精査しながら作成し、組合員に配布している。
イ 圃場巡回や実績検討会の実施
生産組合では、年2回の圃場巡回、出荷前の目揃え会のほか、年度末に総会および実績検討会を開催している。マイクロバスに乗り圃場とハウス数件を巡回する圃場巡回(写真3)では、他の組合員の栽培を見て今後の参考にする学習の場としてだけでなく、生産者同士の情報交換の場にもなっており、毎年多くの生産者が参加している。
収穫期直前に行う目揃え会では、生産者の協力を得て、実際にかぼちゃを展示して等級の目安を伝え、収穫および出荷に伴う注意点などを周知している。
総会後に行われる実績検討会では、その年度の生産概要を振り返るとともに、優秀生産者を表彰し、生産者本人が栽培概要を発表することで、生産者全体のモチベーション向上につなげている。
この他、生育状況の把握や、圃場やハウスの異常にもすぐ対応できるよう、担当職員や生産組合長による巡回も行っている。
(3)省力化の取り組み
省力化に向けて、組合員が考案したかぼちゃの一発肥料やつる押さえピンのほか、ヘタ切用電動はさみの導入、鉄コンテナでの出荷など、さまざまな取り組みを行っている。
一発肥料は、その名の通り、かぼちゃ栽培に適した肥料の全量を基肥として一回で施用できるようにした省力的肥料である。
つる押さえは、従来、割り箸や細めの支柱などを手頃な長さに切って使用していた。つる押さえピンはその必要がなく、かつ収穫を終えてからも回収しやすい形状となっている(写真4)。
ヘタ切用電動はさみは、わずかな力で刃が動くため、手の腱鞘炎のリスクを軽減できる。従来は一般的なヘタ切はさみを使用しており、ヘタを切り落とすにもかなり力を入れる必要があった。電動はさみは本来剪定用として販売されている刃をかぼちゃのヘタ用に調整を行った上で使用している。
(1)青果用
出荷当初は段ボールによる出荷形態を採用していたが、通気性による傷みが出やすいことが課題となっていた。そこでプラスチックコンテナを使用した出荷に切り替えたところ、通気性が改善され傷みの発生も減ったため、現在に至るまでプラスチックコンテナによる出荷形態を採用している。
昨年度は、生産者の高齢化に伴う作業の簡略化に加えて、新規でかぼちゃ栽培を始める生産者のハードルを下げる目的で、鉄コンテナ出荷の試験・移行期間とし、今年度から本格出荷を開始している(写真5)。
出荷規格に満たないかぼちゃは、当JA敷地内の加工場へ出荷し、皮とワタ、種子を取り除き、ペーストとして袋詰め・冷凍保存している。このペーストは同工場で白餡や生クリームなどと混ぜ合わせてかぼちゃ餡に加工している。それをこだわりのバターを使用したパイ生地で一つ一つ手作業で丁寧に包み、オーブンでじっくり焼き上げ、大潟村のパンプキンパイとして各地へ出荷している(写真6、7)。パンプキンパイは、秋田県2022年お盆のお土産売れ筋ランキング1位 (2022年8月24日秋田魁新聞掲載)としても紹介された。