(1)導入の経緯
最上地域の北東部に位置する最上町は夏期冷涼な中山間地域である。やませの影響を受けやすく、幾度となく冷害に見舞われ、農作物が被害を受けてきた。そこで、農業経営の安定のために稲作依存型農業からの脱却を目指し、園芸品目への転換を進めてきた。
気象条件に適合し適地適作の品目としてアスパラガスが導入され、平成16年度に43人、7.4ヘクタールの面積で栽培がスタートした。同時に、最上町アスパラガス生産協議会が組織され、栽培研修会や圃場研修会を通して会員全員が統一した栽培体系で展開している。
最上町を中心として生産が始まったアスパラガス栽培は、管内7市町村に広がり、令和4年現在、管内の生産者は全179人、栽培面積66.7ヘクタール、生産量519.5トンとなっている。
(2)栽培カレンダー
アスパラガスは収穫できるようになるまで1年以上の年月を要する。栽培は、春に圃場に苗を植え付けして、その年は次年度に向けて養成を行う。
次年度の4月下旬から順次収穫を行い、5月上中旬に春芽の出荷最盛期を迎える。5月下旬から6月にかけて立茎作業(萌芽してきたアスパラガスを収穫せずに伸長させて、倒伏しないようアーチパイプのネットに誘引する作業、写真1)に入ると、株養成を行い、7月中下旬から夏秋芽の出荷最盛期を迎える。その後は、気温・日照の低下に伴い、9月いっぱいで収穫は終了を迎える(図3)。
(3)生産・栽培上の特色
当地域は、取り組み当初から夏場の高品質生産を目標に品種の選定や栽培方法の検討を行ってきた。
畜産農家から供給される堆肥を有効活用し、徹底した土づくりに重点を置き、山形県最上総合支庁産業経済部農業技術普及課の産地研究室において確立されたアスパラガスの長期立茎栽培を導入しながら、生産農家と栽培面積の拡大を図ってきた。
アスパラガスの長期立茎栽培は、夏場にも収穫を行うため、5月下旬から立茎管理を行うが、特徴的なアーチパイプに立茎を誘引することにより、受光状態を良好にして、夏場の彩りの良いアスパラガス生産に結び付けている。品種はグリーンタワーを主力とし、近年は他品種の試作なども行っている。
長年にわたる栽培で特定の土壌養分が蓄積することによる生産量への影響を防ぐために、毎年、栽培期間終了後に土壌分析とその結果を踏まえて、栽培研修会を開催している(写真2)。また、土壌養分の蓄積に配慮したオリジナル肥料を開発して、適切な肥培管理を目指している。