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産地紹介 野菜情報 2023年5月号

山形県 JAおいしいもがみ ~高品質アスパラガス産地を目指して~

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もがみ中央農業協同組合 東部営農センター 営農指導課  営農指導課長補佐 坂井 義宏
アスパラ写真

1 産地の概要

 もがみ中央農業協同組合(以下「JAおいしいもがみ」という)は、山形県の東北の内陸部に位置し、山形県北部の新庄市と最上郡内の6町村を管轄している(図1)。
 管内総面積は1803平方キロメートルと、県全体(9323平方キロメートル)の2割を占めている。
 中央を「東北のアルプス」と呼ばれる千メートル級の山々が連なる奥羽山脈、西側には「山形の母なる川」最上川が流れ、遠くに日本百名山の烏海山、月山を眺めることが出来る風光明媚な地域である。
 夏は高温多湿で、昼夜の寒暖差が10度以上の典型的な盆地型気候であり、作物を育てやすい環境にある。



 管内では、水稲のほか野菜の生産が盛んで、にら、アスパラガス、ねぎ、ミニトマト、大玉トマトなどの主要品目の販売高は県内でもトップクラスを誇る。
 また、菌茸類の栽培も盛んで、なめこ、しいたけ、ぶなしめじなど全体で販売高が15億円を超える一大産地となっている(図2)。

2 アスパラガス栽培の概要

(1)導入の経緯
 最上地域の北東部に位置する最上町は夏期冷涼な中山間地域である。やませの影響を受けやすく、幾度となく冷害に見舞われ、農作物が被害を受けてきた。そこで、農業経営の安定のために稲作依存型農業からの脱却を目指し、園芸品目への転換を進めてきた。
 気象条件に適合し適地適作の品目としてアスパラガスが導入され、平成16年度に43人、7.4ヘクタールの面積で栽培がスタートした。同時に、最上町アスパラガス生産協議会が組織され、栽培研修会や圃場研修会を通して会員全員が統一した栽培体系で展開している。
 最上町を中心として生産が始まったアスパラガス栽培は、管内7市町村に広がり、令和4年現在、管内の生産者は全179人、栽培面積66.7ヘクタール、生産量519.5トンとなっている。

(2)栽培カレンダー
 アスパラガスは収穫できるようになるまで1年以上の年月を要する。栽培は、春に圃場に苗を植え付けして、その年は次年度に向けて養成を行う。
 次年度の4月下旬から順次収穫を行い、5月上中旬に春芽の出荷最盛期を迎える。5月下旬から6月にかけて立茎作業(萌芽してきたアスパラガスを収穫せずに伸長させて、倒伏しないようアーチパイプのネットに誘引する作業、写真1)に入ると、株養成を行い、7月中下旬から夏秋芽の出荷最盛期を迎える。その後は、気温・日照の低下に伴い、9月いっぱいで収穫は終了を迎える(図3)。





(3)生産・栽培上の特色
 当地域は、取り組み当初から夏場の高品質生産を目標に品種の選定や栽培方法の検討を行ってきた。
 畜産農家から供給される堆肥を有効活用し、徹底した土づくりに重点を置き、山形県最上総合支庁産業経済部農業技術普及課の産地研究室において確立されたアスパラガスの長期立茎栽培を導入しながら、生産農家と栽培面積の拡大を図ってきた。
 アスパラガスの長期立茎栽培は、夏場にも収穫を行うため、5月下旬から立茎管理を行うが、特徴的なアーチパイプに立茎を誘引することにより、受光状態を良好にして、夏場の彩りの良いアスパラガス生産に結び付けている。品種はグリーンタワーを主力とし、近年は他品種の試作なども行っている。
 長年にわたる栽培で特定の土壌養分が蓄積することによる生産量への影響を防ぐために、毎年、栽培期間終了後に土壌分析とその結果を踏まえて、栽培研修会を開催している(写真2)。また、土壌養分の蓄積に配慮したオリジナル肥料を開発して、適切な肥培管理を目指している。

3 出荷状況

 主な出荷先は、京浜・長野地区を中心に約10社へ販売している。
 等級はА品を、階級はLサイズを中心としており、荷姿は100グラム束のほか、バラ、5キログラム・2キログラムの発泡スチロールで出荷を行っている(表1)。

4 出荷の工夫

 アスパラガスの導入後、JAでは集出荷施設(写真3)のほか、画像選別機や計量結束機を導入し、共同選果体制を構築した(写真4、5)。
 施設整備により生産農家が栽培に専念できた結果、1戸当たりの経営面積が拡大し、収益性に手応えを得たことが一層の面積拡大に結び付いている。
 また、共同選果を行うことにより品質や規格が統一され、市場との信頼関係がより向上し、高品質出荷・高単価販売といった有利販売につながっている。集出荷施設の稼動により、新たな雇用も創出されている。





5 今後の展望

 最上地域におけるアスパラガス生産は、後発産地ということもあり、当初より高品質なアスパラガス生産を目標にした土づくり、栽培管理を徹底した生産拡大を行ってきた。
 現在は、生産量、品質ともに県内トップの産地であるが、野菜生産を取り巻く状況は、生産コストや労働力に関すること、気象の変動に対する技術的な対策など、これまでにないような課題が浮き彫りとなっている。
 これからも良い野菜づくりを継続していくことにより、選ばれる産地となっていきたいと考えている(写真6)。

◆一言アピール◆

 最上地域の昼夜の寒暖差とこだわりの土づくりが、彩りと食味の良いアスパラガス生産に結び付いており、高い市場評価を得ております。スーパーなどでお見掛けの際は、ぜひご購入いただければ幸いです。

◆お問い合わせ先◆

担当部署:もがみ中央農業協同組合 営農販売部
住  所:山形県新庄市大字福田字福田山711番地73
TEL:0233-32-1511
FAX:0233-32-1510
ホームページ:http://www.mogami-chuo.com