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産地紹介 野菜情報 2023年4月号

和歌山県 JAわかやま ~みずみずしくてシャキシャキ自慢!春系キャベツ産地~

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わかやま農業協同組合 中央営農センター 児玉 常義
キャベツ イメージ

1 産地の概要

 わかやま農業協同組合(以下「JAわかやま」という)は、和歌山県の県庁所在地である和歌山市を全エリアに収める一行政・一JAとなっている。

 瀬戸内海式気候に属し、雨が比較的少なく温暖である。年平均気温は16.1度、年間降水量は1352.6ミリメートルであり、気象条件にも恵まれている。
 管内では、紀の川流域水田地帯の水稲の裏作として、キャベツをはじめ、はくさい、ブロッコリーなどの栽培が行われている。また、海岸部および紀の川の中州砂地地帯では新しょうがやにんじん、だいこんなどの露地栽培のほか、新しょうが、こまつな、ほうれんそうなどの施設栽培が行われ、南東部の中山間地帯では果樹、花きなど都市近郊型農業特有の多彩な作物が栽培されている(図1、2)。
 交通は、関西国際空港をはじめ、鉄道や阪和自動車道などが整備されており、京阪神市場へのアクセスが容易である。京奈和自動車道の建設も進み、都市近郊型農業を展開するに当たり恵まれた環境にある。

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2 キャベツ栽培の概要

 JAわかやま管内は和歌山県最大の水田地帯である。昔は水稲の裏作として、たまねぎが盛んに栽培されていたが、価格低迷を機に、メインとなる新たな品目を探す必要に迫られた。気候や栽培環境に適した作物を探す中で、需要の増加が見込まれるキャベツに着目し、さまざまな品種・作型の試験などを経て、安定的な出荷が可能となった。
 令和3年産キャベツの共販面積は90ヘクタール、農家戸数は340戸、3年度の販売高は3億4005万円であり、管内の水田裏作を支える重要な品目となっている(図2)。

3 生産・栽培上の特色

(1)春系を中心とした栽培体系
 他の産地が市場向けやカットキャベツなど業務用の寒玉系にシフトする中、JAわかやまは差別化により売り場を確保するため、病害虫の管理に手間を要する冬場も含めて柔らかい春系を中心とした栽培体系を構築している(図3)。
 JAわかやまでは、紀の川清流と温暖な気候の中で太陽光をしっかり浴びて育つ野菜を「紀州てまり野菜」としてブランド化している。JAわかやまの春系キャベツは肉質が柔らかく、サラダや炒め物など用途も広いため、関西市場からの信頼が厚く、オリジナルブランド「紀州てまり野菜」を支える柱となっている。

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(2)品種の選定
 品種は、「春のかほりSP」を中心に、近年の気象変動に順応した品種・作型を品種試験によって選定し、11月から翌5月まで切れ目なく供給できるよう安定出荷体系を組んでいる(図4)。

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(3)防除・圃場(管理の工夫
 栽培における重要な点は、上記に挙げた柔らかいキャベツという特性上、寒さなどによる傷みに加え、下葉の軸に近い部分に淡褐色もしくは灰褐色の病斑ができる菌核病などの病気の発生に気を付けて栽培することであり、適期防除を徹底し(図5)、品質の向上につなげている。
 また、圃場の畝を20センチメートル以上に盛り上げる高畝栽培を行うことで、排水性や通気性を良くし、キャベツやはくさいなどアブラナ科野菜の連作による根こぶ病などの発生リスク軽減につなげている。

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(4)省力化の取り組み
ア 育苗施設の活用

 手間のかかる育苗については、中規模・大規模農家がさらなる規模拡大に取り組めるよう、育苗施設(JAわかやまグリーンステーション)を最大限に活用している(写真1)。
 具体的には、育苗の分業化を進めるとともに、8、9月の暑い時期に迎える育苗期間の管理をJAわかやまの職員が担い、発芽不良や病害虫の発生を最小限に抑えることで、新規就農者、定年帰農者などの育苗リスク軽減に取り組んでいる。これにより高品質苗を安定的に生産者に供給し、産地の維持拡大につなげている。

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イ 野菜移植機の導入
 定植作業では多くの農家が野菜移植機を活用しており(写真2)、慣行(手植え)の約5分1の労力で作業を行うことが可能である。機械化は、労力の軽減、作業時間の短縮につながり、管理作業(除草・病害虫防除、かん水作業等)に時間を割り当てることで、品質向上につながっている。
 また、農業従事者の高齢化や担い手不足・離農が進む中、JAわかやまでは農業従事者(新規就農者や既存農業者)の設備投資の負担や労力の軽減を目的として2017年度から野菜移植機のレンタル事業を開始し(写真3)、産地の維持・拡大に貢献している。

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4 出荷の工夫

 出荷最盛期は2月から5月上旬であるが、前述の通り、11月上旬から翌5月下旬までの出荷時期に空白ができないように品種を組み合わせたリレー出荷体系を構築している(写真4)。気温が高い11月や4月下旬から5月においては、真空予冷施設を活用することで、品質を落とさず高品質なキャベツの出荷を実現している(写真5)。
 主な販売先市場は大阪を中心とした京阪神エリアであり、令和3年度の出荷数量は約3600トン、販売額は3億4005万円と、関西の食卓を支えている。

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5 販売戦略

 他の産地が寒玉系を中心に栽培する中、JAわかやまは市場ニーズに対応した春系の良質なキャベツを栽培することで、差別化を図ってきた。
 農産物の安全性を保つため、生産者にはGAPへの取り組みや圃場ごとの防除記録簿を提出してもらい、適切な生産管理や防除が行われているかを営農指導員が確認するなど、ブランド確立に向けて取り組んでいる。
 また、規格や品質を統一するため、市場関係者を招いて目揃え会を開き、生産者間の意思統一や市場との連携を図りながら出荷・販売を行っている。

◆一言アピール◆

 JAわかやまのキャベツは、生産者が安全・安心をモットーに丹精込めて栽培しています。葉はみずみずしくシャキシャキとした食感で、噛めば噛むほど甘みがあります。
 サラダなど生はもちろん、炒め物など火を通しても美味しくいただけます。
 お見かけの際は、ぜひ一度ご賞味ください。

◆お問い合わせ先◆

担当部署:わかやま農業協同組合 中央営農センター
住  所:和歌山県和歌山市栗栖660-1
電話番号:073-471-0102 FAX:073-471-5110
ホームページ:https://www.ja-wakayama.or.jp