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産地紹介 野菜情報 2023年3月号

兵庫県 JAあわじ島 ~伝統を引き継ぎ、進化し続ける「淡路島たまねぎ」~

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あわじ島農業協同組合 販売部 販売企画課 課長 村本 明義
たまねぎ写真

1 産地の概要

(1)多彩な農畜産物を生産する御食国(みつけくに))
 兵庫県の南部に位置する御食国・淡路島は、播磨灘、大阪湾、紀伊水道に囲まれ、本州とは明石海峡および紀淡海峡、四国とは鳴門海峡で隔てられた瀬戸内海最大の島である。
 南あわじ市を管轄とするあわじ島農業協同組合(以下「JAあわじ島」という)は、淡路島の約3分の1を占めており(図1)、島内随一の肥沃な三原平野を形づくる。 
 その農業生産は、たまねぎ、レタス、はくさい、キャベツなどの野菜を中心に、米、畜産、果樹、花きなど多彩な農畜産物を生産している(図2)。

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(2)野菜栽培に適した自然条件
 年間平均降水量は1289ミリメートルで、6~9月の夏場に降雨が多く、冬場に少ない。年間平均気温は約16度、日照時間は1970時間と長く、特に冬場は温暖で真冬日がほとんどないことから年間を通して暖かく、野菜栽培に適した気候である。

(3)長い年月をかけて全国ブランドに成長
 たまねぎのルーツは中央アジアといわれている。古代エジプトの頃にはすでに貴重な栄養源であり、「薬」としても用いられていた。淡路島では、明治21年に米国から輸入した種子を賀集村(かしゅうむら)(現・南あわじ市)で試験栽培したのが始まりといわれている。
 JAあわじ島のたまねぎは、海のミネラルを豊富に含んだ肥沃な土壌で栽培される。水はけが良いため、余分な水分がたまねぎに吸収されず、甘さと栄養分が凝縮されるという特徴を有する。戦後、食の洋風化とともに、淡路島に適した品種改良が行われ、淡路島内で栽培が広がった。昭和39年には栽培面積が3000ヘクタールを超え、130年もの年月をかけて日本有数の大産地となった。それに伴い、淡路島のたまねぎの評価は徐々に広まり、現在では全国ブランドに成長している。

2 生産について

(1)生産動向
 令和3年度の南あわじ市管内のたまねぎ栽培面積は1105ヘクタール、農家戸数は1774戸である。栽培面積は年々減少傾向であったが、近年は好調な販売価格や機械化などを背景に横ばいで推移している。

(2)水稲の裏作として栽培
 淡路島たまねぎは、淡路島で確立している二毛作において、初夏から秋にかけて栽培する水稲の裏作として栽培されている。これは、水稲栽培中の田んぼの水が日光で温められ、土の中の細菌や有機物が早く分解されるため、毎年、稲刈り後に裏作として栽培するたまねぎに連作障害が出ないからである。
 また、淡路島では淡路ビーフや淡路島牛乳が有名なように、古くから畜産業も盛んで、牛のたい肥を利用した土づくりを行っている。南あわじ地域では、100年以上続く水稲・たまねぎ・畜産の伝統的な生産循環型農業システムを実現している。

(3)収穫までの作業内容
 5月頃収穫の早生(わせ)種から6月中旬収穫の晩生(おくて)種まで、収穫時期の異なるさまざまな品種のたまねぎを管内で栽培している(表1)。

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 9月に種をまき、成長した苗を11~12月に田んぼに植え付ける(写真1~3)。そこから寒い冬をじっと耐え、春の気温上昇とともに徐々にふくらみ、栄養をためてじっくり成長する。初夏を迎える時期に緑の葉が自然に倒れ、その後、約1週間しっかりと完熟させ、葉の付け根が柔らかくなると収穫時期の到来である(表2)。
 収穫後は、さらにもうひと手間かける。淡路島特有の「たまねぎ小屋」に吊り下げ(写真5)、自然の風を利用してゆっくりと乾燥させることで、熟成が進み、甘みがより一層増していく。収穫したたまねぎの一部は、大きな冷蔵施設で翌2~3月まで品質を保ちながら冷蔵保存および出荷を続け、長く「淡路島たまねぎ」を楽しんでもらえる工夫を行っている。

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(4)機械化や省力化の取り組み
 平成7~8年には、淡路島の栽培様式(高畝4条植)に適応したたまねぎ収穫掘り取り機(写真4)が開発された。それまでの収穫は、手作業による重労働であったため、機械化が課題になっていた。収穫機は、開発と同時に農家同士の共同利用と補助事業の活用によって大部分のたまねぎ農家に短期間で普及した。
 平成10年には、全自動移植機用の育苗トレイを324穴(通常448穴)にして大苗に育苗することで、従前の収量確保が可能となった。
 平成17年には、ポリコンテナ貯蔵に対応したオニオンピッカーが開発された。
 さらに平成28年には、たまねぎ大型鉄コンテナおよび同コンテナ集荷に対応したオニオンピッカー(写真6、7)の導入、たまねぎ乾燥冷蔵施設(写真8)の建設、たまねぎ根切葉切設備(写真9)の設置を行った。
 たまねぎの機械化一貫体系を確立し、ポリコンテナによる荷受とともに、生産農家の省力化につながる出荷体制を構築している。

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3 労働力確保に向けた工夫

 JAあわじ島では、平成24年に農作物の収穫支援や若手農家の育成などを目指して子会社「アグリアイランド」を設立した。京阪神地区から20~30代の研修生を受け入れ、5年後を目標に独立出来るよう支援している。現在、4人の研修生が独立し、南あわじ市で就農し活躍している。

4 販売戦略

(1)市場出荷を中心に販売 
 JAあわじ島は、市場出荷を中心に販売事業を行っている。
 主な販売先は、京阪神・中京・北陸・京浜地区であり、約35社へ販売している。市場を介することにより多くの取引先と交渉を行い、需要の高い販売先への適正配分を行うことで販売価格の向上を図っている。
 規格は、2Lサイズ(球の横径9.5~11.0センチメートル)、Lサイズ(同8.0~9.5センチメートル)、Mサイズ(同7.0~8.0センチメートル)、Sサイズ(同6.0~7.0センチメートル)であり、Lサイズを中心に出荷している。
 荷姿は、段ボール10キログラム、20キログラム、鉄コンテナ、ポリコンテナである。

(2)輸入品や他産地との差別化
 淡路島たまねぎは、他産地のたまねぎと比べて甘く柔らかいことが特徴で、兵庫県立農林水産技術総合センターの研究によると、甘み成分の全糖含量が約9~10%と他産地に比べ高いこと、辛みを示すピルビン酸が少ないことが分かった(図3)。
 この理由は、100年以上も昔から品種改良やたい肥を入れた土づくりを繰り返してできた淡路島の気候風土に合った品種をじっくりと時間をかけて育て、丁寧に乾燥させる淡路島独自のたまねぎ栽培方法にある。
 平成22年には、「淡路島たまねぎ」の名称で地域団体商標を取得し、地域を挙げてブランド化に取り組んでいる。

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(3)安全性、安定供給に向けた取り組み
 JAあわじ島独自の生産管理システム「JAあわじ島ほんまもん元気野菜システム」を構築し、農薬の適正使用回数を守り、栽培管理日誌の確実な記帳を実行している。土づくりのほか、基本的な栽培管理による安定生産に努め、計画的な作付け、計画的な継続出荷による安定供給に努めている。

◆ 一言アピール ◆

 淡路島たまねぎには、さまざまな品種があり、早生種はスライスサラダやドレッシングなど生のまま、晩生種はオニオンステーキやオニオンスープなど加熱料理がお薦めです。
 一年を通して楽しめる、甘い「淡路島たまねぎ」をぜひご賞味ください。

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◆ お問い合わせ先 ◆

担当部署:あわじ島農業協同組合 販売部

住  所:兵庫県南あわじ市市青木18-1
T E L:0799ー42ー5210
F A X:0799ー42ー3188
ホームページ:https://www.ja-awajishima.or.jp