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産地紹介 野菜情報 2022年12月号

産地紹介 香川県 JA香川県 ~スマート農業を 活用したいちご栽培技術の高位平準化による生産性向上を目指して~

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香川県農業協同組合 営農部 園芸指導課 國重 亮太
いちご

1 産地の概要

 香川県では、一年を通して日照時間が長く、降水量が少ない瀬戸内海式気候を生かして秋冬作物が盛んに栽培されている。ブロッコリー、レタス、金時にんじん、マーガレットなど収益性の高い作物を中心に、全国に誇れる特色ある農産物を栽培しており、県内はもとより京阪神や京浜地域などに新鮮で良質な農産物を供給している。
 香川県の農家1戸当たり耕地面積は1.0ヘクタールであり、全国平均(2.5ヘクタール)の半分以下と農業経営規模は零細であるが、ため池や香川用水などにより農業用水を確保し、農地の効率的な利用や経営の複合化を図り、生産性の高い農業を営んできた。
 香川県農業協同組合(以下「JA香川県」という)は、平成12年4月に県内の43のJAが合併して誕生した。その後、さらに2JAと合併し、25年4月以降、県単一農協として香川県全体を管内としている(図1)。
 令和3年度のJA香川県における農産物取扱高(税抜)は、野菜部門が171億4000万円、そのうちいちごの取扱高は33億9300万円であり、県内2位の品目となっている(図2)。

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2 香川県のいちごの栽培

(1)県オリジナル「らくちん栽培」の開発
 香川県のいちご栽培は、大正14年の高松市栗林での露地栽培が始まりといわれている。本格的な栽培は、戦後の昭和27~28年頃からである。当時の栽培様式は露地栽培、石垣栽培だったが、35年頃からトンネル栽培、その後次第にハウス栽培へ切り替わり、平成8年に香川大学、香川県農業試験場、JA香川県が共同で香川県オリジナルのいちご高設養液システム「らくちん栽培」を開発した。
 「らくちん栽培」は、腰をかがめず立ったまま作業ができることから身体への負担が少ない栽培方法であり、現在も老若男女問わず、この栽培方法を導入している。
 現在、香川県産いちごの約95%が高い位置に設置されたベッドで栽培されている。果実が空中にぶら下がっているため清潔で、日光が均一に当たることから、色沢、大きさ、糖度、形状に優れたいちごの生産を可能にしている(写真1)。

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(2)生産動向
 主な産地は、高松市、丸亀市、観音寺市、さぬき市、東かがわ市、三豊市、三木町、綾川町、小豆島などであり、県内全域において栽培が行われている(図3)。
 栽培面積は、昭和40年代のビニールハウスの普及で急速に増加し、54年には作付面積344ヘクタールに達した。その後、農家の高齢化などにより減少傾向にあったが、「らくちん栽培」などの新技術の開発や県育成品種「さぬきひめ」の導入により、平成27年頃からは作付面積および生産量ともに維持しており、令和2年の作付面積は85ヘクタール、生産量は3150トン(図4)、農家戸数は302戸となっている。

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(3)「さぬきファーマーズステーション」を活用した栽培管理
 栽培管理においては、温度管理を徹底することはもちろんのこと、必要な分だけの肥料や水を与えることで糖度を安定させており、常に「品質」にこだわったいちごを出荷している。遠隔操作で温度や二酸化炭素濃度のモニタリングおよび制御を行うことのできる県独自開発の環境制御システム「さぬきファーマーズステーション」(高位平準化システム)を活用し、作業管理の徹底・効率化を図り、高品質生産につなげている。
 また、生産技術や栽培環境情報などの栽培管理データの集積・分析を行って改善内容を「見える化」し、これらのデータを生産者や指導員が情報共有・比較分析・技術改善することで、産地全体の収量や品質向上に寄与している。
 栽培品種は、高設栽培に適応し、糖度が高くさわやかな酸味の「さぬきひめ」が約76%、甘味の中に酸味をしっかり感じられ、ケーキとの相性が抜群の「女峰」が約22%、その他(「さちのか」など)が約2%である。

(4)出荷状況
 栽培は、いずれの品種も9月に定植を行い、10月中旬頃から収穫が始まる。出荷のピークは3月中旬~5月頃であり7月中旬頃まで市場に出回る(図5、写真2)。
 主な出荷先は京阪神が6割、県内が2割、その他が2割、出荷形態は生食用が8割、業務用が2割である。
 平成12年のJAの広域合併に合わせて、香川県内の野菜・花き・果樹の生産者部会の中心団体である香川県野菜花き生産者研究会が設立され、それぞれの品目の生産者部会が年次毎に生産・販売の方針、決定を担っている。香川県野菜花き生産者研究会いちご部会では、役員会などを開催し、生産状況報告や販売の状況報告などを行っている。
 また、販売促進に向けた消費宣伝活動も生産者部会、香川県および市町長の協力により毎年行っている。香川県のいちごをより多くの消費者に買い求めてもらえるよう日々努力を重ねている。

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3 最近の取り組み

(1)環境にやさしい農業の実現に向けて
 生産現場での省力化(農薬防除回数の削減)や、「みどりの食料システム戦略」の取り組み事項でもある環境保全(化学農薬使用量の低減)を目的として、生物農薬である捕食性天敵(「チリカブリダニ」や「ミヤコカブリダニ」といったハダニ類やアブラムシ類、スリップス類などの害虫を食べる虫)の利用やUV-B(紫外線)蛍光灯照射による病害(うどんこ病)抑制を実施している(写真3)。

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(2)ICT(情報通信技術)を活用したスマート農業の推進
 今年度から、前述の「さぬきファーマーズステーション」の普及・拡大を図るため、香川県、生産者・生産者団体、各研究機関、メーカーなどを協議会員とする「さぬきファーマーズステーション推進協議会」が発足した。
 今後は、高位平準化システムの本格運用に向けて、協議会員内で勉強会などを開催し、技能の研さんに努めていく予定だ(図6)。

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◆一言アピール◆

 いちごには、「ビタミンC」や血を作るビタミンともいわれる「葉酸」のほかにも、「キシリトール」「食物繊維」「カリウム」「ポリフェノール」など、健康効果、美容効果が期待できるたくさんの栄養素が含まれています。
 香川県産のいちごは、多くが高設養液栽培を取り入れており、太陽の光をたっぷり浴びて、色つやが良いのが特徴です。
 先端(果頂部)の方が糖度が高いので、へたの方から2回に分けて食べると、最後までおいしく食べることができます。
 香川県産の栄養豊富ないちごを、ぜひご賞味ください。

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◆お問い合わせ先◆

担当部署:香川県農業協同組合 営農部園芸指導課
住  所:香川県高松市一宮町字刷塚1431ー1
TEL:087ー818ー4122
FAX:087ー818ー4111
ホームページ:https://www.kw-ja.or.jp