(1)県オリジナル「らくちん栽培」の開発
香川県のいちご栽培は、大正14年の高松市栗林での露地栽培が始まりといわれている。本格的な栽培は、戦後の昭和27~28年頃からである。当時の栽培様式は露地栽培、石垣栽培だったが、35年頃からトンネル栽培、その後次第にハウス栽培へ切り替わり、平成8年に香川大学、香川県農業試験場、JA香川県が共同で香川県オリジナルのいちご高設養液システム「らくちん栽培」を開発した。
「らくちん栽培」は、腰をかがめず立ったまま作業ができることから身体への負担が少ない栽培方法であり、現在も老若男女問わず、この栽培方法を導入している。
現在、香川県産いちごの約95%が高い位置に設置されたベッドで栽培されている。果実が空中にぶら下がっているため清潔で、日光が均一に当たることから、色沢、大きさ、糖度、形状に優れたいちごの生産を可能にしている(写真1)。
(2)生産動向
主な産地は、高松市、丸亀市、観音寺市、さぬき市、東かがわ市、三豊市、三木町、綾川町、小豆島などであり、県内全域において栽培が行われている(図3)。
栽培面積は、昭和40年代のビニールハウスの普及で急速に増加し、54年には作付面積344ヘクタールに達した。その後、農家の高齢化などにより減少傾向にあったが、「らくちん栽培」などの新技術の開発や県育成品種「さぬきひめ」の導入により、平成27年頃からは作付面積および生産量ともに維持しており、令和2年の作付面積は85ヘクタール、生産量は3150トン(図4)、農家戸数は302戸となっている。
(3)「さぬきファーマーズステーション」を活用した栽培管理
栽培管理においては、温度管理を徹底することはもちろんのこと、必要な分だけの肥料や水を与えることで糖度を安定させており、常に「品質」にこだわったいちごを出荷している。遠隔操作で温度や二酸化炭素濃度のモニタリングおよび制御を行うことのできる県独自開発の環境制御システム「さぬきファーマーズステーション」(高位平準化システム)を活用し、作業管理の徹底・効率化を図り、高品質生産につなげている。
また、生産技術や栽培環境情報などの栽培管理データの集積・分析を行って改善内容を「見える化」し、これらのデータを生産者や指導員が情報共有・比較分析・技術改善することで、産地全体の収量や品質向上に寄与している。
栽培品種は、高設栽培に適応し、糖度が高くさわやかな酸味の「さぬきひめ」が約76%、甘味の中に酸味をしっかり感じられ、ケーキとの相性が抜群の「女峰」が約22%、その他(「さちのか」など)が約2%である。
(4)出荷状況
栽培は、いずれの品種も9月に定植を行い、10月中旬頃から収穫が始まる。出荷のピークは3月中旬~5月頃であり7月中旬頃まで市場に出回る(図5、写真2)。
主な出荷先は京阪神が6割、県内が2割、その他が2割、出荷形態は生食用が8割、業務用が2割である。
平成12年のJAの広域合併に合わせて、香川県内の野菜・花き・果樹の生産者部会の中心団体である香川県野菜花き生産者研究会が設立され、それぞれの品目の生産者部会が年次毎に生産・販売の方針、決定を担っている。香川県野菜花き生産者研究会いちご部会では、役員会などを開催し、生産状況報告や販売の状況報告などを行っている。
また、販売促進に向けた消費宣伝活動も生産者部会、香川県および市町長の協力により毎年行っている。香川県のいちごをより多くの消費者に買い求めてもらえるよう日々努力を重ねている。