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産地紹介 野菜情報 2022年10月号

茨城県 JAなめがたしおさい ~“輸出を通じて、「焼き芋」を世界共通語に” 持続的農業発展を見据えたグローバル産地へ~           

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なめがたしおさい農業協同組合 なめがた地域センター 次長 野原 正幸
焼き芋

1 産地の概要

 なめがたしおさい農業協同組合(以下「JAなめがたしおさい」という)は、茨城県の行方(なめがた)市および潮来(いたこ)市を管轄区域とする「なめがた農業協同組合」と、鹿嶋(かしま)市および神栖(かみす)市を管轄区域とする「しおさい農業協同組合」が平成31年2月に合併して発足した(図1)。

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 しおさい地域は、神栖地区・波崎地区を中心としてピーマンの生産が盛んで、出荷量は全国の農協で最多である。一方、なめがた地域は、かんしょを中心に、いちご、れんこん、みずななど60品目以上を生産する多品目産地となっている。
 令和3年の組合員数は1万8453人、青果物の販売金額は207億3400万円である。販売額第1位はピーマン81億8400万円、第2位はかんしょ47億400万円、第3位はいちご9億2800万円、第4位はれんこん8億1100万円、5位はみずな4億5800万円となっている(図2)。

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2 かんしょ栽培に適した「なめがた」台地

 なめがた地域は、茨城県の南東部に位置し、霞ヶ浦(全国2位面積)と北浦(全国15位面積)に挟まれた半島状の地形である。両湖岸および南端の水郷地帯は、平坦な水田地帯が拓け、中央部は火山灰土(関東ローム層 赤土)からなる平地と起伏に富んだ傾斜畑地帯に大別され、全国的にも数少ない耕地条件となっている。
 平均気温は13度、降水量は1395ミリ、日照時間は1874時間であり、太平洋側の気候の影響を受け、適度な降水があり、温暖な気候である。
 土壌は、淡色黒ボク土で淡い色をした火山灰などからできており、養分を保ち、重さが軽くて排水性が良いため、地域一帯は、気候および土壌ともにかんしょ栽培に適している。
 

3 3品種によるリレー出荷体制の構築

 JAなめがたしおさいで栽培しているかんしょの主な品種と作付面積は下表の通りである。

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 主に「紅優甘(べにゆうか)」「紅まさり」「紅こがね」の3品種を組み合わせて出荷しており、この他、「パープルスイートロード」や「紅赤(べにあか)」「ひめあやか」「行方(なめがた)紫福(しふく)」などの作付けも行っている。
 令和3年産の生産者は238人、総作付面積は750ヘクタール(平均3.2ヘクタール/人)、取扱量は約2万トンである。
 貯蔵期間や品種によって、かんしょに含まれるでん粉が糖に変化する糖化の速度が違うため、異なる品種を組み合わせることで、甘味のあるしっとりした食感になるかんしょを周年で供給するという、全国で類を見ない品種リレー出荷体制を構築した(図3)。

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4 出荷規格・仕向先について

(1)用途別販売内容
 JAなめがたしおさいは、平成15年からスーパー50店舗で焼き芋の店舗内販売を開始した。寒い時期に路上で移動しながらの引き売りで高値販売していた「焼き芋」を、スーパーの店頭に小型の電気式焼き芋機を設置することで、手頃な値段で一年中おいしく販売出来るスタイルを全国に先駆けて確立した。
 家庭での調理の手間などから生芋よりも焼き芋の販売量が伸長する中、現在、かんしょ生産量の8割程度を焼き芋用に出荷している。
 規格については、焼き芋用に需要の多いM・Lサイズ中心の生産技術導入に取り組んでいる。さらに、取引先ごとに話し合い、サイズや形状、出荷形態の変更を行うなど、特別規格として可能な限り需要者のニーズに応えられるよう、さまざまな商品づくりを行っている。

(2)洗浄・選果・調製作業
 収穫後のかんしょは、よく水洗いし、傷を付けないよう、丁寧に調製した上で、ケース箱内の形状や長さを揃えて出荷している。また、例年、かんしょの傷みが生じやすくなる12月以降に全量キュアリング処理(注)を行うことで、長期貯蔵を可能にしており、周年安定供給体制の構築に寄与している。

(注) キュアリング処理とは、掘り取り後すぐに土付きのまま、温度を30~33度位、湿度を90パーセント以上の条件にして、4日間貯蔵し、その後、放熱して13~14度に調整することにより、収穫時の傷にコルク層を作り、病原菌の侵入を防ぐこと。この処理をすることで、傷を治療し、長期貯蔵が可能となる。

(3)仕向先
 JAなめがたしおさいのかんしょは、京浜市場を中心に、北海道から関西、九州方面の市場に幅広く出荷しており、各市場を経由して全国の小売店で販売されている。
 さらに、平成28年からは、シンガポール、マレーシアを皮切りに、北米、東南アジア、EUなどへの輸出も展開している。輸出先からの高い評価や東南アジアを中心とした現地での「焼き芋ブーム」などを背景に、輸出量は増加基調で推移している(図4)。

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5 6次産業化の取り組み

 焼き芋以外にも、食品メーカーと連携して、大学芋、干し芋、ペースト、パウダー、菓子などに商品化しており、6次産業化に取り組むことで、生産者の所得向上につなげている。
 平成27年10月には、食品企業と市およびJAなめがたしおさいが協力して、かんしょと農業の体験型テーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」をオープンした(写真1)。

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 焼き芋の歴史を学び、かんしょの加工場見学が出来る体験型の「やきいもファクトリーミュージアム」があるほか、旬野菜の収穫などの農業体験も可能であり、地元雇用の創出や県内外からの観光客の増加にも寄与している。
 これらの取り組みが功を奏し、28年に、農業における技術・経営の改革や地域社会の発展に貢献している団体などを表彰する「第46回日本農業賞」で大賞を受賞。さらに29年には、全国で行われた表彰や共励会、品評会などから選定・表彰する「第56回農林水産祭」で経営多角化部門天皇杯を受賞した(写真2、3)。

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6 グローバル産地化に向けた新たな挑戦

 平成28年から開始した輸出については、29年の天皇杯受賞を契機に、日本農業のトップランナーとして積極的に展開しており、海外での焼き芋需要の増加にも大きく貢献している。
 輸出拡大に向けて、トレーサビリティ機能を活用し、病原菌(基腐病)や農薬基準などが問題になった圃場を早期確定するとともに、QRコードを使用したプロモーション活動による拡販活動に取り組んでいる。
 また、差別化を図るため、外装箱のデザイン統一や外装のシリーズ化といったブランディングによるリピート顧客の増加や付加価値販売を目指している(写真4)。
 さらに、パレット規格に沿った輸送を行うことで、輸送効率を向上させ、顧客への高品質な商品の提供を可能にしている(写真5)。

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 こうした取り組みが功を奏し、輸出額は、令和2年産1億5800万円から令和3年産2億9200万円と1.8倍となった(図4)。
 持続的農業発展を見据えたグローバル産地化に向けて、商品特徴・産地特徴・生産者の想いなどの物語を伝え、日本発の食文化「焼き芋」を普及させる。さらに、加工品の拡販やコロナ禍でのオンラインチャネルを利用したアプローチなどを通じて、かんしょの可能性を広げていく予定である。
◆一言アピール◆
 365日いつ食べてもおいしい焼き芋を提供するために研究を重ねています。
 甘くしっとりした焼き芋をぜひご賞味ください。
 

「紅優甘」を使用した冷凍焼き芋

お好みの柔らかさになるまで自然解凍することでアイスにも!
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◆お問い合わせ先◆
 担当部署:なめがたしおさい農業協同組合 なめがた地域センター園芸課
 住 所:〒311-3835 茨城県行方市島並857-35
 電話番号:0299-72-1880
 ファクス:0299-72―1113
 ホームページ:https://ja-ns.or.jp/