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産地紹介 野菜情報 2022年9月号

青森県 JA十和田おいらせ ~長期間出荷可能なだいこん産地の維持を目指して~

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十和田おいらせ農業協同組合 下田支店 営農経済課 山田 智史
だいこん

1 産地の概要

 十和田おいらせ農業協同組合(以下「JA十和田おいらせ」という)は青森県の東部に位置し、主要都市の青森市へは60キロメートル、八戸市へは30キロメートル、空の玄関口三沢空港へは20キロメートルの位置にある。
 平成20年に十和田市農業協同組合、ももいし農業協同組合、下田農業協同組合が合併してJA十和田おいらせが誕生した。さらに、22年4月には八甲田農業協同組合、横浜町農業協同組合、はまなす農業協同組合と合併し、2市5町3村に及ぶ広域JAとなった(図1)。JA十和田おいらせの組合員数は、令和4年4月現在1万1451人(うち正組合員6235人、準組合員5216人)である。

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 JA十和田おいらせの北部地域は、恐山や釜臥山(かまふせやま)を代表する山間部が多く、南部地域は平たんな台地(海抜65メートル)で、西方に八甲田連峰がそびえ、十和田湖を源とする奥入瀬川が流れる自然豊かな環境を誇っている。
 本店のある十和田市の気候は、年平均気温が10.2度、年間降水量が1060ミリメートルであり、冬は晴天の日が多く、県内では積雪量が少ない地域である。しかし、6月から7月にかけてはオホーツク海高気圧による「やませ(冷たく湿った東寄りの季節風)」が吹くことがしばしばで、気温が平年より5~6度も低い日が続き、農作物に大きな被害をもたらすこともある。
 農業形態をみると、北部地域は酪農を中心とした畜産農家が多く、南部地域は稲作を中心に畑作、野菜、畜産などといった、気候や土壌などの環境条件に適合した多様な経営形態が形成されている。
 JA十和田おいらせの令和3年度の販売金額は、米穀類38億6000万円、野菜65億1000万円、畜産41億4000万円などとなっている。野菜では、ながいも14億8000万円、にんにく15億4000万円、だいこん10億円が主力であり、この3品目で野菜全体の約6割、だいこんについては野菜全体の15%を占めている。

2 だいこん出荷体系の構築 ~栽培面積 拡大と品質向上に向けた取り組み~

 JA十和田おいらせ管内では、おいらせ町(ももいし、下田)を中心に夏場のやませがもたらす冷涼な気候を生かし、古くからだいこん、にんじん、キャベツなどの栽培が行われてきた。
栽培開始当時のだいこん生産については、家族労働を主体とする個人経営がほとんどで、明け方の早朝から収穫し、昼頃までに洗浄・選別を終え、出荷していた。
 このような中、ももいし地区では昭和60年頃には農家の高齢化が進み、重労働であるだいこんの収穫作業を業者が担い買付ける「畑買い」が増加した結果、農協への集荷量が減少した。そのため、農協が地域から雇用者を確保し、だいこんの収穫作業および洗浄・選別作業を受託する共同選別(以下「共選」という)出荷体制を構築することとなった(写真1、2)。

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 これにより、農家は、土づくり・播種(はしゅ)・間引き・病害虫防除までの栽培管理に集中できるようになった。だいこん栽培における労働時間(県経営指標は10アール当たり60.9時間)の大半を占める収穫から出荷までの同55.0時間を委託することで、重労働であった収穫作業から解放され、栽培に要する作業が同5.9時間と大幅に短縮されたため、高齢を理由に栽培を断念する農家の減少や規模拡大を目指す農家の増加にもつながった。現在、管内のだいこんの農家戸数は111戸、栽培面積は265ヘクタール(平均2.4ヘクタール/戸)となっている。
 また、農家が個々に収穫および選別する「個人選別(以下「個選」という)」が主体である下田地区においても、平成20年に共選施設の新設およびだいこん専門収穫機械の導入により本格的な共選が開始された。令和3年の共選利用率は約3割、ももいし地区では約7割、JA十和田おいらせ全体の取扱量では約5割となっており、栽培面積の確保と安定した品質向上に取り組んでいる。

3 出荷の主な概要

 共選および個選で集荷しただいこんは、一時的に予冷施設で保管し、品質保持のため保冷トラックへ積み込み、主に関東・中京に向けるほか、各地へ約9800トン(令和3年度)出荷している。
 出荷形態は、10キログラム段ボールと15キログラム段ボール(加工品)の2種類である。
 選果基準は、等級ではA、B、加工、階級では2L、L、M、Sと区分している。加工については、等級がA・Bに適合しないもので、階級がL以上のだいこんの首部と根の先を切り落とし、段ボールに15キログラム詰めとしている(図2)。

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4 産地安定化のための取り組みと販売戦略

(1)健康な土づくり・栽培技術の向上
 JA十和田おいらせでは、「健康な土づくり」を目指して独自で土壌診断を行っている。従来の窒素、リン酸、カリウムに偏った肥料体系を改め、足りない微量要素などを補って土壌のバランスを良くすることで、安定した品質管理ができ、過剰な肥料分を抑えることでコスト削減にもつなげている。
また、農家や圃場(ほじょう)を巡回し、病害虫の発生状況などの情報提供、生育状況の確認などを行っているほか、栽培講習会や出荷目揃い会などを開催し、栽培技術の向上にも努めている。

(2)出荷期間の長期化による販売量の確保
 おいらせ町のだいこん作付けは、3月播種の「トンネル+マルチ栽培」、4月播種の「ベタ掛け+マルチ栽培」に取り組んでおり、関東産の出荷が終了して北海道産の出荷が本格化するまでの6月から7月にかけて全体の約4割の出荷に対応している。
 また、6月中旬から7月下旬播種の露地栽培による秋だいこんも作付けしており、8月以降においても安定した販売量を確保するため、青果物取扱業者との契約取引に取り組んでいる。夏から秋にかけて長期間にわたり各地へ出荷を行うことにより、県内有数のだいこん産地の維持を目指している(図3、写真3、4)。

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◆一言アピール◆

 冷涼な環境でのびのびと育ち、色白でみずみずしく、なめらかな肌で、煮ても、焼いても、漬けても、生でもおいしい、そんなおいらせ町出身の新鮮なだいこんをぜひご賞味ください。

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◆お問い合わせ先◆

 担当部署:十和田おいらせ農業協同組合下田支店 営農経済課(野菜センター)
 住  所:〒039-2156 上北郡おいらせ町木ノ下南2-631
 電話番号:0178-56-2138
 FAX番号:0178-56-4586
 ホームページ: https://www.jatowada-o.or.jp/