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産地紹介 野菜情報 2022年7月号

北海道 JA十勝清水町 ~にんにく産地の復活を目指して誕生した特産品「十勝清水にんにく」~

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十勝清水町農業協同組合 農産部 審査役 石井 博之
にんにく

1 産地の概要

 清水町は、北海道東部に広がる十勝平野の西側に位置する、農業を基幹産業とした町である(図1)。町内には、日高山脈から多くの河川が流れており、町名もその一つであるペケレベツ川(アイヌ語で清らかな川)が由来となっている。

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 耕地面積は1万3854ヘクタールで、大部分が十勝川流域と河川に挟まれた台地および日高山脈の麓より広がる扇状地からなっており、その豊かな大地で酪農と畑作を中心とした農業が長年営まれている。
 十勝清水町農業協同組合(以下「JA十勝清水町」という)は、清水町のみを管内とし、組合員数は令和4年4月現在1354人(うち正組合員448人、準組合員906人)である。

2 にんにく栽培を始めたきっかけ

 JA十勝清水町におけるにんにく栽培は、平成21年に生産者12戸でスタートした。当時の組合長が知人から「近年、食の国産志向が高まっており、にんにくが特産品になる可能性がある」と勧められたことが契機となり、栽培品目に取り入れることになった。
 現在では、青森県が国内生産量の70%のシェアを占める大産地となっているが、昭和40年頃までは北海道がにんにくの産地であった。その後、青森県がシェアを拡大する間、道内のにんにく栽培は、中国産にんにくの輸入増加とともに衰退の一途をたどっていた。このため、当JAがにんにく栽培を開始する際には、道内における栽培に関する最新の情報がほとんどなく、主産地である青森県に何度も足を運んで情報収集を行い、栽培を重ねながら地域に適した栽培技術を確立してきた。

3 にんにく栽培の現状

 栽培開始後13年が経過した現在、にんにくの産地は3JA(当JA、JA十勝池田町およびJAあしょろ)に広がっており、生産者戸数27戸、栽培面積25ヘクタールとなっている。
 設備面では、平成27年に冷蔵庫3室を備えたにんにく乾燥貯蔵施設を整備。全体の収容能力は150トンで、冷蔵庫3室のうち、収穫後の乾燥処理とCA貯蔵(注1)が可能な部屋がそれぞれ1室ずつあり、CA貯蔵庫の整備により周年出荷が可能となっている(写真1)。

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 年間の作業スケジュールは図2の通りである。

(注1) CA貯蔵とは、Controlled Atmosphere(空気調整)の頭文字で、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素濃度を調整することにより、貯蔵される青果物の呼吸を最小限に抑制し、鮮度の低下をおさえる貯蔵方法。

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4 ブランド化の取り組み

(1) 「しみず有機」による地域循環型農業の実践
 当町は、酪農や肉牛の他に養鶏も盛んであることから、土作りに欠かせない堆肥などの有機物資源に恵まれている。この恵まれた条件を生かし、平成20年より、JAの家畜排泄物堆肥化施設にて、牛糞と鶏糞による堆肥ペレット肥料「しみず有機」を製造。地域循環型農業の実践を推奨するとともに、26年からは「しみず有機」を施用した作物(にんにく、小豆、アスパラガスなど)を「とれたんと(注2)」というJAの取り組みブランドとして位置付け、販売事業を展開している。
 また、にんにく栽培を始めた当初から「十勝清水にんにく」のネーミングで販売を展開してきたが、さらなる知名度向上によるブランド力強化を図るため、令和3年に「十勝清水にんにく」のロゴを新たに作成するとともに、商標登録を申請している(図3)。

(注2) 「とれたんと」は「とれたて」と、「たんと(たくさんの意)」を組み合わせたJA十勝清水町の登録商標。

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(2) 規格外品の高付加価値化
 生産者の所得確保のためには、単収向上とともに青果向けの販売価格をいかに高く設定できるかということが鍵になるが、販売価格については、圧倒的な物量およびブランドが確立されている青森産と肩を並べることは難しい。そこで、平成24年より、収穫量の3~4割程度発生する規格外を加工用として販売するのではなく、JAが黒にんにくに加工することで、規格外品の活用による付加価値向上を図ることとした(写真2)。その後、にんにくの生産量が順調に伸びてきたため、27年に、農産物加工処理施設を整備し、現在では、黒にんにく以外のにんにく加工品にも着手、年間およそ25トンの加工を行っている。

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(3) 優良種子の確保
 にんにく栽培では、最初に種子を導入し、その後、2~3年は収穫物のりん片を植えて自家増殖を行うが、  これは、種子の増殖率が4倍程度と極めて低いことと、種子の導入コストが高価であるからである。
 一方、種子の導入コストを低減しようと自家増殖年数を伸ばすと、モザイク病などのウイルス感染が進み生産性が低下する。このため、にんにくの安定生産のためには、毎年安定的に、ウイルス感染が少ない生産性の高い優良種子をどのようにして確保するかが重要になる。
 しかしながら、当JAが栽培を開始した当初は、ウイルスフリー種子の導入が困難であったため、優良種子の確保を最優先課題と位置付け、平成23年に外部の関係機関とプロジェクトチーム(JA十勝清水町、株式会社植物育種研究所、株式会社リープス、赤平オーキッド株式会社)を立ち上げ、海外の企業と提携し、ウイルスフリー苗の大量生産に取り組むことになった。なお、培養方法、ウイルスフリー苗の栽培方法などについては、情報が少なく、手探り状態の中で試行錯誤を繰り返し、一連の技術を確立するまでに3年程度を要した。
 現在は、海外で培養させたウイルスフリー苗を定期的に輸入し、ハウス10棟(110坪ビニールハウス4棟、190坪ビニールハウス6棟)で2年間増殖させ、採種()を経て、生産者へ供給する体制を構築している(写真3)。

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(4) 地域独自の栽培技術対策
 「十勝清水にんにく」の栽培基準は、「しみず有機」を10アール当たり100キログラム施用することとしており、その基準を満たしたもののみ、「十勝清水にんにく」として出荷している。
 また、当地域では、冬期間にマイナス20度を下回ることが珍しくない。例年、12月中旬頃に根雪となり、にんにくは、雪の下で厳寒期を凌ぐが、直近の3年間は年明けの厳寒期に積雪がないという年が続き、凍害により生産量が落ち込んでいる(図4)。

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 厳寒期ににんにくが強風にさらされると、地上部の茎葉のみならず、根が損傷を受け枯死してしまうため、防風ネットを設置し、冬期間の防風対策を導入している生産者も少なくない(写真4)。

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(5) 省力化対策
 当初は、主力の畑作物(小麦、てん菜、豆類)と作業が競合しないというメリットで作付者が増えたが、マルチ栽培では手間がかかるため、ある程度の栽培面積を超えると労働力不足により作付面積を伸ばせない。そこで、海外で主流になっている平畝の露地栽培に着目した。今後、にんにく栽培を継続していくためには省力化が最も重要との考えのもと、海外視察を経て、令和2年度に海外製の播種(はしゅ)機、収穫機、粗選別設備、種子分割設備を導入している。
 現在、生産者の省力化および規模拡大のサポートを図るため、JAが植付・収穫作業を行っている。従来のマルチ栽培に比べ、播種作業および収穫作業に要する時間当たりの作業量は6~7倍で、省力化に大きく貢献できている。
 また、平畝栽培は高畝マルチ栽培に比べ、厳寒期の強風にさらされる部分が少なく、凍結害は軽微という結果になっている。

(6) イベントを通した「十勝清水にんにく」のPR
 「十勝清水にんにく」を消費者に選んでもらえるようにするためには、効果的なPR活動も重要になることから、令和元年度に、町、にんにく部会(JA十勝清水町)、商工会、観光協会とともに、「十勝清水にんにく肉まつり」を開催し(写真5、6、図5)、町内外の消費者に対するPR活動を展開した。次年度以降は、新型コロナウイルスのまん延により中止しているが、地域活性化への貢献と十勝清水にんにくのPRを図るため、町内の飲食店に対し、「十勝清水にんにく」や当JAのブランド牛「十勝若牛」を提供し、飲食店側はこれらの食材を利用した料理を一般消費者に提供するという期間限定の飲食店フェアを開催している。

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5 最後に

 清水町では、令和3年度に、「北海道でのにんにくの産地は清水町」となれるよう、「十勝清水にんにくの産地化宣言」を行っており、当JAでは、今後、さらなる認知度向上、生産量および栽培面積の拡大を図るとともに、持続的な産地形成に向け取り組みたいと考えている。
 
◆一言アピール◆
 「十勝清水にんにく」は、青果向けの出荷は道内が中心のため、道外の方にはなじみが薄いかもしれませんが、にんにく加工品については、全国に展開しています。ドレッシングやスナック菓子など、どれも美味しい商品です。「十勝清水にんにく」のロゴが入った商品を見かけましたら、是非ご賞味ください。
 
◆お問い合わせ先◆
 担当部署:十勝清水町農業協同組合 農産部
 住  所:〒089-0198  北海道上川郡清水町南2条1丁目8番地
 電話番号:0156-62-2131
 FAX番号:0156-62-4714
 ホームページ:https://www.ja-shimizu.or.jp/