野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 宮崎県 JA都城 ~土地利用型農業における輪作作物として生産が拡大した都城産らっきょう~

産地紹介 野菜情報 2022年6月号

宮崎県 JA都城 ~土地利用型農業における輪作作物として生産が拡大した都城産らっきょう~

印刷ページ
都城農業協同組合 営農部 園芸課 東中 真一
都城産らっきょう

1 産地の概況

 都城農業協同組合(以下「JA都城」という)は、宮崎県の南西部に位置し、一帯は西部の霧島連峰、東部の鰐塚(わにつか)山系に囲まれた山間盆地である。都城市、三股町の1市1町を所管区域としている(図1)。

図1 JA都城の管内図

 気候は、昼夜、夏冬の気温差が大きい内陸性気候となっている。特に冬期の冷え込みは厳しい。この地域の気候の特徴として、冬の霧島おろし(強風)、夏の雷、夏から冬にかけての朝霧の発生などがある。一般的に冬は乾燥し、降水量は、4~9月までの半年間に約80%が集中している(表1)。

表1 北諸県かた地域の気象状況

 管内の耕地面積は1万3630ヘクタールで、田6852ヘクタール、畑6802ヘクタールとなっている(令和2年農林水産関係市町村別統計より)。
 令和2年の農業産出額は911億円で、県全体の農業産出額の27.3%を占めている。内訳は米39憶円、野菜73億円、いも類27億円、畜産759億円で、県内で最も畜産のウエイトが高い地域である(図2)。

図2 都城市・三股町の農業産出額

 耕種部門については、米と露地野菜(加工用ばれいしょ、加工用ほうれんそう、さといもなど)が中心の土地利用型農業の産地となっている。茶は県内有数の煎茶の産地であり、原料用かんしょは焼酎用として地元企業と連携した生産が行われている。作付け状況は春夏作(6月中下旬調査)では飼料、特産類が多く、次いで野菜類が多い。特産類の内訳をみると、原料かんしょが8割以上を占める。野菜類では、ごぼう、さといも、らっきょうが上位を占めている。
 秋冬作(11月中下旬調査)では、飼料、野菜類が多い。野菜類では、だいこん、ほうれんそう、にんじんが上位を占めている。

2 らっきょうの作付けと栽培条件

 古くから薬用植物として珍重されているらっきょうは、都城市のシラス台地上に多い黒ボク土の作付けが多い。排水が良好であることから玉締まり(注1)の良いらっきょうができる。
 従来は、人手に頼る栽培管理や収穫作業であったため(写真1)、大規模な機械装備を必要とせず、家族経営での作付けが主体だった。しかし、近年ではごぼうやかんしょ、にんじんなどの複数の露地野菜栽培を主体とする大規模経営体において、周年の労働力確保や連作回避のための品目としてらっきょうが作付けされている(写真2)。

(注1) 結球力が強いこと。

写真1 人手に頼ったらっきょうの定植(左)と収穫作業の様子

写真2 機械による定植(左)と収穫作業の様子

 管内のらっきょうの栽培面積は約15ヘクタール、出荷量は約255トンである(令和3年産JA都城取り扱い)。栽培している主な品種は「らくだ」で、球の肥大が良く、全国で広く栽培されている品種である。
 らっきょうの種球(植え付け用の球根)は、前作で収穫して乾燥、夏超ししたものを秋に畑に定植するが、そのような種球利用を数年継続すると、ウイルス感染により葉の黄斑モザイクやねじれ、株の萎縮、大幅な収量の減少を引き起こす。対策としては、茎頂培養によりウイルスフリー化された種球への定期的な更新を行うことが重要である。
 秋に定植された種球は、萌芽し、地上部の生育がいったん進むが、厳寒期に入ると生育が一時停止する。ただし、厳寒期であっても地下での根の生長は続き、春に向かって気温の上昇と日長が長くなることで、再度地上部の生育や球の肥大が進む。
 畑での栽培期間が長いため、追肥と土寄せを3回に分けて行う。1回目は11月上旬に分球を促進させるために行う。2回目は3月上旬に行い、着色を防ぐため株元に土を丁寧にかける必要がある。また、気温の上昇とともに肥料の吸収量が増加し、施用効果が高くなるので追肥の時期が遅れないようにする。3回目は4月上旬に行う。やはり着色を防ぐため株元に土を丁寧にかけるが、収穫が近い時期の追肥は球の首しまりが悪くなり、茎葉が過繁茂となるため行わない(図3)。

図3 栽培カレンダー

 近年は、各種資材の高騰や雇用労力の安定確保が難しい状況のため、特に手作業に頼ることの多いらっきょう栽培では、省力化が課題となっている。現在は定植作業の省力化のため、紙製育苗ポットが連結したチェーンポットの利用、一部圃場(ほじょう)で収穫機械の試験的導入に取り組んでいる。

3 商品の特徴と出荷販売

 保肥力のある肥沃な黒ボク土で栽培されたらっきょうは、玉締まりが良く、歯ごたえがあり、香りがいいのが特徴である。
 出荷は5月上旬頃より開始され、7月上旬まで続く。市場向け青果販売と地元の加工業者向け粗出荷販売に分かれており、市場向けは5月上旬~6月上旬頃まで、約55トン、加工向けは6月上旬~7月上旬頃まで、約200トン出荷する。
 主な市場出荷先は、広島、福岡、熊本エリアとなっている。生産者から集荷したらっきょうは、その日のうちにJA選果場の選果機でL、M、Sの大きさに分けて選別され、10キログラム段ボールに詰められる。その後すぐ予冷し、翌日には出荷される。
 出来るだけ新鮮な状態で消費者まで届けるため、収穫から2日後には市場に到着するよう努力している。
 地元加工業者へ出荷する生産者は、大規模農業生産農家が中心で、契約生産・販売で取引している。出荷は、収穫後、直ちに約400キログラムのフレキシブルコンテナ(注2)で直接生産者から地元加工業者の工場へ運搬する流れで行う(写真3、4)。出荷されたらっきょうは、運搬後にすぐ洗浄、加工処理後、約1カ月間漬け込みされる。

(注2) 粉粒体を大量輸送することを目的に、折り畳みができる柔軟性の材料を用いて袋状に造られ、吊り上げるためのつり部と、注入・排出ができる開口部を備えたコンテナ。※出典:日本フレキシブルコンテナ工業会ウェブサイトより

写真3  約400キログラムのフレキシブル コンテナによる出荷


写真4 加工業者の工場内での作業風景

 商品は、7月下旬頃より年間を通して、生協を中心に全国各地で販売される。JA都城とのタイアップ商品(塩漬けらっきょう)も一部取り組んでおり、3~4月に関東や関西エリアの市場から、量販店向けを中心に出荷されている。

◆一言アピール◆

 都城盆地の寒暖差の大きい気候、霧島山系の豊かな水、肥沃な火山灰土で育てられたらっきょうは、大粒でカリカリと歯応えがよく、香りもよいのが特徴で、地元では、新鮮ならっきょうを生のままスライスし、酢みそにつけて食べています。
 近年は、手間がかかるため自宅でらっきょうの漬物を作らなくなっていますが、当管内の加工業者で製造された塩漬けらっきょうは全国で販売されていますので、ぜひご賞味ください。
 今後も、市場や消費者の皆様のニーズに応えるべく、生産対策を徹底し、品質向上と安定供給に努めてまいります。

らっきょう漬けの写真

◆お問い合わせ先◆

 担当部署:都城農業協同組合 営農部 園芸課
 住  所:宮崎県都城市都北町5710-1
 電話番号:0986-38-6691
 FAX番号:0986-38-3942
 ホームページ:https://miyakonojyo.ja-miyazaki.jp/