野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 高知県 JA高知県安芸地区 ~全国一のなす生産量と機能性表示食品「高知なす」の産地~

産地紹介 野菜情報 2022年4月号

高知県 JA高知県安芸地区 ~全国一のなす生産量と機能性表示食品「高知なす」の産地~

印刷ページ
高知県農業協同組合 安芸営農経済センター 課長 笹岡 晶
なす

1 産地の概要

 高知県農業協同組合(以下「JA高知県」という)安芸地区は、高知県東部に位置し、室戸市、安芸市、東洋町、奈半利町、田野町、安田町、北川村、芸西村の8市町村から成る。総面積は1123平方キロメートルで、県土の16%を占めている(図1)。

図1 JA高知県安芸地区の位置図

 当地域の林野率は88%と高く、山並みが海岸まで迫っている。これら山並を縫って河川が太平洋に注ぎ、平野は河川の中下流域に散在しているが、耕地はこれら平野と海岸段丘に多く見られる。
 気候は、年平均気温が17度台と年間を通じて温暖で、年間1800ミリ以上の降水量がある(図2)。年間の日射量も多く、温暖で多照な気象条件を生かした施設園芸が盛んで、高知県のなす生産量は全国一となっている。そのうち安芸地区は県全体の約90%を占めている。

図2 高知県と東京の気温・日射量(1991~2020年)

 また、温暖で降雨量も多いことから当県はゆずの栽培も盛んで、こちらも全国一の生産量であり、ゆずにおいても安芸地区は県内一の生産量を誇っている。
 安芸地区管内の施設園芸は、高知県の“蔬菜(そさい)園芸発祥の地”と呼ばれ、古くからの歴史がある。1917年にきゅうりやなすなどの果菜類栽培が始まり、1932年頃からきゅうりを中心に面積が増加した。しかし、連作障害の発生によりピーマンなどに品目転換が行われ、1960年頃からビニールハウスでなすの栽培が増加し、1958年には12ヘクタールであった面積が1969年には140ヘクタールに、2016年には225ヘクタールに広がった。
 このように同地区は冬季に温暖で多照な気象条件を生かして、古くから集約的な施設園芸が盛んな地域であり、現在は、なす(高知なす)とピーマンの生産が大半を占めている。
 令和3園芸年度(8月から翌7月の1年間)における、管内の集出荷場に所属する生産者数は646人で、栽培面積は141ヘクタール、出荷量は1万9556トンとなっている。販売額はなすが74億1000万円と最も多く、次いでピーマンが15億6000万円となっている(図3)。

図3 令和3園芸年度の販売額

2 栽培カレンダー

 JA高知県安芸地区で生産されるなすは、芸西、赤野、穴内、安芸、中芸、芸東の6カ所の集出荷場から出荷されており、各集出荷場には部会が設けられている。
 主な栽培品種は、竜馬や土佐鷹、慎太郎、はやぶさなどである。すべて促成栽培で加温栽培が多いものの、海岸沿いでは無加温栽培もある。定植は8月下旬が中心で、主に9月から6月まで収穫され、全国へ出荷されている(図4、写真1、2)。

図4 促成栽培なすの年間作業  写真1 高知なすの圃場 写真2 環境制御されたハウス内の様子

3 栽培の特色

 当地区ではIPM技術(注)や環境制御技術を導入し、安全で高品質ななす栽培に取り組んでいる。
 IPM技術では、ホルモン剤による単花処理から平成4年にはハチ類を使用した省力化技術の普及を始めた。その後、天敵昆虫の使用研究を重ね、19年頃から土着天敵と天敵製剤の普及が進み、現在では生産者のほぼ全員が天敵を導入している(写真3)。

写真3 IPM技術で利用されている天敵昆虫

 環境制御技術では、生産者グループによる新技術の実証試験の成果報告や県とともに新技術の導入推進に取り組んでいる(写真4)。環境測定装置408台で栽培面積の46.2%に当たる66.9ヘクタールに導入効果をもたらすことができ、品質が安定した上にこれまで目標としていた単収(10アール当たりの収量)20トンを超える生産者が多数誕生している。

写真4 ハウス内の環境制御装置(写真はCO2発生機)
 
(注)病害虫や雑草防除において、化学合成農薬だけに頼るのではなく天敵、防虫ネット、防蛾灯などさまざまな防除技術を組み合わせ、農作物の収量や品質に経済的な被害が出ない程度に発生を抑制しようとする考え方(ウェブサイト「こうち農業ネット」より)
 
 担い手の育成・確保の取り組みについては、農業体験の開催や県内外からの就農希望者の呼び込みを行っている。就農希望者が充実した研修のもと安心して就農できる体制を整え、毎年、数十人が地域の担い手として就農を果たしている。

4 出荷と販売

 当地区での出荷は、管内6カ所の集出荷場に集められたなすを機械選果で県下統一規格に即した形で選果選別を行い、9月下旬から翌6月下旬頃まで、関東をメインに出荷している。JAグループ高知として生産・出荷する「高知なす」は、天敵昆虫や花粉媒介昆虫の利用などにより農薬回数を減らしたエコシステム栽培として各地に届けられる。令和2年9月には、生鮮なすでは全国で初めて機能性表示食品としての届出を完了した。それに併せて、令和3年3月には「機能性表示食品」と印字した新たなデザインの出荷袋で販売をスタートした(写真5、6)。

写真5 機能性表示食品が印字された出荷袋 写真6 袋物出荷用ダンボール

 販売では、消費宣伝に力を入れており、JAと生産者が消費地に出向き、市場担当者や仲卸、一般消費者や小学生など幅広い層を対象に出前授業や料理講習会、量販店の店頭で販売促進活動を行っている。また、料理レシピ動画を作成しYouTubeに公開するなど、消費拡大に取り組んでいる(写真7)。

写真7 YouTubeでの料理動画

 
◆一言アピール◆
 「高知なす」に豊富に含まれる“なす由来コリンエステル”には、血圧が高めの方の血圧(拡張期血圧)を改善する機能があることが報告されています。温暖な気候、豊富な日照のもと減農薬で栽培された「高知なす」をぜひお試しください。
 
◆お問い合わせ先◆
担当部署:高知県農業協同組合 安芸営農経済センター
住  所:〒784-8503 高知県安芸市幸町1-16
電話番号:0887-34-8326
ホームページ:https://ja-kochi.or.jp/contact/