高知県農業協同組合(以下「JA高知県」という)安芸地区は、高知県東部に位置し、室戸市、安芸市、東洋町、奈半利町、田野町、安田町、北川村、芸西村の8市町村から成る。総面積は1123平方キロメートルで、県土の16%を占めている(図1)。
当地域の林野率は88%と高く、山並みが海岸まで迫っている。これら山並を縫って河川が太平洋に注ぎ、平野は河川の中下流域に散在しているが、耕地はこれら平野と海岸段丘に多く見られる。
気候は、年平均気温が17度台と年間を通じて温暖で、年間1800ミリ以上の降水量がある(図2)。年間の日射量も多く、温暖で多照な気象条件を生かした施設園芸が盛んで、高知県のなす生産量は全国一となっている。そのうち安芸地区は県全体の約90%を占めている。
また、温暖で降雨量も多いことから当県はゆずの栽培も盛んで、こちらも全国一の生産量であり、ゆずにおいても安芸地区は県内一の生産量を誇っている。
安芸地区管内の施設園芸は、高知県の“
蔬菜園芸発祥の地”と呼ばれ、古くからの歴史がある。1917年にきゅうりやなすなどの果菜類栽培が始まり、1932年頃からきゅうりを中心に面積が増加した。しかし、連作障害の発生によりピーマンなどに品目転換が行われ、1960年頃からビニールハウスでなすの栽培が増加し、1958年には12ヘクタールであった面積が1969年には140ヘクタールに、2016年には225ヘクタールに広がった。
このように同地区は冬季に温暖で多照な気象条件を生かして、古くから集約的な施設園芸が盛んな地域であり、現在は、なす(高知なす)とピーマンの生産が大半を占めている。
令和3園芸年度(8月から翌7月の1年間)における、管内の集出荷場に所属する生産者数は646人で、栽培面積は141ヘクタール、出荷量は1万9556トンとなっている。販売額はなすが74億1000万円と最も多く、次いでピーマンが15億6000万円となっている(図3)。