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産地紹介 野菜情報 2022年3月号

千葉県 JA富里市~加工ばれいしょの契約栽培で生産者の収益を確保~

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富里市農業協同組合 営農部 橋本 剛志
ばれいしょとポテトチップス

1 産地概要

 富里市農業協同組合(以下「JA富里市」という)のある富里市は、千葉県北部の北総台地のほぼ中央に位置し、東京都心まで60キロメートル圏内で、成田空港からも約4キロメートルの距離にある(図1)。流通面だけではなく、水源や肥沃な農地、自然環境にも恵まれている。
 
図1 富里市の位置
 
 JA富里市の組合員数は2020年現在、正組合員1723人、準組合員1244人、計2967人となっている。そのうち、専業農家戸数は、約400戸で、兼業農家を含めると、約800戸である。
 作柄は畑作中心で、耕作面積は畑が約1380ヘクタール、田が約146ヘクタールである。毎年5~10人程度が新規就農しているが、高齢による離農や後継者不足により、農家戸数は年々減少している。遊休農地(耕作放棄地)も毎年増加しており、現状は全体の3%程度だが、今後はさらに増える見込みのため、行政機関などと連携をとり、現在、対策を検討している。また、最近では新たに鳥獣害の被害が発生しており、新規に対策協議会を設置し、関係機関と連携して被害防止に取り組んでいる。
 管内の主な作物は、秋冬にんじん、春にんじん、すいか、抑制トマト、だいこん、長ねぎ、こまつな、ばれいしょである。にんじんは、約550ヘクタールの作付けがあり、市町村単位でのにんじんの生産量は日本一である。またすいかは、「富里スイカ」としてブランド化を進めており、年々作付けは減少傾向であるが、110ヘクタール程度で約40万ケースの出荷が見込まれる。

2 加工ばれいしょの契約栽培

 JA富里市では、昭和55年から試験栽培を開始し、カルビーポテト株式会社(以下「カルビーポテト」という)向けに、ポテトチップスなどの加工用としてばれいしょを契約栽培している(写真1)。ピーク時の契約面積は100ヘクタールを上回る勢いであった。市場出荷と異なり、作付け前に大まかな収益が見込める点で生産者には大きな評価を得られた。導入当初から平成5年頃まではカルビーポテトの栽培指導も功を奏し、生産者の収益は安定して面積は増加の一途をたどった。しかしながら、農業従事者の減少により従来の作業体系での面積維持拡大が望めなくなった。そこで、当JA主導により、北海道で使用されているハーベスター(収穫機)を5年に導入した。これによって生産者の収穫作業が軽減され、生産規模が保たれた。近年においては、当JAによる収穫機械の新規投資やカルビーポテトによる新品種の導入、新たな技術提供などに取り組み、平均で10アール当たり4トンの生産を維持し続けている(図2)。
 令和3年度は62人の生産者が契約栽培に取り組んでおり、出荷期間は6月上旬から8月上旬で、秋冬にんじんの後作で栽培する生産者が多く、農家の収益性の確保にもつながっている。
 
写真1 JA富里市のばれいしょ
 

図2 JA富里市におけるばれいしょの栽培の推移
 
 

3 品種

 契約栽培のばれいしょの品種は、「トヨシロ」をメインに作付けしている。しかし、トヨシロは現在、北海道においてジャガイモシストセンチュウという害虫への感受性が問題となっている。ジャガイモシストセンチュウは、大幅な収量低下をもたらす上、その発生圃場(ほじょう)では種いもの生産ができないなど、北海道のばれいしょ生産の大きな阻害要因となっている。そのためカルビーポテトでは、2030年までに契約しているばれいしょの全量をジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種に置き換えるため、同社で開発した「ぽろしり」「オホーツクチップ」などの試験栽培をJA富里市でも行い、トヨシロからの代替策を模索している(写真2)。
 
写真2  ジャガイモシストセンチュウ抵 抗性品種の「ぽろしり」の圃場

4 ばれいしょの契約栽培における企業との連携

 ばれいしょ栽培の経験がない生産者も契約栽培に取り組めるよう、JA富里市では、ばれいしょの植え付け機やハーベスターのレンタルを行い、一部作業委託も行っている。また、栽培スケジュールや工程表も周知されており(図3)、毎年説明会も開かれるなど、生産者にとってばれいしょの契約栽培に取り組みやすい環境を整えている。
 
図3 加工用ばれいしょ栽培工程表
 
 具体的には、12月~翌1月に種いもを入荷し、2月上旬に栽培説明会を開催する。植え付けを2月中旬~3月下旬に行うが(マルチ栽培、露地栽培)、JA富里市から植え付け機(マルチプランター、露地プランター)が貸与される。5月下旬には出荷説明会を開催し、6月上旬~8月上旬の収穫期にはハーベスター(自走式2台、牽引式3台)を生産者へ貸与し、さらに機械のオペレーター手配もJA富里市が受託している(写真3)。
 
写真3  ハーベスターの貸し出しやオペ レーターの手配も行っている
 
 ハーベスターで収穫されたばれいしょは、機上で腐敗・緑化などの病障害を除去し、サイズ分けをしない混玉の状態で、カルビーポテト指定の鉄コンテナ(W170mm×D1100mm×H1400mm 積載量1400キログラム)に入れてJAの集荷場に搬入し、仮保管を行う。保管の在庫が溜まった段階で、カルビーポテトが手配した大型トレーラーに14コンテナを積み込み、北は北海道から南は鹿児島にあるカルビーの各工場へ搬入され、ポテトチップスなどの原料として加工される。
 
◆一言アピール◆
 JA富里市でのばれいしょ栽培は、安全・安心な商品提供を心がけ、土作りにもこだわり、より良い品質での出荷を行っています。ばれいしょ栽培は、加工向けが中心ですが、品種によっては京浜の各市場や、大手量販店に直接販売させていただいております。
 また、管内の直売所では、変わった品種のばれいしょも並びます!ご興味がある方は、是非、お問い合わせください。
 
◆お問い合わせ先◆
担当部署:富里市農業協同組合 営農部 販売課
住  所:〒286-0221 千葉県富里市七栄652-225
電話番号:0476-93-5652
FAX:0476-92-0225
HP:https://www.ja-tomisato.or.jp/
オンラインショップ:https://jatomisato.thebase.in/