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産地紹介 野菜情報 2021年10月号

栃木県 JAはが野  ~産地基盤強化に向けたしゅんぎく作り~

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はが野農業協同組合 営農部 営農指導 主任 髙松 良次

しゅんぎく

1.産地の概要

 栃木県南東部に位置するはが野農業協同組合(以下「JAはが野」という)は、平成9年3月に平野部から中山間地を含む芳賀郡市6JA(旧JA真岡、旧JA二宮(注)、旧JA益子、旧JAもてぎ、旧JA市貝、旧JA芳賀)が合併してできた農協である(図1)。組合員総数は正組合員1万5234人、準組合員4760人、合計2万3人(令和3年2月28日時点)となっている。令和2年度のJAはが野の農畜産物総販売金額は、235億2891万円となっており、このうち今回取り上げるしゅんぎくの販売金額は9685万円である。同JA管内は、米麦、園芸作物の栽培が共に盛んであるが、園芸品目ではいちごの栽培が特に盛んであり、生産量、販売額共に日本一の産地である。管内の主要な園芸品目は、いちご以外にもなす、なし、メロン、トマト、にらなどが挙げられる。

(注)平成21年に真岡市と二宮町が合併し、現在の真岡市となった。
 

図1 JAはが野管内の位置図
 

2.栽培概要

 JAはが野管内では生産者の高齢化に伴い、重量野菜、重量果実の生産と労働時間の投下が難しくなってきている中で、比較的初期投資の少ない軽量施設作物としてしゅんぎくの生産振興を行ってきた。水稲の育苗ハウスを活用し、夏は夏秋なすを、秋から春にかけてはしゅんぎくを栽培するという組合せによって水稲農家にも園芸品目を勧めて産地基盤を固めている。また、夏秋なすとしゅんぎくとの組合せは、初期投資の少なさから新たに農業を始める人のファーストステップとしての役割も果たしている。
 基本的な作型は、9月上~中旬に購入種子を連結ポットに播種はしゅし、10月中~下旬に定植した株の側枝を11月下旬から収穫する作型である。収穫は3月下旬から4月中旬の間に終了する。近年は種子をまき直しすることで収穫期間を延ばす作型も取り入れられており、これを繰り返すことで真夏を除く約10カ月間栽培可能な例も見られ、ほぼ周年作物として栽培されている(写真1、2、3、4、図2、表1)。

写真1~写真4 栽培の様子


図2 作型図


表1 主な作業の流れ

 

3.産地基盤強化に向けた取り組み

 JAはが野では、しゅんぎくの栽培による産地基盤強化のために「反収・品質の向上」「安全・安心の確保」「新規栽培者の確保と支援」を掲げた春菊部会が結成されている。令和2年度の同部会の構成員は78人である。同部会では「反収・品質の向上」においては、指導会にて土壌診断に基づいた施肥設計を行い、播種・定植講習会、現地検討会(写真5)を行っている。これらを通じ、適切な肥培管理、ポイントを押さえた栽培管理を指導することで「反収・品質の向上」に繋げている。「安全・安心の確保」においては、農薬安全使用講習会、年2回以上の残留農薬検査、年3回の栽培日誌検証、GAPの実践を行うことで、部会員の農薬安全使用と生産工程管理に関する意識を高めている(写真6、7)。「新規栽培者の確保と支援」においては、JA広報誌などを活用し、管内全域に新規者を募るとともに、農業振興事務所や営農経済渉外と連携をとり個別訪問を推進している。また、部会新規加入から3年間を新規者と位置づけ、播種・定植・荷造りに関する新規者向けの講習会(写真8)を実施し、栽培に関する支援を行っている。

写真5~写真8 春菊部会の活動の様子

4.出荷体制

 出荷形態は3キログラム段ボール(150グラム袋詰め)の1種類であり、規格はALとLの2種類である。生産者が収穫、選別、袋詰め、箱詰めまで行ったものを、各集荷所に出荷し、JAにて検査を行う出荷体制となっている(表2、図3)。

表2 しゅんぎく出荷規格表

図3 箱詰め方法

5.販売戦略

JAはが野では合併当初、旧JAでの取引を継承した販売となっていた。そのため、取引市場の数が多く、販売ロットがまとまらずに出荷量や販売単価が不安定であった。その後、市場集約と販売担当専門部署の設置によりロットをまとめ、集約した産地情報を市場や販売先に伝達することで予約相対取引の増加に繋げている。また、販売担当専門部署の働きにより、産地、販売先、関係機関との連携を密にすることで「顔の見える販売」を強化し、安定した取引を増やしている。消費者へのアプローチでは、通常の鍋やすき焼き需要に対する販売だけでなく、おひたしや天ぷらなどのレシピ提案を行うことで販売先の需要を喚起し、需要期以外の販売単価向上に繋げている。
 
◆一言アピール◆
 比較的平均年齢の高いJAはが野春菊部会では、「作る楽しみ・売る喜び」を部会スローガンに掲げています。作る楽しみを忘れず、売る喜びを感じながら生産しているしゅんぎくは、生産者の弛まぬ努力と相まって、さまざまな自然条件や病害虫を克服して出荷されています。しゅんぎくは、鍋やすき焼きだけでなく、おひたしや天ぷらで一年中楽しめます。ぜひご賞味ください。
 
◆お問い合わせ先◆
担当部署:はが野農業協同組合 営農部 営農指導
住  所:〒321-4325 栃木県真岡市田町1384
電話番号:0285-80-1919  FAX番号:0285-85-0700
ホームページ:https://www.ja-hagano.or.jp/
E-MAIL:h.einou2@ja-hagano.or.jp