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産地紹介 野菜情報 2021年9月号

群馬県 JA利根沼田 ~健康な土作りから生まれたミネラル栽培枝豆『豆王』~

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利根沼田農業協同組合 指導販売部 指導販売課 沼田青果物集荷所 渡邊 寛昭
えだまめ

1.産地概要

 利根沼田農業協同組合(以下「JA利根沼田」という)は1992年に10JA1連合会が広域合併して誕生し、その後2010年に1JAが加わって、現在は1市1町3村(沼田市、みなかみ町、片品村、川場村、昭和村)の中で構成されている。管内は、群馬県北部に位置し、県の面積の約4分の1を占めており、総面積は約1764平方キロメートルである(図1)。北に谷川岳・武尊山、南に赤城山という2000メートル級の山々に囲まれ、西には利根川の源流、東に尾瀬雪解けの片品川があり、水と緑の自然に恵まれた地域である。



 土壌は火山灰土で排水が良く、夏場は昼夜の温度差があるため野菜本来の食味が良くなる自然条件に恵まれている。準高冷地帯の気候を生かした大型野菜や施設野菜、群馬県特産物の蒟蒻(こんにゃく)栽培が盛んである。
 栽培品目は昭和村を中心にレタス、キャベツ、ほうれんそう、地域全体ではトマト、えだまめ、スイートコーン、だいこんなど、多くの夏秋野菜が生産されている。また、観光業も盛んであり、さくらんぼ、ぶどう、りんご、いちごなど年間通してさまざまな季節の果物を楽しむことができる。
 令和2年度におけるJA利根沼田の青果物販売金額は約93億988万円となっており、その中でえだまめは品目別で第6位の約2億9000万円の売り上げがある(表、図2)。

表

図2

2.えだまめについて

 えだまめとは、大豆完熟前の未完熟状態で収穫したものをいう。良質なたんぱく質や大豆にはないビタミンA、ビタミンC、ビタミンB1などの栄養素も多く含まれているのが特徴で、『畑の肉』と呼ばれている。一般的に青豆系統(白毛系統)、茶豆系統の2種類に区分され、青豆系統は癖がなく、豆本来の甘味を味わえ、全国的に広く栽培されている。茶豆系統は茶豆独特の風味があり、甘味がとても強く、関東北部から東北地方での栽培が多い。

3.えだまめ産地形成の歴史・部会について

 利根沼田地区では、従来からえだまめの栽培が盛んである。当JAでは平成7年に利根沼田枝豆部会が発足した。発足時から、食味の良いえだまめ作りを追求すべく活動を行い、試行錯誤を繰り返す中で、土作りに重点を置いた栽培方法を取り入れた。現在では、当部会のえだまめはミネラル栽培枝豆『豆王』という商品名でブランド化され、高品質なえだまめとして出荷されている。
 令和3年度の部会員数は65名。総面積45ヘクタールの面積で作付けされている(写真1)。6月上旬から10月までの間に出荷され、出荷量は年間約320トンである。作付けの約8割が茶豆系統で、残りの2割が青豆系統になっている。品種については、部会で選定された16品種を時期ごとに繋いで栽培をしている。
 
・指定品種 月夜音、神風香、恋姫、湯上り娘 など
 

4.ミネラル栽培枝豆『豆王』について

(1)栽培について
 『豆王』を栽培するにあたり、当部会では健康な土作りを意識し、ミネラル・有機質肥料に重点を置いた減化学肥料栽培(ミネラル栽培)を実施。施肥基準を設けることで、部会内品質の統一を図っている。また、トレーサビリティシステム(農薬使用履歴管理システム)を用いて農薬の適正使用を徹底している。
 えだまめの生育は播種(はしゅ)から収穫まで約90日かかる。利根沼田地域の気候では、3月上旬から始まる定植は4月いっぱいまで小トンネルを掛けて、降霜などの低温対策をしながら栽培を行っている(写真2)。この時期は、圃場(ほじょう)によっては直接播種することはせず、事前にハウスなどで育苗した苗を定植することでスムーズな生育を促している。

写2

 5月以降は、トンネル栽培の必要がなく、マルチを張った圃場に直接播種することで十分に栽培が可能である。10アール当たりおおよそ6000粒の種(苗)を用意する。品種によっては2粒播きをすることにより、増収を見込める品種もある。
 生育期間中は定期的に病虫害防除を行って栽培管理をする。えだまめはカメムシによる被害が特に多く、さやに口針を刺すことで栄養を吸われてしまう。カメムシに吸われたえだまめは成長不良を起こし、健全なえだまめにならないため、カメムシ発生前からの防除がポイントになる。また、開花期には葉面散布材などの追肥を行うことで、収量の増加、品質の向上に期待できる。
 当部会では10アール当たり約1000キログラムある収穫量に対し、750キログラムの出荷量を見込んでいる。
 
(2)収穫・出荷について
 食味を保つために鮮度保持を意識した収穫・出荷方法を取り入れている。

ア 収穫時間 
 直射日光が当たる日中の時間帯を避けて、早朝か夕方の収穫作業を行う。

イ 荷作り作業
(ア)収穫~袋詰め
 収穫後から時間を置かずに豆落とし・粗選別・洗浄・乾燥・選別・袋詰めと迅速に作業を進める(写真3、4)。袋詰めまでの作業が済んだえだまめは翌日の出荷に備えて、保冷庫で保管(5度前後)する。出荷袋には鮮度保持フィルムを使用することで品質の低下を抑止している。また、『豆王』には赤色袋(青豆系統)と金色袋(茶豆系統)の2種類があり、食味のテイストが異なる品種毎に袋を使い分けている(写真5)。

しゃ3

しゃ4

しゃ5

(イ)梱包
 出荷当日、保冷しておいたえだまめを畜冷材入りの発泡スチロールへ入れて梱包を行う。1箱当たり20袋入り (1袋250グラム)。

ウ 出荷
 JA検査員による無作為抽出での検品を行う。検査は当部会が定める出荷規格要領に沿って行われる。
○主な検査項目
 形状・熟度・色見・量目・小莢(こざや)・傷み・病害・異物混入など
 前述の方法で栽培し、検査を通過した物が『豆王』として商品化される。出荷先は京浜市場を中心に、群馬県内や関西方面など多方面に出荷している。
 
◆一言アピール◆
『美味しいえだまめを消費者に届けたい』という生産者の強い思いから『豆王』が生まれ、約25年間研究を重ねながら栽培に取り組んできました。今後も品質を第一に考え、安心・安全で高品質なえだまめの出荷を行ってまいります。例年、7月になると出荷が本格化し、食味の良いえだまめが続々と出荷されます。スーパーなどで見かけた際は、ぜひとも手に取っていただき、生産者自慢のえだまめ『豆王』をご賞味ください。
 
◆お問い合わせ先◆
担当部署:利根沼田農業協同組合 指導販売部 指導販売課
住  所:群馬県利根郡昭和村森下2809-1
電話番号:0278-50-6112  FAX番号:0278-24-7485
ホームページ:http//www.jatone.or.jp