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産地紹介 野菜情報 2021年8月

秋田県 JA秋田ふるさと ~長期安定出荷・安全安心なきゅうりを届ける JA秋田ふるさときゅうり部会の活動~

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秋田県平鹿地域振興局 農林部 農業振興普及課 日野 誠志

1 産地の概要



 秋田県横手市は、県内陸部に広がる横手盆地の中央に位置し、東西約35キロメートル、南北約20キロメートル、総面積692.8平方キロメートルで県全体の6%を占める。気象は典型的な内陸性気候で、年平均気温10.9度、降水量1643ミリメートル、日照時間1418時間、積雪期間110日前後、最深積雪は1メートルを超え、県内有数の豪雪地帯である。
 当市は平成17年10月1日に1市5町2村が合併し、横手市となった(図1)。
 令和元年度の農業就業人口(販売農家)は、4650人で平成27年の5898人より21.2%減少している(2020農林業センサス)。
 令和元年の農業産出額は295億6000万円で、秋田県の産出額1919億円の15%を占めている。また、野菜・花き・果樹・畜産などの米以外の部門が総額に占める割合は51%で県平均(41%)を上回っており、複合経営の取り組みが進んでいる地域である。
 野菜は、すいか、夏秋きゅうり、えだまめ、ほうれんそう、夏秋トマト、アスパラガスなどが県内有数の産地となっている。特にすいかの出荷量は県内1位で地域を代表する作物である。夏秋きゅうり(平成元年指定)、夏秋トマト(平成3年指定)は国の指定産地となっている。花きは、キク類、トルコギキョウ、ユリ類(しんてっぽうゆり)などが産地として確立されている。果樹は、りんごの栽培面積が県全体の53%を占め「平鹿りんご」として県内外の市場で高く評価されており、ぶどうも県内一の産地を形成している。他には、菌床しいたけの生産が約25億円の販売額となっている。

2 産地栽培カレンダー

 当地におけるきゅうりの取り組みは、昭和53年頃に行われた水田利用再編を契機に転作作物として開始され、近年の栽培面積も増加傾向で推移している。
 現在、きゅうりに取り組む生産者は91名、栽培面積14.01ヘクタールで内訳は露地栽培が79%、施設栽培が21%の典型的な露地主体の作型であるが、近年は防虫ネット作型が増加しており13%までに拡大している(図2)。なお、作型別の栽培体系は図3のとおり。
 一戸当たり栽培面積は15.4アールと小規模だが、近年は県の園芸メガ団地育成事業(注)を活用し、1ヘクタール以上の大規模経営体が参入している(令和3年度:3人)。

(注):園芸メガ団地育成事業とは、品目を極力集約し、団地化により販売額1億円を目指すことを目的に実施された県単独事業である。JAが事業実施主体となった場合の事業費負担は、県1/2、市町村1/4、JA1/4となり、生産者は初期投資を極力抑え取り組むことが可能となる。


 

3 生産・栽培上の特色

(1)園芸メガ団地育成事業を活用した大規模経営体の育成
 高齢化、後継者不足などによる生産者の減少が問題となる中、平成27年度に横手市を管内にもつ秋田ふるさと農業協同組合(以下「JA秋田ふるさと」という)が事業主体となり、園芸メガ団地育成事業を活用し、大規模きゅうり団地の育成に取り組んだ。
 この事業により、生産者はJAから10年間のリースで施設や資材、機械などを借り受けることから負担が少なく大規模化へ取り組めるというメリットを享受している。
 
(2)防虫ネット栽培の普及
 管内は、露地栽培が基幹のため、気象災害や風によるスレ果などの要因により、年度毎の製品率の変動が大きく、課題となっていた。この対策として17年頃、福島県で実践されていた防虫ネット栽培の導入を進めたが、当時は導入規模が小さく、費用対効果などのメリットを明確にすることができず普及が進まなかった。近年になり、大規模な団地化が計画され、労働配分、安定生産対策が求められ再度現地実証を行った結果、当該事業開始前の露地栽培と比較し、単収で120%、所得率で6%の効果が実証された。この結果を受け、園芸メガ団地や部会員への導入が進み、防虫ネット栽培の面積は28年度の0.67ヘクタールから、令和2年度には1.82ヘクタールへと飛躍的に拡大した(写真1)。



(3)技術アドバイザーの設置
 JA秋田ふるさとの部会員の栽培技術の平準化のため、生産者の中でも特に栽培技術の高い生産者を「技術アドバイザー」に任命し、部会員の相談に対応した(~平成30年)。
 また、講習会を実施しており、主要種苗会社3社(ときわ研究場、タキイ種苗、埼玉原種育成会)の社員を講師に最新の情報と各社の品種特性に応じた管理方法を習得している(写真2)。

4 出荷方法の工夫

(1)出荷規格の簡素化
 部会員の高齢化や労働力不足に対応するため、出荷調製作業を簡素化している。M、L、2Lなどの大きさやA、Bなどの品質の規格等を廃止し、1規格と規格外との2種類のみとしている。
 
(2)コンテナ出荷による段ボールの削減
 実需者は、段ボールの処理やリサイクルへの関心が高く、その要望に応えるため、出荷の一部を従来の段ボール(5キログラム)から、コンテナ(10キログラム)に変更し、コンテナでの出荷比率を高めた(写真3)。
 コンテナ出荷の割合は、全出荷量の約5分の1程度となり、段ボール枚数で年間約4万枚の削減となった。

​5 販売戦略

(1)部会員による品質検査
 品質のバラつきが無く、安全安心なきゅうりを販売していくためには、組織内部における徹底したチェックと認識が重要となることから、部会員が交代制で、毎日、品質検査を行うとともに、自主的な残留農薬検査により自信を持って提供している(写真4)。



 (2)量販店における対面販売の実施
年2回、量販店において部会役員などが対面販売を実施している(写真5)。消費者や小売業者との交流から、的確に消費者ニーズを把握するよう心掛けており、生産にフィードバックしている。



(3)袋詰めでの販売
コンテナ以外の出荷として、4本単位で袋に入れ出荷している。消費者からは、他の人が触れること無く購入できることで、コロナ対策にも有効との感想が寄せられている。
 
◆一言アピール◆
当地のきゅうりは、露地栽培が基幹のため、夏場の太陽を十分に浴び栄養価満点です。また、防虫ネット栽培の普及により農薬の使用回数が少なく、安全安心に配慮した栽培にも取り組んでいます。
きゅうりは、夏場の体温低下に有効な品目ですので、ぜひJA秋田ふるさとのきゅうりをご試食ください。
 
◆お問い合わせ先◆
担当部署:秋田県 平鹿地域振興局 農林部 農業振興普及課
住  所:秋田県横手市旭川一丁目3番41号
電話番号:0182-32-1805  FAX番号:0182-33-2352