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産地紹介 野菜情報 2021年3月号

北海道 JA中札内村  ~一年中、手軽においしく食べられる「冷凍さやいんげん」~

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中札内村農業協同組合 農産部 部長 井川 晃博
図

1 産地の概要

北海道中札内村は面積292.69平方キロメートルで、北海道帯広市から南に28キロメートル、十勝中央地域の南西部に位置し、帯広空港に近く、村の西部は日高山脈襟裳国定公園になっているなど、自然と生活環境に恵まれている(図1)。人口は3913人で、中札内村農業協同組合(以下「JA中札内村」という)の組合員数は令和2年4月現在849人(うち正組合員202人、準組合員647人)である。

北海道

村の総面積は2万9269ヘクタールで、そのうち6937ヘクタールの農用地は石れきを含む火山性土壌で概ね平坦である。畑作経営では畑作四品(てん菜、ばれいしょ、秋播小麦、豆類)による輪作体系を営む専業経営が多く占めている。
寒冷地である当地域では、収穫時期の早い「さやいんげん」は、農業経営上で他の品目より早期に入る収入源としてだけでなく、秋播小麦の前作物として適している。また、当地域は夏季に冷涼であることから、昼夜の寒暖差を生かした適期作型を取入れることで甘みや品質も高く評価され引き合いも強い。
さやいんげんの作付けは、平成7年頃から始まったが、販売や機械化が進まず10年間ほど停滞していた。しかし、山本組合長の就任(平成14年)以後は、積極的なトップセールスによる販路確保、大型ハーベスター導入による機械化や冷凍加工施設整備の拡充により、北海道最大の産地に成長した。こうして、さやいんげんは、えだまめと共に中札内村農業の発展に大きく貢献してきた野菜の2本柱として知られている。
 

2 栽培と収穫体制

さやいんげんは、気象変動や病害虫の影響を受けやすく、農業共済制度の対象外であることから、安定作物として定着するまでに長年苦慮してきた。しかし、中札内村は良質な堆肥投入による土づくりが盛んな地域であったことから、作型や栽培技術の改善と併せて収量や品質を高められる可能性をもっていた(図2)。

図2

現在では、JA中札内村が大型ハーベスター(写真1)を6台保有するとともに、自動処理加工施設および最新の冷凍冷蔵庫を保有して全て冷凍加工処理をしている。年間販売契約されているユーザーへは、通年供給が可能であり、大手量販店においても取扱いをいただいている。

写真1

収獲作業は、適期を見極めたほ場または地区から開始され、オペレーターは4交替制で、若手農家による24時間稼働体制で一斉収穫する。このことにより、JAの運行調整に基づいて生産者の作業競合と過重労働を軽減するとともに、ハーベスターを効率的に稼働することで適期に収穫し、収量や品質の安定化に結びついている。

3 最先端の冷凍加工技術

さやいんげんの鮮度・味・色あい・品質を保つためには、収穫開始から3時間以内に冷凍加工処理できるように、ほ場周囲や農道整備からハーベスターによるダンプアップ場所の確保まで、ルールとして義務付けている(写真2)。ハーベスター収穫から搬入までの時短は、他では類を見ないスピードで鮮度維持に努めている。

写真2

そして、冷凍技術には最先端のフリーザーを採用し、さやいんげんの洗浄・ボイル後に直ちに急速冷凍している。これは、自然冷媒型冷凍機のためフロンの環境問題や地球温暖化係数のない、冷凍機・冷凍保管技術でもある。
収穫から時間経過したものは、栄養価も含めて品質が著しく低下していくため、適期に短時間処理し、自社冷凍庫に収納することが重要である。
なお、生産者はダンプトラックによる原料輸送を担い、農協は冷凍加工する原料を買取り、自動・効率化された受入施設によって、生産者の労働時間は10アールあたり4.84時間を実現し、労働力不足や衛生管理の改善を図ってきた。

4 安全・安心の取組

生産者には、生産管理基準などを厳守するとともに、隣接ほ場からの農薬飛散(ドリフト)と病害虫侵入を防ぐために、ほ場周囲をエン麦で遮蔽する「額縁栽培」を義務付けている。さやいんげんの残留農薬検査は、1)収穫予定5日前にサンプルを検査、2)受入時にはダンプトラック毎に行う検査、3)生産履歴や十勝型GAPによる生産工程のリスク管理(環境および労働安全に関するリスクも管理)のトリプルチェックを実施し、安全な生産物だけが販売できる仕組みになっている。
なお、冷凍保管されるダンボール容器毎に生産者と生産ほ場が特定できる番号が割り振られ、その番号により貯蔵・選別・包装・出荷が管理され、包装時に商品パッケージに印字される賞味期限から流通・加工・生産の履歴を追跡(トレースバック)し、生産者と生産ほ場を特定できる仕組み(トレーサビリティーシステム)を導入している。
平成23年には、冷凍加工施設が道内JAで初めて「北海道HACCP自主衛生管理認証」を受け、冷凍加工施設に従事する正職員全員が「食品衛生責任者」資格を取得している。さらに、令和元年10月29日に世界でも最も厳しいとされる食品安全管理の国際規格「FSSC22000」を認証取得した(写真3)。この認証は、取得のハードルが高く、国際的に食品安全を確保するための管理が実践されていることを証明できる認証であり、近年取引先から取得を要求される場面が増えている。

写真3

また、作業効率の向上と衛生管理の強化を目的に、平成30年と令和元年に冷凍加工施設(第1工場と第2工場)の選別・包装ラインを改修し、ラインのステンレス化、最先端の光学選別機や自動箱詰めロボット導入により少人数化と衛生管理の徹底を図っている(写真4)。

写真4

5 生産・販売実績

当初さやいんげんは、作付面積・製品販売量とも順調に伸ばしてきたが、東日本大震災の頃から消費形態は変化し、過剰在庫による大幅な生産調整を実施した。また、販売数量の回復に努めるとともに、改めて栽培技術や作型など原点にもどって生産者と農協が一体となって改善をすすめてきた。
現在では、山本組合長を中心とした販売促進活動、FSSC22000や北海道HACCPなどの衛生管理の認証や「北のブランド2017金賞」「北のクリーン農産物表示制度」など産地ブランド化に対する取り組みにより、作付面積はV字回復するとともに販売業績は安定化してきている(図3)。

図3

全国の学校給食では、欠かせない食材として採用されていることもあり、一層の安全・安心や供給責任に対する取り組みは産地の発展に確実に結びついている。
 

◆一言アピール◆

 さやいんげんには、免疫力を高め風邪の予防や肺ガンリスクの低減に効果があると言われるβカロテンが比較的多く含まれています。また、便秘予防に効果のある食物繊維、血圧上昇の抑制に効果があるとされるカリウムや貧血予防に良いとされる葉酸なども入っています。そして、アスパラガスに含まれるアミノ酸の一種「アスパラギン酸」も含まれ、疲労回復やスタミナ増強に効果もあります。北海道中札内村育ちのさやいんげんを是非ご賞味ください。

◆お問い合わせ先◆

 担当部署:中札内村農業協同組合 販売促進販売部 販売課
      農産加工処理施設事務所
 住  所:〒089-1321 北海道河西郡中札内村東1条北8丁目1-1
 電話番号:(0155)67-2119  FAX(0155)68-3331
 ホームページ:http://www.ja-nakasatsunai.or.jp