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今月の野菜

産地紹介:福島県 JA全農福島~福島県における生しいたけ栽培~

全国農業協同組合連合会 福島県本部  郡山営農事業所 園芸センター 仙波 尚央


1 産地の概要

(1)福島県の概要 

福島県は、東北地方の南部に位置し、面積は1万3782平方キロメートルで、北海道、岩手県に次ぐ全国3番目の広さである。県庁所在地の福島市は、東京から約270キロメートルで、JR東北新幹線で約90分の位置にある。

東西に長い本県は南から北へ連なるくま高地と奥羽おうう山脈によって、太平洋側から「浜通り」「中通り」「会津」の3地域に分けられる。

生しいたけについては全県下で栽培されており、とりわけ、双葉地区、郡山市湖南町、会津地区などで盛んに栽培されている(図1)。いずれも標高が高く、冬は多く積雪する地域である。当県では水稲との組み合わせで、しいたけ栽培を行う農家が多い。そのため、しいたけの収穫最盛期と稲の収穫時期とが重なってしまうこともある。

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(2)栽培概要

以前は福島県内においても原木栽培が主流であり、全国でも屈指の生産量を誇っていた。しかし、平成23年3月の東日本大震災により福島県産の原木の使用に制限がかかったことで原木の調達が困難となり、仕入コストも高くなってしまったことから、当県でも原木栽培から菌床栽培への移行が進んだ。9月末から翌4月までの期間にパイプハウスを活用して自然環境下で栽培する秋冬作が主流ではあるが、近年は暖房機に加えて冷房機を備え夏場でもしいたけが発生できる環境を整備した空調ハウスを活用した栽培も増えてきており、年間を通して大規模にしいたけ栽培を行う法人も増えてきている。パイプハウスを活用し栽培では特に、東北地方の冬の寒さの中で、じっくりと成長することにより、肉厚で弾力のあるしいたけとなるのが特徴の一つである。

2 生産・栽培上の特色

当県の菌床しいたけにおいては、株式会社北研および森産業株式会社の菌種が多く栽培されている。その中でも北研の菌種が主流となっており、特に「北研607」シリーズや「北研705号」などが多くの割合を占めている。特に、福島県内のしいたけ生産農家で、親子間で世代交代を迎えた農家の多くでは、大ぶりのしいたけが発生する品種が好まれて栽培されるようになってきている。しかし、近年はしいたけ農家の大規模化に伴い、それぞれの経営スタイルに合わせた形でさまざまな品種を組み合わせて使用しており、多種多様な菌種が使用されるようになってきている。

3 生しいたけを取り巻く環境

近年、中国で製造された菌床を使用して日本国内で発生させたしいたけの流通量が急激に増加している。また、それらのしいたけが「国産」表示で安価に出回っており、国産の原料を使用して製造した菌床から発生したしいたけの単価が低迷する要因の一つとなっている。また、県内でも建築業者などの大規模な企業体によるしいたけ栽培への参入が増えてきており、年々販売面での競争が激化している状況にある。

4 当県の出荷状況

令和元年度のJA全農福島の生しいたけの年間販売額は約4億3000万円となっている。

出荷先は県内、京浜、甲信越となっており、出荷割合は県内向けが74%と大きなウエイトを占めている。続いて京浜市場が24%、甲信越市場が2%となっている(図2)。県内の取扱いの大部分はJA全農福島郡山園芸センターへのバラコンテナ出荷で、そこで選別・調整・包装を行い、県内市場および京浜市場へ出荷を行っている。令和元年度の出荷割合は、県内市場約40%、京浜市場約60%である。

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生しいたけは年間を通して出荷され、秋冬作の出揃いとともに出荷最盛期を迎えるが、当県は岩手や秋田などの東北地方の主産県よりも秋冬作の出荷スタートが早く、月下旬から出荷量が増加するため、量販店の棚が秋商材へ移り変わる月末から10月初旬に当県産しいたけの需要が高まる。また、正月向け商材として最需要期を迎える12月末は県内・京浜市場ともに非常に引き合いが強くなる。

5 当県の販売状況

当県では、JA全農福島郡山園芸センターに出荷している生産者を会員として組織される「全農福島しいたけ生産販売協議会」(以下「協議会という)を中心として県産しいたけの生産振興を図っている。県内全域の協議会員から出荷されたしいたけは、郡山市日和田ひわた町に位置するJA全農福島郡山園芸センターでパッケージおよび販売を行っている。協議会員は菌床製造時に放射性物質吸収抑制効果のある「ゼオライト」を施用することが必須となっており、この条件を満たしたしいたけを「愛情しいたけ」というブランドで販売している(写真1)。震災以降、販売形態は主に100グラムパック、180グラムピロー包装の商品で、県内および京浜地区の量販店を中心に販売している。また、協議会では令和元年月に、県内では初めて「しいたけ」でのJGAP団体認証を取得した。協議会役員を中心とした4農場で取得をし、県内量販店を中心にJGAP品の販売も行っている。JGAPは、食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証で、農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の一つである。農家にとっては圃場ほじょうの栽培・収穫工程の見直しの機会となり、栽培工程の効率化につながっている。その過程を経て栽培されたしいたけを販売することで、消費者の皆様に安心して手に取ってもらえるしいたけを目指している。

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また、近年は上述した通り、中国からの輸入菌床から発生したしいたけが協議会員が出荷する純国産しいたけの販売環境を圧迫している状況にある。そうした状況下において、輸入菌床に対抗すべく協議会の出荷物などに対し「どんぐりマーク」を取り入れようと進めている。どんぐりマークは、種菌メーカーが会員となって構成される「全国きのこ種菌協会」が商標を持っているマークで、しいたけが発生する菌床の原材料が国産であることを証明するものである。商品に貼付しているラベルに「どんぐりマーク」を取り入れるため、現在ラベルデザイン変更を考えている。あわせて、今年3月に国から提示された「植菌地表示ガイドライン」をもとに商品への「菌床製造地表示」を実施しようと取り組んでいる。これら二つの取り組みにより純国産をアピールし、輸入菌床との差別化を図ることで販売力強化を目指している。

加えて、JA全農福島では平成30年10月、当県における今後の菌床しいたけ栽培を、より安定的・効率的に行うための「技術」を追求する実践型・実証施設として「JA全農福島菌床しいたけイノベーションセンター」を設立した(写真2)。

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具体的には、大きく二つの事業を行っている。一つ目は、生産者の菌床づくりを省力化するための菌床供給であり、会津地方や郡山市を中心として、県内全域への供給している(写真3)。二つ目は、しいたけの安定的・効率的な栽培体系の確立とその普及のための実証栽培試験である(写真4)。近年、県内でも空調ハウスを使用した栽培が増加しているが、異常気象による猛暑の影響もあり周年を通した安定的な出荷が難しい現状である。高品質・高収量の技術を確立し、県内生産者へ普及することで周年安定栽培の実現を目指している。菌種については、福島県内でのシェアが高い北研と森産業の多様な品種を用いて、培養日数や栽培環境を変化させながら試験を実施している。

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一言アピール

寒い気象条件でじっくり発生して育てられた生しいたけは、肉厚で歯ごたえがあり、風味豊かなところが特徴です。まさに今がしいたけの最盛期となっておりますので、是非さまざまな調理方法で福島県産しいたけをご賞味ください。

お問い合わせ先

全国農業協同組合連合会福島県本部 園芸部園芸課
 住  所:福島県福島市飯坂町平野字三枚長1-1
 TEL:024-554-3292 FAX:024-554-3289
 ホームページ:http://www.fs.zennoh.or.jp/


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