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今月の野菜

広島県 JA尾道市
~品質第一、栽培から選別までこだわった“因島いんのしまのきぬさやえんどう”~

尾道市農業協同組合 営農販売部 営農販売課 天間てんま  啓太


1 産地の概要

尾道市農業協同組合(以下「JA尾道市」という)は、広島県東部に位置し、島しょ部を含む南部の尾道市(瀬戸田町を除く)と県中部の世羅町を管轄している(図1)。

年間平均気温15~16度、年降水量1200ミリと温暖で少雨の島しょ部および沿岸部から、年間平均気温が12~13度と比較的低い県中部の台地まで天候は変化に富み、管内で栽培されている品目は多岐にわたる。平成30年度のJA尾道市の全体販売は約37億2000万円で、その内訳は、米穀類11億1900万円(全体の30.1%)、果樹10億1600万円(同27.3%)、野菜億7700万円(同18.2%)、畜産6500万円(同1.7%)、花き3000万円0.8%、産直億1300万円(同21.9%)となっている。果樹は、はっさくを中心としたかんきつ類、なし、いちじく、野菜は、わけぎ、アスパラガス、トマトさやえんどうなどの栽培が盛んである。

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2 生産・栽培上の特色

1)きぬさやえんどうについて 

えんどうは、若いさやごと食べるさやえんどう、未成熟の実を食べる実えんどう(グリーンピース)の種類に大別され、どちらもマメ科エンドウ属の野菜である。それぞれ収穫のタイミングが異なり、実えんどうが種実を十分に発達させてから収穫するのに対し、さやえんどうは種実が未熟なうちに若採りを行う。また、JA尾道市管内では、さやが薄いうちに収穫するきぬさやえんどうと、ある程度肥大させてから収穫するスナップえんどうの2種類のさやえんどうが栽培されている。本稿では、特に「高品質」で知られる当地のきぬさやえんどうを紹介する。

(2)産地の歴史

JA尾道市管内でのきぬさやえんどう栽培は、尾道市南端に位置する因島で行われており、昭和60年ごろから盛んに栽培されるようになった。元々は地面に這わせて栽培を行い、収量を重視した管理を行っていた。そんな中、当時の営農指導担当者が「量より質」の産地への転換を打ち出し、生産者と一体で、栽培方法から選別までの見直しを行った結果、今日まで続く因島きぬさやえんどうのブランド化へとつながることとなった。

(3)因島のきぬさやえんどうの特徴

因島のきぬさやえんどうは「高品質」であることが特徴で、特に姿形の美しさについては比肩するものが無いと言っても過言ではない。生産者もそれだけのこだわりを持って栽培を行っている

栽培においては、脇芽を全てかき取主枝一本仕立てを行っており、収量は落ちるが、形のそろったさやの収穫を可能としている写真1~2。また、収穫後においては一莢一莢を手作業で形、大きさ、傷の有無などを選別基準に厳しく選別し、これら品質に対する徹底したこだわりが、販売先からの評価につながっている。

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上位の等級は京都の料亭などでも使用されており、料理に彩りを添え、格式を一段上げる役割を担っている。

また、令和元年11月に営まれただいじょうさいにおいても、広島県の供納品として選出され、30年前平成の大嘗祭に続いての選出となった。これもひとえに長きに渡って品質を維持し続けた生産者のゆるまぬ努力のたまものである。

(4)作型と品種

産地である因島は周囲32キロメートル、人口約万4000人の島で、JA尾道市管内でも特に平均気温が高く、雨の少ない地域である。島の南部ではかんきつ類、北部では野菜類を中心に栽培を行っており、温暖な気候を生かしさまざまな品目を取り扱っている。

因島では、きぬさやえんどうを、秋にしゅし年内から収穫する作型と、冬に播種し越冬させて春先から収穫する作型の、二つの作型で栽培を行っている(図2)。品種は、年内収穫の作型においてはささえんどう、越冬栽培においてはニムラ赤花を栽培している。近年は年内収穫が主流で、越冬栽培は若干の取り扱いとなっている。

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栽培面での特徴は、前述した主枝一本仕立てによる品質重視の管理を行っていることや、シーズン中は毎日収穫を行うことが挙げられる。後述する選別基準の通り、A品はサイズが小さいので取り遅れるとすぐにB品以下になってしまうためである。

因島では、露地栽培がメインなので、年内収穫の作型においては、霜にいつまで耐えられるかで収穫終了時期が前後する。その年の気候にもよるが、おおむね月中旬が終了の目安となる。ハウスで加温管理を行った場合は4月まで収穫し続けることも可能である。越冬栽培においては3月下旬から5月上旬にかけて収穫を行う。

近年は気候変動が激しく、特に残暑が厳しいため、年内収穫の作型においては播種時期を遅らせるなど、その年の気候条件に合った調整を行う必要があり、より細やかな栽培管理が求められるようになっている。

3 出荷、販売状況について

生産者は収穫後、規格表選別基準に基づきAM、BM、CMの等級に選別を行い、等級別に分けたものを、コンテナで集荷場に持ち込む写真3

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その後、集荷されたきぬさやえんどうは選果場の作業員が等級ごとに1キログラム単位で箱詰めを行った後に、市場へと出荷される(写真4)。作業員は箱詰めの際にもう一度選別を行い、選別基準を満たしてない品物は、下位等級に回すなどここでも厳しい管理が行われている。

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主な販売先は京都、大阪を中心とした関西と広島県内の卸売市場で、全出荷量の7割を関西市場、2割を県内市場に出荷している。平成30年度の平均単価は、1キログラム当たり2065円であった。

4 産地の現状と今後の課題

JA尾道市では、これまで述べてきた通り、きぬさやえんどうの品質にこだわった生産を続けてきているが、他の産地と同様に生産者の高齢化が進んでおり、栽培面積や、出荷数量が減少傾向にある。さらにきぬさやえんどうの場合、視力低下に伴い厳しい選別に対応できなくなるという問題も数量減少の大きな要因となっている。平成30年度における、JA尾道市管内因島のきぬさやえんどう生産者数は25名、作付面積は1.9ヘクタールで、JA尾道市の取扱実績は、出荷量15トン、販売金額は3300万円であった(図)

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そんな中、きぬさやえんどうに代わって出荷数量が伸びてきているのがスナップえんどうである。スナップえんどうはきぬさやえんどうに比べ、選別作業が容易なため、因島でもここ数年はスナップえんどうに作替を行う生産者が増えてきた。同じさやえんどうということで、きぬさやえんどうで培った技術を生かした栽培を行っており、その品質については市場からの評価も高い。

伝統のきぬさやえんどうも守りつつも、それを生かしたスナップえんどうの産地化を進めるなど、今、因島のきぬさやえんどうは大きな転換期を迎えている。

一言アピール

さやえんどうは、料理に彩りを添え食卓を明るくします。因島のきぬさやえんどうは、味が良いことはもちろん、外観の美しさではどの産地にも負けない自信があります。目と舌のどちらでも楽しめるこだわりの逸品ですので、是非、手に取って違いを感じてみてください。

お問い合わせ先

 担当部署:尾道市農業協同組合 営農販売部 営農販売課
 住  所:〒722-0051 広島県尾道市東尾道13-1
 電話番号:(0848)20-2811(代) FAX番号:(0848)20-2813
 ホームページ:http://www.ja-onomichi.or.jp/


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