茨城県 JA水郷つくば
~日本一のれんこん産地~
水郷つくば農業協同組合 営農部 れんこん課 坂本 千穂
茨城県の南部に位置する水郷つくば農業協同組合(以下「JA水郷つくば」という)は、北は筑波山、東には霞ヶ浦、西には牛久沼、南には利根川があり、水と緑に恵まれた地域である。JA水郷つくばは、2019(平成31)年2月に旧JA茨城かすみ、旧JA竜ヶ崎、旧JA土浦の3JAが合併し誕生した(図1)。管内は、土浦市、龍ケ崎市、牛久市、かすみがうら市、阿見町、利根町、美浦村の4市2町1村にまたがっている。
管内最大の特産品はれんこんで、JA水郷つくばの作付面積は、約850ヘクタール(2019(令和元)年実績)で、れんこん田が霞ヶ浦沿岸一帯に広がり、日本一の生産量を誇っている(写真1)。その他にマッシュルーム、なし、だいこん、栗などの青果物、グラジオラスなどの花き類も生産されている。
(1)産地の歴史
もともと稲作を行っていた霞ヶ浦周辺だが、田んぼが深く水害が多かったことから、どちらかというと水稲栽培は不向きの地域だった。昭和20年代(1945~1955年)には、販売目的のれんこんが栽培されるようになり、昭和45(1970)年から転作作物として取り入れられたことにより作付面積が急増した。昭和40年代後半(1975~1980年)からはポンプによる「水掘り」が導入されると、1戸当たりの作付面積が拡大し一大産地となった。1996(平成8)年旧JA土浦で「JA土浦蓮根本部会」が発足し、全国一のれんこん生産部会が誕生した。2019(令和元)年7月にJAの合併に伴い、名称が「JA水郷つくば蓮根本部会」と改名された。管内のれんこん生産者は、この生産部会であるJA水郷つくば蓮根本部会に所属し、2018(平成30)年時点で生産者数は346名となっている。小規模農家は約30アール、大規模では10ヘクタール以上栽培しており、全体で平均すると1人当たり約1.5ヘクタール栽培している。収量は10アールで約2トン程度収穫できる。
(2)栽培状況
れんこん農家のほとんどが家族経営だが、大規模農家はJAの事業を利用して外国人技能実習制度を活用したり、従業員を雇って法人化しているれんこん農家もいる。自走式の掘り取り機械や洗浄機を導入している農家もいるが、ほとんどが人力で「水掘り」と呼ばれる機械で水をくみ上げ、ポンプの水圧でれんこんの泥を飛ばして収穫をする方法を行っている(写真2)。
(3)作型
JA水郷つくばでは、れんこんの周年出荷を行っている(図2)。ほとんどが露地栽培であるが、19名がハウス栽培(約4ヘクタール、全体の0.5%)を行っている。
3月かられんこん田の代かきを始め、4~5月上旬に種バスの植え付けを行う(写真3~4)。6~7月は病害虫(主にアブラムシ)の防除を行い、地域によっては、フェロモントラップによるハスモンヨトウの共同防除も行っている。施肥は主に有機たい肥やれんこん専用肥料を投入している。露地栽培の収穫・出荷は、8月中旬から翌年の5月まで行っているが、年末の12月がピークである。栽培品種は主に金澄系を中心とし、節の詰まった短茎種を栽培している。また、露地栽培の端境期である6~8月上旬は、ハウス栽培による収穫・出荷を行っている。
(4)栽培の工夫
関係機関と協力し新しい施肥技術の開発や、研修会や勉強会の開催・参加など積極的に実践し、GAP取得に向けた取り組みや、高品質・安定出荷・環境にやさしい農業を目指している(写真5)。卸売市場との情報交換も密に行っており、産地との情報共有を行い有利販売につなげるため、卸売市場に情報を提供している。
(5)販売状況
JA水郷つくば蓮根本部会での出荷数量および販売額(2018(平成30)年度実績)は出荷量7100トン、販売額32億6000万円となっている(図3)。JA水郷つくばで生産されているれんこんはほとんどが市場出荷で、青森県から大阪府まで、約40社の卸売市場と取り引きをしている。中でも長野県は取引高が一番多く、2017(平成29)年度の販売額は5億8000万円で、全体の15パーセントを占めている。2019(令和元)年度は、出荷量を8700トン、販売金額38億5000万円を目標としている。
(6)出荷の工夫
JA水郷つくばでは、日々の出荷物の検査、統一目揃え会、栽培講習会など積極的に行い、高品質なれんこんを出荷するよう心掛けている(写真6~7)。
出荷は、主に4キログラム詰め段ボールで行っているが、11~4月の通常時は段ボールに鮮度保持フィルムを入れて出荷し(写真8)、気温が高い5月および8~10月は、氷を詰めて発泡ケースに入れて出荷している。また、ハウスれんこんは全て2キログラムの発泡ケースで出荷している。
3 販売戦略
(1)JAグループ茨城れんこん流通部会の結成と合同の消費宣伝
れんこんは茨城県内で4JAが出荷している。最盛期の12月は日量約12万ケース出荷される。個々のJAの販売より茨城県全体でまとめることで有利販売につながるため、互いのJAの情報を共有したり、合同で大田市場や豊洲市場での仲卸向けの消費宣伝を行い、県全体での有利販売につなげるよう努めている。
また、JAグループ茨城れんこん流通部会でれんこんの出荷規格表を作成し、各JAに出荷している生産者も出席し、統一目揃え会を行うことで県全体で高品質なれんこんを出荷できるよう努めている。
(2)市場外流通の確立と独自の真空パックの開発
JA水郷つくばでは、市場を通さず直接スーパーに販売をする市場外流通を確立している。市場を通さないことで、通常より早くスーパーへの入荷が可能になり、より鮮度を保ったまま卸すことができる。また市場手数料も省くことができ、生産者の手取りの増加にもつながる。
また、スーパーにより鮮度を保ったままの出荷を可能にするため、JA水郷つくばでは独自の真空パックを開発した。れんこんを真空に保つことで酸化や変色を防ぐことができ、通常の袋売りに比べて長持ちさせることができる。
(3)「れんこんの日」やマスメディアなどを活用したれんこんのPR
JA水郷つくばでは、積極的にれんこんのPR活動を実施している。地元のシンガーソングライターを「れんこん大使」に起用し、地元だけでなく全国にれんこんのPRをしている。1994(平成6)年に第1回れんこんサミットを開催した11月17日を「れんこんの日」として定め、マスメディアやインターネット、スーパー、卸売市場などで消費宣伝を行っている(写真9)。
2019(令和元)年8月には、「やさいの日(8月31日)」を活用し、栄養学を専攻している大学、食品メーカーの協力の下、れんこんPRフェアをスーパーで開催した。また、地元のレストランがれんこんの新メニューを考案し消費者へ情報提供した。11月にはスーパーで「JA水郷つくばフェア」「茨城県フェア」「れんこんの日フェア」を同時に開催し、JA水郷つくばで生産されている野菜も含めてPR活動を実施した。食育事業として、れんこんを使用したメニューで、JA水郷つくばが寄贈したれんこんが食されている小中学校もある。
また、仲卸業者などに向け、12月の年末出荷が本格的に始動する前に卸売市場にてJA水郷つくば産れんこんの販売強化PR活動を実施している。
他にも、直接消費者に向け、新聞などで食品メーカー協力の下、新しい食べ方の提案や産地での食べ方の紹介も行っている。また、年末の最盛期に向け、2019(令和元)年もテレビ撮影を行い、れんこんの消費拡大を狙いPR活動を積極的に行ったところである。
(4)チームMD(マーチャンダイジング)の組織化による販売強化
JA水郷つくばでは、従来の出荷・販売形態を見直し、産地・関係機関・市場・実需者・スーパーが一体となった販売事業を展開するために、これらのメンバーでチームMDを組織している。月に一回程度会議を開催し、情報を共有しながら販売事業の強化を図っている。
◆一言アピール◆
JA水郷つくばのれんこんは霞ヶ浦の豊富な水資源と肥沃な土壌のおかげで、白く肉厚でやわらかく、シャキシャキした食感で甘みがあるのが特徴です。天ぷらや煮物、きんぴらはもちろんのこと、炒めものやお鍋、イタリアンなどの洋食、お酒のおつまみといったさまざまな料理に使うことができ、いろいろな食材や味付けにも合います。風邪や花粉症の予防にも効果があるとされていますので、ぜひご賞味ください。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:水郷つくば農業協同組合 営農部 れんこん課
住 所:〒300-0048 茨城県土浦市田中1-1-4
電話番号:029-823-7001 FAX番号:029-824-5011
ホームページ:https://ja-sgt.or.jp