産地紹介:JA高知県幡多地区宿毛部会
~長い日照時間と温暖な気候を生かしたオクラ生産~
高知県農業協同組合 幡多地区幡西営農センター 主任 林 幸徳
高知県は、四国の南部に位置し、北には四国山脈が連なり、南は太平洋に面した扇状の地形で、総面積は7100平方キロメートル、四国全体の38%を占めている。そして、その県土面積の84%は林野で占められ、中山間地域の割合は95%に達している。
一方で、年平均気温17.0度、年間降水量2548ミリ、年間日照2154時間で、夏季は高温多雨、冬季は温暖多照の気象は、農業発展の要因となってきた。このような立地・自然的条件の下、農業については、水稲、野菜、果実、畜産物などの生産が行われ、とりわけ狭い耕地を集約的に利用する生産効率の高い施設園芸は、高知県農業の基幹部門となっている。また、しょうが、なす、にら、みょうが、ししとうがらしは全国シェア1位を占め、オクラ、きゅうりなども全国的に高いシェアを占めている。 宿毛市、四万十市、土佐清水市、黒潮町、大月町、三原村を管内とする高知県農業協同組合幡多地区営農経済センター(以下「JA高知県幡多地区」という)は、県内でも比較的オクラやブロッコリーといった露地野菜の生産が盛んな地域である(図1)。
平成30年のオクラの出荷量については、高知県全体で1113トン、そのうちの約4割の457トンを占めている。高知県幡多地区の中でも、宿毛市でのオクラの生産が盛んで、「JA高知県幡多地区宿毛部会」という生産者部会が生産の中心になっている。
(1) 宿毛市のオクラ栽培
オクラはアフリカ大陸原産でエジプトでは2000年以上前から栽培されており、日本に入ってきたのは幕末~明治初期と言われている。
宿毛市がオクラ産地として確立したのは、昭和50年前後からである。それまでは水稲中心だったが、安定した収益を得られる作物として水田を利用したオクラ栽培が始まった。オクラは、寒さに弱く暑さや乾燥、加湿に強いことから、温暖で多湿の当地に向いていると思われた。
当初は30~40戸で露地栽培を開始した。平成25年には生産者141戸、栽培面積は、14ヘクタールにも及んだが、最近は生産者の高齢化などで減少し、30年には生産者96戸、栽培面積9ヘクタールとなっている(表1)。
(2) 主な作型
主な作型にはハウス、露地(含むトンネル)栽培があるが、露地栽培が大半を占めている。播種は2~4月にかけて行い、約70日で収穫となる。ハウス栽培から露地栽培へと出荷を継続して、主に4~11月上旬まで出荷している(図2)。
発芽率の適温は25~30度で温度が低くなると発芽率も低くなる(表2)。播種後約60日で淡い黄色の花が咲き、花落ち後5日ほどで収穫となる(写真1)。
夏場の暑い時期は1日4センチメートルほどさやが肥大する。収穫遅れになると繊維が発達し、著しく食味を損ねてしまうため毎日収穫している。特にピーク時の7~8月は、朝夕の2回収穫している(写真2)。
そのため、7~8月は出荷量が多くなり、9月以降は気温の低下とともに出荷量が減少し11月はわずかな出荷量となる(表3)。また、収穫終了時のオクラの草丈は2メートルにもなる。
(3)栽培の工夫
露地栽培で早期出荷するため、マルチをしたりトンネル内に水封ダクト(湯たんぽ)を設置し地温を高め、発芽率の向上や生育促進を図っている。連作すると地力が低下するとともに、病害虫のネコブセンチュウが発生し収量が減少することから、同じ圃場で栽培する場合は、水稲を3年間栽培し、その後オクラを栽培することでネコブセンチュウの発生を抑えるとともに、地力の維持に努めている。
また、環境にやさしい農業として、生産者が栽培方法を工夫して、できるだけ農薬に頼らないエコ栽培という栽培方法に取り組んでいる。
JA高知県幡多地区管内で出荷されている品種はアーリーファイブである。アーリーファイブの特長ははっきりした5角形で肉質がやわらかい。また、低節位から多く着莢するのと同時に、耐暑性が強くてスタミナがあることから、栽培後半まで収穫量を維持し,多収を期待できる。
管内では、全量共同選果を行い品質の統一を図っている。生産者は日の出から圃場で収穫を開始し、収穫したものをコンテナに入れて選果場へ持ち込む。その後選果場の選果員が選別して、機械でネット詰めして、ネットの上部を封紙で止める(写真3~5)。
規格はLが6~7本、 Mが8本詰めで、1梱包5.6キログラムにした後、予冷庫に搬入している。主に長さが8.5~10.5センチメートルのM品を中心に出荷している(表4)。
選果場は、選果員30名 機械24台で4~11月まで稼働している。出荷量は、最盛期の多い日で日量2.6トン、平均では1トンで、梱包した後トラックで配送している。主な配送先は、東北、京浜、中京、北陸、京阪神、中四国で主に市場出荷しており、特に中京、京阪神への出荷が多い。選果場は、以前は、空調設備もなく夏場は場内温度が高い中、選果作業をしていたことから、品質低下の原因となっているのではないかとの指摘があった。このため、部会で協議し、平成28年度に空調設備を導入し、品質が落ちないように温度管理に取り組んでいる。
◆一言アピール◆
環境にやさしい農業としてエコ栽培に取り組み、生産者の方々が栽培方法を工夫してできるだけ農薬に頼らない方法で大事に育てています。また、高知県は全国一の日照時間を誇り温暖な気候を生かしたオクラの栽培に取り組んでいます。オクラの粘りは、夏バテ予防にも効果があるので、当地のオクラを見かけましたら、是非ご賞味ください。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:高知県農業協同組合幡多地区幡西営農センター
住 所:〒788-0002 高知県宿毛市南沖須賀1-1
電話番号:0880-63-2194
ホームページ:https://ja-kochi.or.jp/branch_offices/945/