産地紹介:福井県 三里浜特産農協
~全国で唯一、「三年子らっきょう」を生産~
三里浜特産農業協同組合 生産販売部長 横山 晴夫
三里浜は、福井県の北西部の坂井市三国町にあり、一級河川九頭竜川が日本海に注ぐ河口から、南西方向の海岸線に沿って、長さ12キロメートル、幅1~3キロメートルの帯状に続くなだらかな起伏の砂丘地帯である(図1)。農業生産物では、らっきょう、すいか、だいこんが中心となっている。ハウス栽培の増加やかんしょ、にんじんなどの新規品目の増加により、一時、らっきょうの作付面積は減少傾向で推移していたが、最近は、収穫の機械化などにより、その維持に努めている。
三里浜特産農業協同組合(以下「三里浜特産農協」という)は、坂井市三国町(旧浜四郷村(米納津地区・黒目地区・下野地区・西野中地区・山岸地区・横越地区))と福井市の一部(旧棗村(白方地区・石橋地区))の生産者が昭和25年に出資して出来た農業協同組合(専門農協)である。三里浜特産農協の概況は、表1の通りであり、主にらっきょうの生産・加工・販売に特化した農協である。
らっきょうと言うと全国的には一年掘り栽培が主流であるが、当地三里浜では足かけ3年で育てられる「三年子らっきょう」の栽培が有名で、三里浜特産農協で加工されるらっきょうの甘酢漬けは、「花らっきょ」として全国に出荷されている(写真1)。
三年子らっきょうは、明治初期に自家用として栽培されたのが始まりで、三里浜の砂丘地は比較的砂が細かく粘土が多いことから三年子らっきょうの栽培に適していると考えられる。
一年掘りらっきょうの栽培は、通常7月下旬から8月下旬にかけて植え付けを行い翌年の5月下旬から6月中旬に収穫を行う。収穫後は、主に青果用として、市場出荷している(写真2、図2)。
これに対して「三年子らっきょう」は翌年に収穫をせず、植え付けから三年目の6月中旬から7月下旬に収穫を行う。通常より一年長く生育させることで、粒が小さく歯切れのいいらっきょうにになる。この栽培方法は全国で唯一、三里浜で行われている特別な栽培方法である。収穫後の三年子らっきょうは、主に加工して甘酢漬けとして三里浜特産農協から販売される他、青果用を地元の漬物業者に加工用として販売することがある。
当地では、一年掘りと三年子らっきょうの両方が栽培されているが、最近の生産者数と集荷数量の推移を見ると、一年掘りの生産者数は、2014年度90名に対して、2018年度は58名、集荷数量は、95トンから104トンとなり、生産者数は減少しているものの、集荷数量は増加傾向で推移している。
また、三年子の生産者数は、2014年度177名に対して2018年度は131名、集荷数量は、450トンから344トンとなり、生産者数、集荷数量ともに減少傾向で推移しているものの、集荷数量は、2016年度以降増加していて、減少傾向に歯止めがかかっているといえる(図3、4)。
また、らっきょうの生産者は、一年掘りと三年子の両方、またはどちらかを栽培している生産者とそれぞれだが、両方栽培している生産者がいちばん多い。
植え付け作業は8月、気温30度以上の圃場で1球、1球、手作業で行う。畝間は30センチメートルと他産地(25センチメートル)の一年掘りらっきょうより広く、株間15~17センチメートルで植え付ける。腰が痛くなる植え付け作業と、暑さとの戦いでもある収穫作業はかなりきつい労働であることから、後継者不足を招き、生産者の高齢化が進んでいる(写真3)。
らっきょうはユリ科に属し、通常、植え付けた年の秋には薄紫の花を咲かせ、2年目の10月下旬から11月上旬(植え付け翌年の秋)には、咲く花が圃場一面を赤紫一色に染め、県内外から観光客が訪れ、三里浜の秋の風物詩でもあり、地元の観光資源にもなっているところである(写真4、5)。
収穫された三年子らっきょうは、一年掘りより小粒で身の締まりが良く、繊維が細かく、歯切れの良さが特徴である(写真6~8)。
三年子らっきょうは、一年掘りに比べサクサクとした食感がある。歯切れの良さは、らっきょうを構成している食物繊維の割合が関係しており、食物繊維の配列も一年掘りと比較してもきれいな配列となっている。一年掘りの繊維は荒く食べて硬さを強く感じる食感で、食感に関しては個人の好みもあるが、一般的に三年子らっきょうの食感は好評を頂いている。
三里浜特産農協では、各生産者に対して、生産履歴(トレーサビリティ)の記帳を奨励し農産物の安全・安心を担保するとともに、研修会・部会の会合を通じて生産技術の向上を目的とした活動を行っている。特に農薬の使用に関しては、必要以上の注意喚起を行っている。さらに生産者個人への対応として圃場での栽培の指導を徹底することでお互いの信頼関係の構築を図っている。
三里浜特産農協で加工販売しているらっきょうの甘酢漬け「花らっきょ」の特徴は、味付けで余計な添加物は使わず、砂糖と醸造酢・塩のみで作られていることである(写真9)。
◆一言アピール◆
三里浜の花らっきょの最大の特徴は、原料に三年子らっきょうを使用していることである。一年掘りと違い、粒が細かく口に入れた時のサクサクとした食感は、他にまねの出来ない絶品と言える。圃場から製品まで一貫した管理の下で作られる「花らっきょ」は産地の自信作でもあり、福井県を代表する特産物でもある。当地の花らっきょを見かけたらぜひ、ご賞味ください。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:三里浜特産農業協同組合 生産販売部販売課
住 所:福井県坂井市三国町黒目9-25
電話番号:0776-82-2111 FAX:0776-81-4387