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産地紹介:栃木県 JAなすの~那須地方の特性を生かしたアスパラガス産地~

那須野農業協同組合 南部園芸センター 所長 薄葉 亮一


1 那須地方の概要

那須地方は栃木県の北部に位置し、大田原市、那須塩原市、那須町の2市1町からなるが、那須野農業協同組合(以下「JAなすの」という)は、その那須地方を管内としている(図1)。東は八溝山系を境に茨城県、北は那須山脈によって福島県との県境に接し、西南は塩谷郡および南那須地域と隣接している。

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那須地方の総面積は約1319平方キロメートルで栃木県全体の21%を有し、東、北、西の三面は自然美に恵まれた山岳地帯で、那須、塩原の観光地を有している。中央以南は那珂川水系の河川と那須疏水のかんがい用水の恵みを受けた広大な那須野ヶ原扇状地が開け、まさに那須野ヶ原の大地と呼ぶにふさわしい広大で自然と歴史に彩られた地域である。

気候は内陸型で、冬は太平洋側的特徴を示し、平均気温は12.4度、年間降雨量1427ミリ、年間日照時間は1857時間である。

また、地区中央部を東北新幹線、JR宇都宮線と東北自動車道、国道4号線が縦貫しており、首都圏との交通は至便な地域である。首都圏に近い立地条件を生かし、食料供給地として京浜市場を中心に出荷している。

2 産地の概要

JAなすの管内は、北部を中心に酪農や肉用牛を中心とした畜産が盛んな地域で、中央部以南では、米麦などの土地利用型農業が中心であり、水田を利用した園芸品目の生産も行われ、「アスパラガス」、「いちご」、「うど」、「なす」、「ねぎ」、「トマト」などが栽培されている。また、「梨」の栽培が昭和40年代頃から盛んに行われており、県内では番目に大きい産地となっている。

平成29年度の農業販売高は、全体で213億9500万円であり、その内訳は、耕種(米麦大豆)100億4800万円(全体の47%)、園芸(野菜・果樹)54億1700万円(同25%)、植木億300万円(同1%)、畜産(繁殖、肥育など)56億2700万円(同26%)となっている。

その中で園芸の内訳は、いちご7億6600万円(園芸の14%)、アスパラガス7億2600万円(同13%)、ねぎ7億200万円(同13%)、なす億2200万円(同10%)、梨3億1500万円(同6%)であり、アスパラガスは管内でも主力品目の一つになっている。

3 アスパラガスの導入経過

那須地方のアスパラガス生産は、もともと畜産農家が多かった旧湯津上村(現大田原市)において堆肥の有効活用ができる作物として着目され、平成年に導入された。佐賀県や九州方面への視察研修を行い、技術習得を図りながら、12年に12名の生産者でJAなすのアスパラ部会(以下「アスパラ部会」という)が発足した。

14年には、JAなすの園芸推進品目に位置付け、各種補助事業を有効活用し、管内全域にアスパラガスの導入が図られ、那須地方全域で栽培面積が急速に増加した。

22年には、販売金額億円を達成し、「那須の高原アスパラ(なすぱらちゃん)」を商標登録し(図2)、平成30年には、部会員94名、栽培面積約50ヘクタール、販売金額億6000万円を達成した(図3、4)。現在さらなる産地化、ブランド化を進めている。出荷は主に東京中央卸売市場と県内市場である。

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4 栽培の特徴

当管内のアスパラガス栽培は、全面積ハウス栽培を徹底し、旬を大切にした無加温による栽培を行っている(写真1)。

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畜産が盛んな地域のため、質の良い堆肥が確保し易く、畜産農家と堆肥利用協定などを締結している。畜産農家から生産される堆肥にもみ殻などの有機質を混ぜ、半年以上切り返した完熟堆肥を毎年安定的に圃場へ投入し、化学肥料の使用を軽減している(写真2)。

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品種は「ウェルカム」を中心に近年は雄株の方が太物が多いことから、全雄系の品種の導入・検討が行われている。

施肥管理、土づくりに関しては、堆肥を中心とした施肥体系となっており、毎年土壌分析を実施し、分析結果に基づいた施肥管理を行っている。栽培管理については、定期的な栽培講習会を開催し、栽培技術の共有化、防除ポイントの情報交換などを実施し、栽培技術の平準化に努めている。

また、出荷形態は平成16年夏芽からダンボール箱から発砲スチロール箱へと変更し、予冷時間を遵守した品質保持を心掛けている(写真3)。

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アスパラガスは、定植後安定した収量が確保できるまで年程度かかる。定植は1年目の5月に行われるが、新規栽培者はセル成形苗を直接定植する方法やセル成形苗をポット移植後に定植する方法を導入している(図5)。新規栽培者の労働力や経営規模に応じた柔軟な指導体制をとっており、アスパラ部会として栽培マニュアルや施肥マニュアルなどを配布し、栽培技術の平準化を図るとともに栽培技術の底上げを図っている。

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5 アスパラ部会の特徴

アスパラ部会に、販売部、指導部、青年部、女性部の部門の組織を設け、それぞれが役割を持って活動している(図6)

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販売部を中心にアスパラ部会と市場との連携、情報交換を行い、実需ニーズを把握することにより、近年はバラ出荷などに取り組み、小回りのきく出荷体制づくり、販売単価確保に努めるとともに、指導部を中心に現物検査を実施し、品質維持はもとより、さらなる信用確保につながる活動を実施している。

また、春芽品評会の「なすぱらちゃんグランプリ」や創作料理発表会を実施するとともに、青年部や女性部の力を活用し、市場や店頭での試食販売やアスパラまつりなどでの消費宣伝活動を行い、「那須の高原アスパラ」の認知度向上、販売力強化を図っている(写真4~6)。

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各種補助事業を積極的に導入し、規模拡大や新規者確保に努めている。特に、新規者への支援に特に力を入れており、新規栽培者説明会や役員、指導部を中心に巡回指導を実施している。

また、説明会以降、圃場の選定や圃場づくり、定植後の管理など新規栽培者人ひとりにトレーナーを付け、年間を通して個別相談や指導を行っている。

トレーナーはアスパラ部会員から任命し、アスパラ部会費用より指導員手当を支給している。

新規栽培者へは、栽培初年度のパイプハウス建設に当たり、アスパラ部会員によるハウス建設支援を実施し、新規者の不安と負担の軽減を図っている(写真7)。

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6 今後の課題

農村における高齢化や深刻な担い手不足などが大きな問題となってきている中、現在、当JA管内においては各種補助事業などを積極的に導入し新規栽培者や面積拡大に取り組み、後継者の確保、産地の維持に努めているが、当産地においても労働力(雇用)の確保が大きな問題となりつつある。

今後は、高齢化や労働力の確保といった問題を、早期にアスパラ部会員、JAなすのが共有することにより解決策を見いだし対処していくことが大切になってくると考えている。

当アスパラ部会は新規栽培者や後継者の加入もあり比較的若い生産者が多く、現在青年部在籍者は25名となっており、担い手の育成が進んでいる。

そのような中、農家の経営安定に向けた平均単収の向上、販売単価の向上を目指し、早期10億円達成とさらなる産地の拡大を目指し、アスパラ部会と関係者が一体となり活動することで産地の維持、ブランド力の強化につなげ、アスパラガス経営でゆとりある生活を達成していきたい。

一言アピール

当産地のアスパラガスは3月下旬より10月上旬まで出荷が続きます。旬を大切にした太くて甘い「那須の高原アスパラ」を見かけましたら是非ご賞味ください。

お問い合わせ先

 担当部署:那須野農業協同組合 湯津上営農経済センター 湯津上青果物集出荷所
 住  所:〒3240403 栃木県大田原市湯津上3419
 電話番号:0287982718  FAX:0287982719
 ホームページ:http://www.janasuno.or.jp/


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