富山県
~使いやすく、おいしいミニサイズのねぎ「ねぎたん♩♩」~
富山県農林水産総合技術センター 園芸研究所
野菜課長 奥野 善久
富山県内で生産される野菜の中で最も販売金額が大きい品目は「白ねぎ」であり、県内全域で主に水田転作作物として生産されている。特に、農協系統で共同出荷される白ねぎは、「富山しろねぎ」として県内外に出荷されている。
近年の消費構造の多様化や簡便化などに伴い、消費者から「使い勝手がよく、一度に食べきれるおいしいねぎが欲しい」という要望が聞かれるようになった。
このような要望に応えるため、富山県農林水産総合技術センター園芸研究所では、平成13年から独立行政法人 野菜茶業研究所(現 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)と共同で、消費者が「食べたい、買いたい」魅力ある野菜の商品開発を目指し、「短くて、太い、おいしいねぎ」の研究を開始した。18年には系統選抜による品種の育成が完了し、22年2月に「越中なつ小町」、「越中ふゆ小町」の名称で2品種が登録された(写真1、2)。
越中なつ小町は、葉鞘(注1)の伸びが良く、やや長めで、生育が早いため、早どり栽培に適し、越中ふゆ小町は、葉鞘が伸びにくく、やや太めで、遅どり栽培に適する。両品種とも既存品種に比べ短い、太い、柔らかい、辛みが少ない特徴を持つ。
また、富山県オリジナル野菜としてブランド化を図るため、全国農業協同組合連合会が「ねぎたん♩♩」という商標名を登録し、出荷規格(全長40センチメートル、軟白長20センチメートル以上)を定め、関係機関一丸となって生産拡大に取り組んでいる。
栽培当初は、射水市や魚津市、黒部市の一部での栽培であったが、現在では、県内全域に栽培が広がり、平成30年産は栽培面積4.1ヘクタール、約90トンの出荷が計画されている(図1)。
注1:葉の基部が鞘状になり、茎を包む部分。
ねぎたん♩♩に使用する品種は、前述した越中なつ小町、越中ふゆ小町の富山県で育成された2品種に限定し、オリジナル性を高め、ブランド力の強化を図っている。
ねぎたん♩♩は白ねぎより全長が短いため、定植後の管理期間が2カ月程度短く、4月に定植した場合、7月から収穫できることから、後作ににんじんやキャベツなどの秋冬野菜の栽培も可能である。また、水稲の収穫作業と競合しないことから、主穀作経営体の複合経営品目にも適している(写真3、4)。
通常の白ねぎでは軟白部をつくるために土寄せ作業が4~5回必要だが、ねぎたん♩♩は2回で済み、防除回数も3~4回程度削減できるなど、省力的な栽培が可能である(図2)。
また、定植方法については、早く太らせるために1メートル当たり40本植え付けるが、軟白長20センチメートルの確保には最終土寄せ量が少なくて済むことから、条間(注2)は100センチメートルとやや狭くし、湿害を受けにくい平床の状態で植え付けることも可能である。このため、これまで白ねぎ栽培に不向きな作土(注3)の浅い圃場でも栽培が可能となった。
注2:畝に2列以上のねぎを栽培する時の列と列の間の幅
注3:耕地の表面にある土壌をいう。耕土ともいう。
富山県の白ねぎの出荷規格は、全長58センチメートルで軟白部が30センチメートル以上となっているが、ねぎたん♩♩の出荷規格は、全長40センチメートルで通常の白ねぎの3分の2というコンパクトサイズであり、切らずに買物袋や冷蔵庫にもすっぽりと収まる使い勝手の良さと少人数家族でも使い切れるサイズが特徴である。長さは短いが、太いねぎであるため、1本当たりの重さは通常の白ねぎと変わらない。
出荷先は、主に東京市場を中心に県内市場、名古屋市場などで、出荷期間は、7月上旬~9月中旬の約2カ月間となっている。
また、販売先の要望に応じ、生協向けには宅配ボックスに切らずに入る全長30センチメートル規格、差別化を図りたい量販店向けには鮮度保持袋への袋詰め規格など多様な出荷形態に対応している(写真5、6)。
ねぎたん♩♩というネーミングについては、従来の白ねぎとの差別化を狙い、消費者により親しんでもらえるよう短さや可愛らしさをイメージできるものとなっている。また、段ボール箱や結束テープなどのマークやデザインを統一し、ブランドの定着を図っている(写真7)。
栽培当初は県内市場中心の出荷であったが、市況の変動が激しく、価格の暴落により生産者の目標所得が確保できない事例もみられたことから、平成20年からは、富山県の新たなオリジナル野菜としてねぎたん♩♩のコンセプトである買いやすさ、使いやすさを最大限生かせる東京や名古屋市場にも販路を拡大し、現在では全出荷量の約7割が首都圏向けとなっている。また、市場外での新たな販路を開拓するため、全国農業協同組合連合会富山県本部がねぎたん♩♩を高く評価してくれる実需者との契約取引を進めており、その取り組みは、各取引先の取扱要望や生産状況を踏まえた出荷計画を作成し、JA間連携や分荷調整により需要に応じた計画的な継続出荷に努めている。
◆一言アピール◆
ねぎたん♩♩は、短いだけでなく、太さと柔らかさにも魅力がある。夏場はそうめんや冷奴などの薬味としての利用が多いため、生でも辛味が少なく、葉も柔らかくて食べやすいねぎたん♩♩が最適である。また、熱を加えると甘味が増すため、焼きねぎや蒸しねぎにしてサラダやマリネに、豚肉と合わせて串焼き、炒め物などにするとさらにおいしくなる。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:富山県農林水産総合技術センター 園芸研究所 野菜課
住 所:富山県砺波市五郎丸288
電話番号:(0763)32-2259
FAX番号:(0763)33-2476
ホームページ:http://taffrc.pref.toyama.jp/nsgc/engei/