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今月の野菜

産地紹介:広島県 JA尾道市
~伝統の技と瀬戸内の恵みがつまった広島わけぎ~

尾道市農業協同組合 営農販売部 営農販売課 係長 村上 裕一


1 地域の概要

尾道市農業協同組合(以下「JA尾道市」という)は、広島県東部に位置し、島しょ部を含む南部の尾道市(瀬戸田町を除く)と県中部のちょうを管轄している。

尾道市の島しょ部および沿岸部は、平均気温15~16度、年降水量1200ミリと温暖で少雨な地域であるが、県中部の台地は年間平均気温が12~13度と比較的低く天候は変化に富む。故に、管内で栽培されている品目は多岐にわたる。平成28年度のJA尾道市の販売実績は、約34億7319万円で、その内訳は、米穀類億8183万円(25.4%)、果樹億5255万円(27.4%)、野菜億566万円(20.3%)、畜産億2324万円(3.5%)、花き3585万円(1.0%)、直売所に出荷された産直品が億7405万円(22.3%)となっている。果樹は、はっさくを中心としたかんきつ類、梨、いちじく、野菜は、わけぎ、アスパラガス、さやえんどうなどの生産が盛んである。

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2 わけぎについて

わけぎはユリ科のネギ属に属し、ねぎとシャロットが交雑してできた品種で、ねぎの仲間であるがねぎとは違う独特な香りを持っている。

ねぎが種子を形成して子孫を増やすのに対して、わけぎは種子を作らず茎と呼ばれる球根が分かれて増殖することにより子孫を増やす。土に植えた球の球根が半年間で50球以上になることもあり、「子宝に恵まれる」縁起物として桃の節句に好んで食されてきた。

3 尾道市のわけぎ生産と販売について

(1) 産地の概要

平成28年度における、JA尾道市管内のわけぎ生産者数は129戸、作付面積は40ヘクタールで、出荷量は309トン、販売金額は2億5900万円であった2)

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栽培地域の内訳をみると、島しょ部の向島町岩子島が79名、いんのしまが13名、沿岸部の吉和町周辺が33名、その他が名であり、尾道市内においてもわけぎを栽培している地域は限定されている。

中でも向島町岩子島は、周囲7.5キロメートル、人口は600名に満たない島であるが、28年度出荷実績309トンのうち232トン(75%)が岩子島で生産されている。島内のいたる場所にわけぎが植え付けられており、まさに「わけぎの島」と言える。

尾道市の島しょ部および沿岸部でわけぎ栽培が拡大、定着した理由は、砂地の土壌と年間降水量が少なく温暖な気候が栽培に適していたためと考える。

(2) 主な作型と品種

けぎ農家のほとんどが家族経営である。じょうで年間平均回の植え付けをするが、トマトなど他の夏野菜との複合経営を行っている農家も多い。

現在「広島わけぎ」として出荷されている主な品種は、広島号、号、号、号、号、11号の品種である(図)。

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わけぎは、球根により栽培する品目で、販売用の青果を生産しながら、同時に種球となる球根を農家が自ら育てて採取する。

これらの品種は、長年わけぎ農家が代々自家採取してきた種球を特性により選抜して品種化したもので、広島わけぎの出荷者以外には原則譲渡禁止とされている。

選抜による品種の多様化は、周年出荷を実現するために行われたものであり、それが産地の伝統的な技術力となり、他産地の追随を許さない圧倒的なシェアを築いてきた大きな要因となった。

平成26年に導入した新品種、広島12号および13号は高温期の生育が優れており、試験栽培を行いながら落ち込みが激しい月~月の出荷の回復を図っている

(3) 栽培について

栽培における機械化はほとんどされておらず、植え付けから収穫までほぼ手作業である。前述した通り、農家自身で種球の栽培と採取をしており、5月に掘り上げた種球を軒先やビニールハウス内に吊り下げて貯蔵しておいて写真)、それをその都度、一球にばらして植え付ける写真)。生育が早い7月から8月は、植え付けから30日前後で収穫できる。一方、長い時には植え付けから半年かかって収穫となる。

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(4) 機械の導入でスピードアップ

出荷規格としては、1束ごと小袋で包装をした30束入り(写真3)と包装のない20束入りがある(表)。そのほかに、加工・業務用向けに3キログラムのバラ詰めの出荷形態がある。

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従来は、個人で所有する皮むき機で不要な葉を除去して、出荷規格に沿って選別、重量を計量して、一束ごと輪ゴムで束ねてJA集出荷場へ持ち込んでいた。これらの調製作業は家族労働時間の7割以上を占めており、負担が大きく、意欲ある担い手の規模拡大の制限要因となっていた。

そのため、平成21年~27年にかけて、処理能力が高い皮むき機(4台)と小袋用規格で個々の農家の1束ごとの計量・結束作業が不要になる自動計量結束包装機(2台)をJA尾道市の集出荷場へ設置した。このことで、農家はバラ詰めで集荷場に持込むことが可能となり出荷作業が省力化されるとともに、皮むき作業がスピードアップすることになった。

 「広島わけぎ」ブランドは50周年

わけぎは、全国生産量の約6割を広島県が占め、県内の産地は尾道市と三原市に集中している。両市におけるわけぎ産地の形成は明治時代とされ、戦前には既に大消費地の関西向けに出荷されていた。

産地拡大のきっかけは、生産面では、昭和60年代に周年出荷体制を確立したことにある。わけぎは、長日、高温条件の5月~7月は休眠期にあたり生育が止まってしまう。しかし、昭和60年代に入り休眠を破る技術が確立され、この時期に出荷することが可能になった。

併せて、ビニールハウス栽培の普及により厳寒期に安定的な収量を確保することが可能になり、急速に年間の出荷量が増加した。

また、販売面では昭和33年にJA尾道市当時、JA三原当時、JA向島町当時の3農協において合同の生産者組織「広島わけぎ部会」が形成されたことにある。その後、昭和43年に3農協による統一ブランド「広島わけぎ」の共同販売が開始され、販売金額は、昭和55年に10億円、平成2年に15億円を記録した。しかしながら、平成28年度は3億3500万円で最盛期の約5分の1程度に落ち込んでいる。

16年に広島県内において農協の広域合併が実施されJA尾道市とJA向島町は合併しJA尾道市となった。現在もJA尾道市、JA三原の2農協での共同販売は継続されており、29年9月に尾道市内に関係機関や市場関係者が一同に会し「広島わけぎ共販50周年記念大会」を盛大に開催した。

5 寒さに当たって甘みの増すわけぎ

「広島わけぎ」の主な出荷先は、大阪、京都を中心とした関西と広島県内の卸売市場で、全出荷量の8割を関西市場、2割を県内市場に出荷している。28年度の平均単価は、1キログラム当たり563円であった。

周年供給が可能な「広島わけぎ」だが、市場に出回る量が多いのは10月~11月と2月末~3月となっている。最大の需要期は桃の節句に向けた時期で、産地の出荷も2月末から3月上旬に最盛期となる。この時期の寒さにあったわけぎは甘味とうまみが増している。

6 「わけぎ塾」で新規栽培者へ支援   ~消費者との交流で消費拡大~

JA尾道市は、平成22年から新規栽培者向け講習会「わけぎ塾」を開催し、新規栽培者への支援を行っている。受講者は延べ30名を超え、就農後に規模拡大を進め、すでに産地の中核を担っている生産者もいる。

また、全国農業協同組合連合会広島県本部と連携して、わけぎ餃子などの加工品の販売やレシピ作成による食べ方提案、最大の消費地である関西の消費者を尾道市に招いて生産者と交流するイベントを企画しており、30年は三原市で開催予定である。

近年は、地場企業とのコラボ販売などに力を入れ、宿泊施設や地元食品加工メーカーへ、わけぎを取り入れたメニューの提案を積極的に実施している。すでに尾道市内ホテルのレストランでわけぎ料理の提供が始まり、お土産として人気があるかまぼこ店でわけぎかまぼこの販売が開始された。

今後もこのような取り組みを拡大して、伝統と高い生産技術に裏打ちされた「広島わけぎ」のブランド力をさらに強固なものとしていきたい。

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一言アピール

当地では、安心、安全でおいしいわけぎを生産するために日夜はげんでいます。
 特に春に出回るわけぎは一度寒さにあたって甘味とうまみが増しています。瀬戸内の太陽の光をしっかり浴びて育った「広島わけぎ」をぜひご賞味ください。

お問い合わせ先

担当部署:尾道市農業協同組合 営農販売部 営農販売課
住  所:〒722-0051 広島県尾道市東尾道13-1
電話番号:(0848)20-2811(代)  FAX番号:(0848)20-2813
ホームページ:http://www.ja-onomichi.or.jp/


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