今月の野菜
産地紹介:徳島県 JA名西郡
~市場で高い評価を得ている神山産のふき~
名西郡農業協同組合 神山センター
指導販売課 後藤 正平
1 地域の概要
徳島県の北東部に位置する名西郡農業協同組合(以下「JA名西郡」という)は、平野部の石井町と山間部の神山町の2町により構成されている。石井町は緑濃い四国山地と水清らかな吉野川との間に開け、ほうれんそう、にんじん、ブロッコリー、こまつななどの栽培が盛んである。
一方、神山町は町の中央を東西に横断する清流、鮎喰川上中流地域に農地と集落が点在し、その周囲を300~1500メートル級の山々が囲んでいる。徳島県を代表する特産物である「すだち」の日本一の産地として知られ、山ふきをはじめとした山菜類・梅・花きの県内有数の産地となっている。
JA名西郡の28年度の総販売額は15億5800万円であり、その内訳は野菜8億6600万円(56%)、果実4億5200万円(29%)、畜産物9400万円(6%)、花き・花木8400万円(5%)、米穀6100万円(4%)などとなっている。そのうち、ふき・ふきのとうの販売額は6300万円で野菜全体の7%であるが、神山地区においてはすだちに次ぐ大きな産物となっている。
2 管内のふき生産
現在、山ぶき部会には200名程度の生産者が所属しており、12月から3月はふきの花茎(蕾)である「ふきのとう」、3月から6月は「ふき」、10月から11月は「秋ふき」の出荷を行っている(図2)。生産量はふき、ふきのとうあわせて徳島県の出荷量の約84%を占めている。
神山町におけるふきの栽培は昭和50年代後半より始まったが、それ以前は、山野に自生している山ふきを出荷して現金収入を得ていた。昭和60年ころより、梅の木の下で栽培する人が現れ、神山町下分地区で生産量が増加し市場出荷が行われるようになった。
今から30年ほど前に熱心な栽培者が知人より優良株を譲り受け、栽培したところ今までにない立派なふきが毎年、収穫できるようになり、強い香りと適度な硬さが料亭や一般家庭でも重宝がられ市場で高評価を得ていった。このふきが町内各地区に広がり、またJAや県農業改良普及センターの協力も得て、ハウス栽培にも取り組み、冬場のハウス栽培から露地栽培へと収穫期間の幅を広げていったことから収益性がさらに高まった。
ふきは軽量で扱いやすく、ほとんどの病害虫防除が必要ないことより女性や高齢者にうってつけの作物である。また、ふきのとうから始まりふきへ続き販売期間が長く、収益性が高いことから梅の木の下や休耕田に転作作物として植えられ、栽培面積が拡大していった。
その後、JA名西郡や県関係者の熱心な指導により年間販売額が7000万円に達し、部会としても目標額を1億円と掲げていたが、特に梅の木の下での栽培において農薬ドリフト(飛散)の問題が生じてきたため、農作物の安全安心の観点、また、販売単価の低下などの原因も重なり、そこを境に生産量が減少していった。
しかし、近年、販売単価が上昇してきたこと、生産者の高齢化、梅の販売が不振なことにより梅の栽培をやめて、梅の日陰を利用してふき栽培を始める生産者が出てきた。
3 集出荷体制
収穫から出荷調製までは生産者各位で行い、その後、JAの選果場にて検査・箱詰めをして出荷される。ふきは長さを3階級に分け210グラムで結束したものを階級ごとに10束ずつ段ボールに入れる(写真1)。京阪神・中京市場を中心に出荷されており、部会では取り決めた選果選別・規格を徹底した共選出荷体制を採っている。ふきのとうについては、定数詰めで100グラムパックに入れ、それを10パックずつ段ボールに入れ、出荷を行っている(写真2)。
4 新品種「あわ春香」の導入
ふき栽培を新たに始める生産者が出てきてはいるものの、高齢化により栽培が継続できず、面積を減らす生産者も多く見られるようになっており、担い手の確保も非常に厳しい状況である。また、ほとんどが手作業であることから1人当りの栽培面積を拡大することは難しく、今後の生産量の維持が大きな課題となっている。
そのような中、平成24年より徳島県の農業研究所が育成した、ふきのとう専用品種「あわ春香」の栽培にも取り組み始めた。
このふきは晩成品種で、ふきのとうを3月下旬まで出荷できることから作期の拡大と市場の品薄期を狙って出荷し、所得増につなげることを目的としている。この品種の栽培は害虫の防除・灌水などの栽培管理において非常に難しいところはあるが、今後も関係機関の協力を得て、栽培技術の確立に取り組んでいく。
近年は夏場の乾燥などでふきの株が傷み生育に影響を与えていることから、部会では役員がJA職員と定期的に管内の圃場を巡回し、生育状況の確認をして栽培管理の指導をしたり、市場へ作況をつなぐことで、高品質のふきを生産し高単価で販売できるよう努めている。また、担い手確保のために定年退職者や移住者のもとを訪れ普及活動を行っている。
現在も神山産のふきやふきのとうは市場で高い評価を得ており、今後も定期的な巡回指導による高品質なふきの生産、出荷協議会などの全体会議時における選果選別、規格の徹底を行い、産地として「神山ブランド」を維持し生産者の所得増大につなげ、消費者の方に安全安心で高品質な商品を提供していくことを目標に関係者一丸となって取り組んでいきたい(写真3)。
5 和風だけじゃないふきの魅力
ふきは独特の苦みと香り、そしてシャキシャキとした歯ごたえが魅力の春を代表する野菜である。
油との相性もいいので、油炒めや煮物で春の香りを楽しんで下さい。
鮮度が良い葉付きのふきが手に入る時期は限られているので、肉料理やパスタなどにも取り入れてみてください。
ここでは、肉巻きフライを紹介します。
◆一言アピール◆
JA名西郡では、山ぶき部会と連携して高品質な農産物生産はもちろん、安全安心を第一に考え、消費者の方から信頼される産地を目指しています。
神山ブランドの「ふき」「ふきのとう」を春を感じながら是非、ご賞味下さい。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:名西郡農業協同組合 神山センター 指導販売課
住 所:〒771-3311 徳島県名西郡神山町神領字東野間1-1
電話番号:(088)676-0290 FAX番号:(088)676-0288
ホームページ:http://www.ja-myouzai.jp