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今月の野菜

産地紹介:愛知県 JA豊橋
~加工・業務用も視野に信頼されるキャベツ産地へ~

豊橋農業協同組合 営農部 営農指導課 係長
土屋 博之


1 地域の概要

豊橋農業協同組合(以下「JA豊橋」という)は、愛知県の東南部に位置する豊橋市を管轄としている(図1)。豊橋市は、東は静岡県、南は太平洋、西は三河湾に面し、おおむね平たんな地形と穏やかな気候に恵まれた地域であり、年平均気温が16.8度、年間降水量は1756ミリメートルである。

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もともと水源に乏しい地域であり、かんしょや麦などの栽培が主体であったが、昭和43年に農業用水(豊川用水)が全面通水したことで豊かな水に恵まれるようになり、全国的にもまれに見る園芸地帯へと発展した。現在では、野菜、果樹、花き、稲作など約70品目に及ぶ多様な農業が営まれ、養豚や養鶏などの畜産も相まって、全国でもトップクラスの生産額を誇っている。

JA豊橋管内では、それぞれの地域の自然条件などを生かした特徴ある農業が営まれている。南部地域は、梅田川以南から太平洋にかけての地域で、渥美半島につながる園芸産地として、キャベツ、はくさい、すいか、ミニトマト、トマト、なすなどが盛んに栽培されている。西部地域は、三河湾に面した地域で江戸時代から明治時代にかけて新田開発が行われ、水稲の栽培が中心である。北部・東部地域は、弓張山系から豊川に至る緩やかな丘陵地帯で、かきや巨峰などの果樹栽培、いちごやミニトマトなどの施設栽培が盛んな地域である。

JA豊橋の平成28年度の総販売額は、227億1200万円であり、その内訳を見ると、野菜159億1000万円(70.1)、畜産27億7100万円(12.2)、果樹21億2500万円(9.4)などとなっている。キャベツの年間出荷数量は5万8500トンで、販売額は60億円(野菜全体の37.7)である(28年度)。

2 管内のキャベツ生産

愛知県のキャベツ生産量は全国2位(平成28年野菜生産出荷統計)で、中でも豊橋市から渥美半島にかけては、一大産地として位置付けられている(写真1)。昭和5年、渥美郡高師村(現豊橋市)そ菜出荷組合長であった杉浦幸四郎氏の努力によって、夏まき冬どりの優良品種「高師カンラン」が生まれた。その後、次第に近隣の田原町大久保や赤羽根町などでも栽培されるようになり、この地は東西の大消費地への供給を担うキャベツ産地となった。41年には冬キャベツが国の指定産地となり、栽培技術の向上などにも積極的に取り組んだ。43年に豊川用水が通水し、キャベツの生産量も飛躍的に増えていった。温暖で豊かな日照のもとに育った豊橋のキャベツは締まりが良く、食味の良さとみずみずしさが特徴である。

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管内のキャベツ部会員は約670名であり、栽培面積は秋冬期で約1100ヘクタール、春夏期が約500ヘクタールである。近年、部会員数は減少傾向にあるものの、規模拡大や栽培の周年化が進み、作付面積は増加傾向となっている。出荷は10月中旬から翌6月までで、10月中旬から翌4月に出荷となる秋冬期が主体となっている(図2)。近年では、春夏期(5月から6月)の出荷も増加傾向にある。出荷は、その時期などにより大きく4つに区分され、秋冬期に出荷となる冬系(寒玉)とゴールドサワー(春系)が主力となっている(表1)。

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冬系(寒玉)は、葉のしわが少なく扁平で、葉の巻きが硬く歯ごたえがある(写真2)。火を通しても煮くずれしにくいことから、調理用に使われることが多い。一方、ゴールドサワー(春系)は、葉にしわがあり形が丸く、葉がらかいため千切りなどの生食用として使用されることが多い(写真3)。ちなみにゴールドサワーは、豊橋で命名されたものである。

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収穫、選別は生産者が個別に行い、管内に6カ所ある集荷場に出荷する。主な出荷形態は、10キログラム詰め、15キログラム詰めである。また、主な出荷先は卸売市場であり、京浜地域、京阪神地域、中京地域の市場が中心となっている(図3)。

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3 品種試験、害虫対策

JA豊橋キャベツ部会では、冬系(寒玉)で8品種、ゴールドサワー(春系)で8品種、はる3品種、夏6品種を奨励している。栽培期間は、年内収穫の品種では2~3カ月程度、1月から2月に収穫する品種では4~5カ月程度、3月から4月に収穫する品種では6~7カ月程度となる。1月以降に収穫する作型は、年明け以降の低温により生育が止まることもあるため、品種特性を十分に把握した上で作付けしたり管理したりすることが重要となる。

品種特性としては、耐暑性(暑さに強い)、耐寒性(寒さに強い)、耐病性(病気に強い)、結球生理(球の締まり方)などが挙げられるが、こうした品種特性を十分に把握する上でも品種試験を行う必要がある(写真4)。有望な品種については、複数の作型、じょうで試験を実施し、地域格差(土質の違いなど)による品種の安定度も確認している。試験では、球の重さ、大きさ(幅・高さ)、玉色、食味、生育のスピードなどを試験品種ごとに調査している。こうした試験の結果をもとに、各時期に品種特性の違うタイプを作付けし、安定した出荷に努めている。

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また、土壌診断に基づいた適正な施肥の推進と同時に、堆肥などの施用による土づくりも行っている。近年では、緑肥(ソルゴー)を利用して排水性の改善・保肥力の向上を図り、天候の変化に影響されにくいような栽培管理を心掛けている。

害虫対策については、一斉防除を実施している。地域が一体となって一斉に防除をすることで、地域の虫害密度の低下を図っている。また、8月から11月にかけては虫害の発生が多いため、害虫の発生消長に合わせた防除暦を作成している。

さらに、害虫の発生状況を把握するため、各地域でフェロモントラップによる発生予察を実施している(対象害虫は、ハスモンヨトウ、オオタバコガ、シロイチモジヨトウ、コナガの4種)。発生予察により、虫害密度が高くなる前に行う早期防除が可能となり、農薬の使用量削減にもつながっている。

4 加工・業務用需要への対応

JA愛知みなみ、JAひまわり、JAあいち知多、JA豊橋の4JAは、平成15年から愛知県経済農業協同組合連合会(以下「JAあいち経済連」という)を事務局として「キャベツ本部」を設置し、「JAグループ愛知キャベツ」として販売している。キャベツ本部のもとで安定供給を実現することにより、取引先からの要請に対する充足率を高め、JAグループ愛知への信頼性を向上させている。また、産地情報と販売情報をキャベツ本部で掌握することにより、出荷量の増減や販売状況の変化、取引先からの要請に対して迅速に対応できるようにしている。

また、近年の外食における需要の増大、量販店やコンビニエンスストアにおける加工商材(千切りなど)の需要増大といった状況の中で、加工・業務用への対応が課題となっている。JA豊橋管内では、かつて、加工・業務用キャベツの販売アイテムとして、10キログラム詰め、15キログラム詰めを扱っていた。しかし、計画した時期に決められた数量を出荷しなければいけないことや、段ボールの作成に手間がかかるなど販売アイテムとしてのメリットが少なかったことに加え、市場販売が順調に推移していたことから、加工・業務用の取り扱いが増えることはなかった。その後、加工・業務用の需要が多くなり、増量してほしいという要望もある中で、21年度より新規販売アイテムとして鉄コン(容量300キログラムの鉄製大型コンテナ)の取り扱いを開始した(写真5)。段ボールを作成する必要がなく、階級の選別もないことから、作業量の軽減を図ることができ、作業の効率化により面積拡大にもつながる販売アイテムとして、取扱数量も年々増加傾向にある(図4)。なお、加工・業務用キャベツは、JAあいち経済連に販売を委託している。

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秋冬期を中心に出荷をする責任ある産地として、今後も高品質キャベツの生産と安定した出荷を目指し、部会の活動を中心に信頼される産地の確立に向けて取り組んでいきたい(写真6)。秋冬期に出荷する作型は栽培期間が長く、気象条件に左右されることも多い。特に、近年は天候不順で安定した出荷が困難になる場合も多く、天候に左右されることのないように品種の特性や作型に応じた栽培技術の確立を図る必要がある。また、近年の加工・業務用需要への対応にも、積極的に取り組んでいきたい。

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一言アピール

JA豊橋では、高品質なキャベツを安定供給できる信頼のおける産地を目指している。また、量販店の店頭だけではなく、加工・業務用などさまざまな用途に使っていただくため、迅速な対応とお客様の立場に立った産地づくりを目指している。今後も、食味とみずみずしさに優れる愛知産キャベツの購入をぜひともお願いしたい。

お問い合わせ先

担当部署:JA豊橋 営農部 営農指導課
住  所:〒441-8124 愛知県豊橋市野依町字西川5
電話番号:(0532)25-3814 FAX番号:(0532)25-6220
ホームページ:https://www.ja-toyohashi.com/


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