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今月の野菜

産地紹介:埼玉県 JA南彩
~次世代へとつなぐ岩槻のこまつな~

南彩農業協同組合 岩槻営農経済センター
センター長 黒澤 くによし


1 産地の概要

南彩農業協同組合(以下「JA南彩」という)は、埼玉県東部のさいたま市岩槻区、春日部市(旧庄和町を除く)、蓮田市、宮代町、白岡市、久喜市(旧鷲宮町、旧栗橋町を除く)の5市1町からなり、東京都心から30~50キロメートル圏内に位置している(図1)。

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南部や北部には丘陵性台地からなる地帯もあるが、管内はおおむね肥沃な洪積層や沖積層の平野が広がっている。東部の古利根川、西部の綾瀬川、中央部の元荒川や見沼代用水などの河川をはじめ、かんがい用水や排水路などが縦横に流れ、自然豊かな水田地帯を形成している。その一方で、都心へのアクセスに恵まれた交通条件のもと、都市化が進んでいる地域でもある。こうした中で多彩な都市近郊農業を展開し、なし、いちご、トマト、きゅうり、こまつな、くわいなどが生産されている。

JA南彩の平成28年度の総販売額は33億3232万円であり、その内訳を見ると、米穀5億6070万円(16.8%)、野菜11億7345万円(35.2%)、果樹8億1831万円(24.5%)などとなっている。こまつなの年間出荷数量は1540トンで、販売額は5億1000万円(野菜全体の約43%)である(図2)。個人出荷から農協出荷への切り替え、露地栽培からハウス栽培による周年作付けへの移行といった動きにより、近年、出荷量は増加の傾向にある。

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2 こまつな栽培の概要

平成28年度のJA南彩へのこまつな出荷者は岩槻地区の21戸であり、栽培面積は約20ヘクタールである。1戸当たりの平均面積は95アールとなっている。主にビニールハウスで周年栽培しており、作付けは平均年7回である(写真1)。暖かい季節はしゅから25日程度で収穫できるが、冬などの寒い季節は収穫まで60日程度かかる。周年で栽培するので、品種も時期によって使い分けているが、その時期に合ったより良い品種を選定するため、試験栽培も多く行っている。

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今から30年以上前のこまつなの生産者は、きゅうりやトマトの栽培を主体とし、こまつなは年末出荷用に栽培するだけの場合が多かった。しかし、収穫が一時期に集中するため忙しいといった理由から、ハウスを利用したこまつなの周年栽培が徐々に普及し、現在ではこまつなを主体に栽培している生産者が多い。JA南彩のこまつなは、ハウス栽培のため、軟らかく歯ざわりの良い食感が特徴である。

栽培面では、施肥を効率的に行うため、毎年土壌診断を実施している。土壌中には、チッソ、リン酸、カリウムなどがバランス良く含まれることが、良い作物を作るためには重要であるが、リン酸が畑に多く残っていることが分かった。そのため、土壌成分のバランスがとれるように、リン酸分を抑えた有機100%のオリジナル肥料を使用している。また、生産者は全員がこまつなで埼玉県特別栽培農産物の認証を受けている。

3 集出荷体制

出荷調製作業は生産者が各自で行う。1袋200グラム(みなけ(袋など込みの重さ)220グラム)で、段ボールに20袋を入れて農産物共販センターへ持ち込む(写真2、3)。等級・規格はAM(A等級のMサイズ)がメインで、AL、AS、Mなどもある。しかし、基本的に大きくなりすぎたものや虫食いのものは廃棄してしまうため、AM出荷がほとんどである。

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近年、出荷量が増加したため、従来の集出荷場では手狭になり、今年(平成29年)3月に新しく岩槻農産物共販センターを建設した。持ち込まれたこまつなは、真空予冷装置で急速冷蔵して予冷庫で一時保管し、各取引先へトラックで低温輸送される(写真4)。出荷先は、県内市場5社、京浜市場8社、岩手県の市場1社、長野県の市場1社で、合計15社となっている。

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また、取引市場担当者を招いての目ぞろえ会や出荷検討会を行い、品質の統一や安定出荷などに努めている(写真5)。

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4 販売対策

こまつなは全国的にも作付けが増えてきており、販売に苦戦しているのが実情である。生産者の安定した所得確保のため、一定割合の市場との契約販売や一部で市場外取引を行っている。

JA南彩では、平成22年度に女性職員で構成する農産物販売促進員「なんさい小町」による活動を開始した。各地のイベントや量販店などに出向き、消費者に試食を提供するなど、こまつななどの販売促進に努めている(写真6)。

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また、加工品として、野菜を使用したアイスクリーム(野菜愛す)を考案した(写真7)。こまつなをはじめ、トマトやねぎ、くわい味などのアイスクリームを直売所で販売している。

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5 今後の課題

JA南彩岩槻地区のこまつな出荷者は30~40代が中心で、比較的若い生産者が多い。しかしながら、将来的に産地を維持していくためには、後継者問題への取り組みが必要であり、次世代にこまつな生産を含む農業の魅力をいかに伝えていくかが課題となる。

一言アピール

こまつなは栄養価が高く、煮浸しや味噌汁、パスタ、グリーンスムージーに利用するなど、食べ方も多彩である。古くからの産地であり、軟らかく食感に優れるJA南彩のこまつなを、ぜひご賞味いただきたい。

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お問い合わせ先

担当部署:南彩農業協同組合 岩槻営農経済センター
住  所:〒339-0045 埼玉県さいたま市岩槻区大字柏崎802-1
電話番号:(048)798-0072 FAX番号:(048)798-1993
ホームページ:http://www.ja-nansai.or.jp


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