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今月の野菜

産地紹介:神奈川県 JAあつぎ
~糖度と酸味のバランスの良い厚木トマト~

厚木市農業協同組合
指導販売部 営農指導課長 今 直樹


 産地の概要

厚木市農業協同組合(以下「JAあつぎ」という)は、神奈川県の中央部に位置し、厚木市および愛甲郡清川村を管内としている(図)。東京からは直線距離で約45キロメートルの地点にあり、山梨県の山中湖に源を発して県中部を流れる相模川の西岸に広がる平野部に位置する。気候は温暖帯に属し、年間降水量は1536ミリメートル、年間平均気温は14.8度である。主な農産物は、水稲、露地野菜、施設野菜、畜産、果樹、花きなどであり、複合経営が主体の兼業農家が大半を占めている。

JAあつぎ管内の平成27年度の販売額は12億9481万円であり、野菜億1806万円(63.2)、畜産1億5177万円(11.7)、米1億3125万円(10.1)などとなっている。トマトの販売額は、約8000万円である。

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厚木市は人口22万5661人、清川村は3194人(平成28年日現在)であることから、管内は生産地である一方、消費地でもあり、生産物の流通に時間がかからないのが特徴である。トマトの販売は、ファーマーズマーケットゆめいちを中心とした直売および直販が全体の約75を占め、主流となっている(写真)。

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 トマト栽培の歴史

神奈川県内のトマト栽培は、横浜市や川崎市の京浜地区、藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市の湘南地区で盛んであるが、県央地区の厚木市においても、昭和30年代初頭から栽培が始まり、60年余りの歴史を持つ。食糧難の時代も収まりかけ、水稲や麦作のみの経営に不安を感じた生産者が、近代農業への転換を図ったのが始まりである。

当時の野菜生産は、簡易ビニールトンネルハウスによるトマトの抑制栽培やきゅうりの促成栽培であった。栽培面積も少なく、複合経営の一環としての位置付けであったが、当時の施設野菜は希少価値を持ち、市場では高値で取引されていた。

その後、生活が豊かになるにつれて食の多様化が進み、施設野菜に対する需要も高まってきた。そうした時代の流れの中、30年代にはハウスの大型化が進み、40年代にはガラス温室が登場するなど、トマト産地として順調に発展を遂げていった。40年代後半にはオイルショックに巻き込まれ、50年代には土壌病害の発生に悩まされたが、省エネ型暖房施設を導入したり、土壌消毒や抵抗性台木の導入を行うことで解決していった。その後も、60年にはロックウールによる養液栽培(注が導入されるなど、作型や栽培方法が多様化した。また販売形態も、生産者が直接市場に持ち込む個別市場出荷から共販出荷、直売所出荷などへと広がっていった。

現在、トマトの生産戸数は21戸、栽培面積は360アール(戸当たり平均17アール)であり、年間生産量は340トンとなっている。すべてが施設栽培で、作型は、促成、半促成、無加温、夏秋、抑制と多様であり、ほぼ年間を通じて出荷している(図)。

注1:ロックウールとは、鉄鉱石などから鉄を取り除き、コークスや石灰石と混ぜて高温で溶かし、綿あめ状に繊維化して圧縮熱処理を施したもの。ロックウールによる養液栽培とは、土の代わりに培地としてロックウールを用い、液肥などを含む養液によって生育を管理する栽培方法。

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 生産・栽培上の特色

JA管内では、栽培面での省力化や減農薬化を目指し、交配用マルハナバチの導入やラノーテープの設置を行っている。また、平成18年に発生したコナジラミが媒介する黄化葉巻病の対策として0.4ミリメートル目の防虫ネットを展張している。さらに、施設内換気のための循環扇の設置や、遮光カーテンの展張などによって施設内の環境を整備し、トマトの健全な生育を期している。

当地は生産地かつ消費地であるため、輸送に時間がかからない。そのため、樹上で熟度を高めたものを収穫し、着色や味に優れるトマトを出荷している(写真)。

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栽培しているのは主に大玉で、品種はマイロックが大半を占めている。マイロックは、糖度と酸度のバランスがよく味にコクがあり、熟度が進んでも実の堅さを保つことができるため、直販が主流で共販もある当地区の出荷形態に合った品種といえる。

注2:コナジラミ対策として、黄色のテープに有効成分を染み込ませた資材。コナジラミの成虫は黄色を好むため、誘引されてテープに接触した雌成虫が成分を体内に取り込む。その後に産んだ卵は、ふ化が阻害される。害虫の天敵や粉送媒介昆虫への影響は少ない。

 出荷販売の概要

厚木トマトは、平成19年に、県が指定するブランドである「神奈川ブランド」に登録された。厚木トマトとは、厚木市内の施設園芸農家によって生産されたトマトを言い、高鮮度かつ高熟度であることを特長としている。この登録を機に直売所などで販売促進活動を行うなど、消費者に対して厚木トマトの知名度アップに努めている。市場出荷に際しては、収穫の翌日には消費者に届くように荷造りを行うとともに、安全・安心に関する取り組みとして、生産履歴が確認できたものを出荷している(写真)。出荷先は、ファーマーズマーケット夢未市以外に、全農青果センター(平塚市)や相模原中央市場(相模原市)、全農神奈川ベジフルセンター(厚木市)などである。

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また、年に回開催される市内持ち寄り品評会で地元の園児に地場産トマトを贈呈するなど、食農教育活動にも一役を担っている(写真)。贈呈先の園児からお礼の手紙が届くなど、小さなファンの獲得にも役立っている(写真)。これらの活動を通じて消費者の信頼を獲得し、厚木トマトがさらに地元に根付いて発展していくように、関係者一同で取り組んでいる。

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一言アピール

温暖な気候でじっくり育った厚木トマトは、糖度・酸度のバランスがよくてコクがある。神奈川県の「神奈川ブランド」にも認定され、消費者に信頼されるように品質にこだわりを持っている。厚木にお越しの際は、大型直売所「夢未市」にお立ち寄りいただき、ぜひ厚木トマトをご賞味いただきたい。

お問い合わせ先

担当部署:厚木市農業協同組合 指導販売部 営農指導課
 住  所:〒243-0004 神奈川県厚木市水引2-9-2
 電話番号:(046)221-2273 FAX番号:(046)224-8414
 ホームページ:http://www.jakanagawa.gr.jp/atsugi/


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