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(野菜情報 2015年12月号)

今月の野菜

産地紹介:鹿児島県 JAいぶすき
 ~温暖な気候と豊かな水資源に恵まれたかぼちゃ生産~

いぶすき農業協同組合
農産部営農課 課長 田中 和隆

1 産地の概要

 いぶすき農業協同組合(以下「JAいぶすき」という)は、鹿児島県薩摩半島の南端に位置し、平成5年3月1日に指宿市および旧揖宿郡いぶすきぐん内の5農協が広域合併して発足した。行政区域としては、16年以降の市町村合併により、指宿市(指宿地区、開聞地区、山川地区)および鹿児島市喜入町きいれちょう(喜入地区)と南九州市頴娃町えいちょう(えい地区)を管内としている(図1)。


 管内の耕地面積、約8400ヘクタールのうち約9割が畑作で、火山活動によりできた九州最大のカルデラ湖である池田湖の水を利用した畑地かんがい施設が整備されている。品目としては、温暖な気候を生かした野菜、茶、花きなどを中心に収益性の高い農業が展開されている。

2 かぼちゃの生産体系

 鹿児島県は、かぼちゃの収穫量では北海道に次いで全国第2位で、年間の収穫量は約1万トンとなっている。鹿児島県の中でも、JAいぶすき管内は野菜の生産量が多いのが特徴で、それぞれの地域の特徴を生かした生産体系が確立されており、日本一の生産量を誇るオクラを基幹作物として、経営補完作目としてかぼちゃの生産が拡大してきた。
 特に、昭和48年にえびすかぼちゃが導入されたのを契機に、51年ころから完熟かぼちゃのブランド化が加速した。
 近年においては、食生活の変化に伴い、甘みの強い粉質系品種の「くりゆたか」や「くりほまれ」の生産が伸びている(写真1、2)。

(1)作型

 かぼちゃは、ウリ科の中では最も低温性作物であるため、本県の気象条件下では年2回の作付けが可能である。
 作型は大きく春かぼちゃと秋かぼちゃに分けられる。
 春かぼちゃの苗作りは1月の寒い時期にはじまる。ハウス育苗管理のもと、温度と水管理に気をつけて作業を行っている。ほ場への定植は、霜対策としてトンネル被覆を行い、2月中旬から3月上旬にかけて行われ、5月下旬から7月上旬まで収穫、出荷が行われる。
 秋かぼちゃは、8月下旬から9月上旬に直まきでは種作業を行い、12月上旬から中旬に収穫する(図2)。秋かぼちゃは、冬至の出荷を目指した作型(抑制栽培)で、出荷は12月上旬から始まるが、2、3年前からは貯蔵を経て、年明けの2月上旬までの出荷にも対応している。
 JAいぶすき管内のなかでも、特に、山川・開聞地区は、開聞岳噴火により火山灰性礫質れきしつ土壌に覆われており、砂礫されき土壌で排水性に優れていることから、かぼちゃの栽培が盛んである(写真3)。

 栽培的に連作障害も少ない作物であることから、毎年同じほ場に作付されているが、春かぼちゃにおいては、収穫時期が梅雨時期と重なり、排水対策が重要となる。また、秋かぼちゃにおいては、交配時期が台風シーズンと重なるため風対策の管理作業に気を配っている。

 25年産の実績では、生産者数は約400名となっており、春かぼちゃの栽培面積は152ヘクタールで出荷量は約1756トン、秋かぼちゃの栽培面積は75ヘクタールで出荷量は828トンであった。出荷量は、23年産の3285トンをピークに減少傾向で、さらに、昨年は10月の相次ぐ台風により、また、今年は6月から7月の記録的な多雨の被害により、26年産秋かぼちゃ、27年産春かぼちゃともに大きな減産となった(表1)。
 近年は、生産者の高齢化や、気象災害による生産意欲の減退が懸念されているが、北海道に次ぐかぼちゃの主産地である鹿児島の中でも、出荷量が多いいぶすき産かぼちゃに対する市場の期待は大きく、JAいぶすきとしては生産者や関係機関と連携して生産者の農業所得向上を目指した生産技術の向上に取り組んでいる。

(2)信用につながる商品管理

 JAいぶすきは、市場の信頼を得るために、生産履歴の記帳および回収、残留農薬の自主検査、適期収穫、選果、選別など品質管理を組合員に徹底している。
 また、出荷計画を2週間に分け、鹿児島県経済農業協同組合連合会(以下「鹿児島県経済連」という)の各営業所(東京、名古屋、大阪、福岡)に数量増減や進捗状況、残量などの情報を提供し、こまめに共有することで欠品を防ぎ、実需者のニーズにあった出荷ができる環境作りに取り組んでいる。

(3)出荷の工夫

 出荷規格はA、Cの2等級に区分されている。完熟果を収穫することを基本とし、切り口のつるは腐敗防止のために5ミリメートル以下に切除し風乾させ、大きさ、形のバランスがとれていることを確認している(写真4)。
 主な出荷先は、京浜、東海、京阪神、九州でトラックで出荷される。また、安全、安心な野菜に対する消費者ニーズに対応して、こだわりのある契約先との減農薬栽培にも取り組んでいる。

(4)販売戦略

 安定的な価格を目指して、鹿児島県経済連と一体となって、指定市場への販売を強化する一方で、消費者向けのプロモーションとしては、食品メーカーとのコラボレーションでレシピを作成したり、「Aコープ地産地消フェア」などでメニュー提案による試食宣伝販売を大都市圏や地元、鹿児島県内で実施している(写真5)。

一言アピール

 薩摩半島の南端に位置する指宿。広大な畑地と温暖な気候を生かして栽培された かぼちゃは、大玉でオレンジ色の果肉がぎっしり詰まり、軟らかくてとても甘く仕上がっており、冬場にかけて出荷がピークを迎える。
 かぼちゃは、代表的な緑黄色野菜でカロテンやビタミンCが豊富な上、食物繊維も含まれており、便秘解消をはじめ、喉や肺などの呼吸器系統を守る働きがあるともいわれ機能面でも注目したい食材である。
 店頭でお見かけの際は、ぜひ、お手に取り、ご賞味いただきたい。

お問い合わせ先

担当部署:いぶすき農業協同組合 農産部
住  所:〒891-0516 鹿児島県指宿市山川成川3830番地
電話番号:(0993)35-3414
FAX番号:(0993)35-3419
ホームページ:http://www.ks-ja.or.jp/ibu/index.html

今月の野菜「かぼちゃ」


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