田子町農業協同組合
田子にんにく課長 森本 昭彦
1.産地概要
田子町は青森県の最南端にあり、岩手県、秋田県と隣接した人口8000人の町です。町の大部分は標高200m~350m程度の山地および丘陵で占められています。
本町は青森県の最南端に位置しますが、標高が高いので冬期は八甲田山系から吹き下ろす西風と北西の風が強いうえ、山よりは積雪が多くなります。降雪期間は12月下旬~3月中旬で平均降雪量は0.7mとなります。また、平均気温は10℃、年間平均降水量1,000㎜で降水日数は約200日。夏期は比較的暖かく、山間地のため昼夜の温度差が大きく夏秋野菜の栽培には恵まれた環境にあります。
当地域の土壌は十和田降下火山灰に由来する噴出物で、表層は腐植に富む砂壌土~壌土からなり、また、田子牛に代表される畜産業も盛んなので堆肥生産も実施し環境保全型農業を推進しています。にんにく栽培は昭和37年から始まり、特に昭和40年代に水田転作品目としてにんにくを中心としてトマト、えだまめなどの高冷地野菜栽培が盛んになりました。取扱いのピーク時であった平成3年度のにんにく栽培の実績は作付面積230ha、販売数量1,630トンで販売額は8億3,300万円に昇りました。現在でも4億2,300万円(平成17年度実績)の売り上げで田子町を代表する農産物となっています。
2.栽培概況
~にんにく作りは土作りから~
40年あまりの歴史をもつ田子町のにんにく栽培は土壌作りに集約されます。ミネラルや鉄分を豊富に含んだ堆肥を使用することで豊かな土壌を確保しています。
植え付け準備は収穫直後の8月からはじまり、(1)土作り(堆肥撒布、土作り資材投入)と、(2)種子選抜が9月中旬まで計画的に各農家で行われます。
各農家で鱗片に分別されたにんにくは9月下旬~10月上旬に植え付けされます。その後、葉が3~4枚出た状態で雪をかぶり冬を越し、雪がなくなる3月下旬から茎が伸び始め6月下旬~7月上・中旬に収穫となります。
掘り取りはハーベスター(収穫機)を使って行います。収穫直後に20日間程度、各農家においてボイラーで加温した作業小屋で強制乾燥させたのち、土がついた状態で農協の「にんにく専用CA冷蔵庫」に保管されます。CA冷蔵庫内は空気中の酸素濃度を調節しており、これにより萌芽抑制され、8月から翌年の収穫が始まる7月まで通年出荷が可能となっています。
3.出荷体制
~他にはない高品質にんにく~
出荷の際は各農家がCA冷蔵庫から出庫し、皮むき選別と規格板による選別を行います。その後、農協にてネット個包し市場へ出荷されます。
球の品質により等級がA/B/C、大きさ規格が2L(1個)/L(1個)/M(2個)と定まっており規格は9種アイテムとなっています。
選果選別は(1)農家における皮むき調製時、(2)農協受け入れ時、(3)農協個包装詰め替え時の三重のチェック体制をとり高品質を保っています。
輸送には10kg、5kg段ボールを使用し、関東・関西地区を中心に全国に出荷しています。
4.販売戦略
~にんにく全体シェアの4分の1が加工用~
各農家の乾燥は、生重の重量が30%減じた頃、乾燥終了となり農協に搬入されます。この際使用するコンテナには生産者が特定できる表示がされており、コンピューター制御による搬出入と在庫管理を行っています。これにより、オーダーに迅速に対応できるような体制が確立されています。
さらに、農協では加工にも力を入れており、にんにく全体シェアの約25%にあたる150~160トンをむきにんにく、乾燥スライス、すりおろしなどに加工し『ガーリックセンター』などで販売しています。また、生産者による消費地での試食対面販売を毎年実施し、にんにくの栽培や料理方法、保存方法などを伝えるとともに、消費者の声を直に聞くことによって生産側、買う側双方の思いを理解した販売戦略の樹立に活かそうとしています。
5.にんにくの効能
にんにくは、肉体疲労時や虚弱体質にパワーを生み出すスタミナ補給源として人気が高くなっています。
にんにくがスタミナ補給源として効果を発揮するのは、アリインという成分の働きによるものです。アリインはアミノ酸の一種であり、にんにくを切ったり、すりおろすことによってアリナーゼという酵素の作用でアリシンという成分にかわります。
アリシンは体内でビタミンB1と結合してアリチアミンという物質になり、これがビタミンB1の吸収を促進し、スタミナ補給に役立つと言われています。
また、アリシンは血中コレステロールの上昇を抑える働きもあるので、動脈硬化予防にも有効です。強力な殺菌作用もあり、風邪などのウィルスにも効果を発揮します。さらに解毒酵素誘導作用や抗酸化作用も認められております。