山形市農業協同組合 経済部販売課長
後藤 朋幸
管内の概要
山形市には、当「JA山形市」と広域合併した「JAやまがた」がありますが、当JA山形市は、山形市の中心部に位置し、区画整理事業が各地区にわたり実施されてきた地域です。組合員農家による良質な住宅地の提供、資産の有効活用等により区画整理地内の農地は減少してきましたが、代替地取得等により、所有農地面積は横ばいを維持しています。
気象条件としては、夏が暑く冬は寒いという典型的な盆地型の地域で、山形市全体としては、水稲・野菜・果樹・花卉等多岐多様な農産物の栽培が盛んに行われています。(ただし、当JAでは果物の生産はほとんどありません。)
農業の概要
当管内は、JR山形駅を中心とし、耕地面積550ha、内水田面積約503haで水田割合は91%となっており、そのうち水稲作付面積は約300ha、200haが転作田となっています。
また、水稲作付農家(出荷農家)は約220戸で、本組合の総世帯(正組合員戸数)数665戸に占める割合は33%となっております。一方、転作田を利用した野菜・花卉(花壇苗・鉢物)栽培等の施設園芸が盛んに行われており、後継者も徐々に育っています。主要野菜作物としては、きゅうり・食用菊(山形の特産物)・温室メロン・ミニトマト・そしてセルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)があります。さらに、ストック、フリージア・ベニバナ・ユリ・トルコギキョウなどの切花を周年栽培出荷しています。
セルリー栽培の概要
現在、東北で唯一の産地として確立しているセルリーは、地元市場・消費者にはもちろん、関東市場においても高い評価を得ていますが、その歴史は昭和44年まで遡ります。部会創設者の一人が、セルリー栽培の第一人者である東京都江戸川区の伊藤仁太郎先生のもとへ栽培経営の研修へ行き、さらに翌々年に二人が同先生のもとで研修し、3人で昭和47年に山形市洋菜生産組合を設立しました。これがJA山形市セルリー部の始まりです。設立当初から台風などの自然災害の影響を受けたり、ウイルス病がはやったりと栽培、出荷は苦労の連続で、作柄は良くても価格が低迷する年も続きました。
毎年、春の出荷時期直前に伊藤先生を招いてほ場巡回を実施し、それぞれの生産者ごとにアドバイスをもらい本格的な出荷に入ります。現在では18名の会員が、土作りを基本とし、土壌診断を含めたい肥の投入や窒素成分の斉一化など栽培技術の向上に努め、品質の統一を図りながら、春作と秋作の年2回の生産出荷に取り組んでいます。
当JAでは露地、ハウス栽培を行っています。春作の栽培は、10月から11月にかけて播種し、5月25日頃から(田植えが終了しないとセルリー出荷にかかれない)6月いっぱいが出荷となります。また、秋作は、5月から6月にかけて播種し、10月25日頃から11月いっぱい出荷しています。それぞれの期間中約15,000ケースづつ年間30,000ケースを地元市場をはじめ関東、東北の各市場へ出荷しています。セルリーの大産地である静岡、長野、茨城とは比較にならない出荷量ですが、高品質と端境期出荷の小さい産地ならではの販売戦略を取っています。
何処の産地にも言えることですが、セルリー栽培の最大の難点はマイナー作物であるため、使用可能な農薬が少なく病害虫の発生に特に気を遣うことです。その点からも病気に負けない土作りが最大のポイントになっています。各生産者とも統一した土地作りを基本としながら、自分のほ場に合ったオリジナリティーを発揮して取り組んでいます。
また、地元市場を通じ、山形市内の量販店においてセルリーの即売会を毎年秋に行っております。通常、店頭での販売は一株を何本かにかいて一本売りが基本ですが、この時は「一株」での販売になります。このイベントは地元消費者に大変好評を得てると自負しています。だだ単にセルリーを売るばかりでなく、セルリーの試食(漬物・スープなど)、食べ方レシピの配布をしながらの販売で、地産地消にも一役かっています。
出荷体制
JA集荷場への一元集荷による共選出荷体制により、生産者ごとに統一規格に合っているかをチェックし、さらに、生産工程管理表の記帳提出を義務付け、残留農薬の出荷前検査を行い、安全・安心を確認して各市場へ出荷しています。
平成15年より、春作のピーク時(6月の高温多湿時)には予冷車をチャーターし、みずみずしさを保ちながら輸送段階での傷みを最小限にくい止めるべく、集荷場より各市場へ直送しています。この直送方式を導入してからは、市場からの傷みによるクレームが非常に少なくなりました。
規格は、株の重量で現在SS、S、M、L、LLと5段階に分けていますが、さらに平成17年の春作より、LL規格(通常一株1.9kg以上・一箱5本入れ)の中で、一株2.2kg以上の物を〔こだわりの特選品〕として、3本入れでの出荷に取り組んでいます。開始し始めてまだ日が浅いため、市場ごとの評価は様々ですが、通常5本入れのLLより株当り100円程度高い値段で取引されています。これも小さい産地ならではの一つの出荷販売体制だと思いつつ、今後も継続していきたいと思います。