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産地紹介


栃木県下都賀西部(にら)

下野農業協同組合 営農部 園芸課
土屋 章


1.地域の概要
 JAしもつけは、栃木市・都賀町・壬生町・大平町・藤岡町・岩舟町の1市5町からなり、栃木県の南部に位置し群馬県・埼玉県に隣接しています。総面積は36,065ha、うち耕地面積12,740haで耕地率35.3%と県平均(20.5%)を大きく上回っています。主な河川である黒川・思川・永野川・巴波川・渡良瀬川の水源により、地区内の水田率は81.6%となっていますが、中央部の水田率はとくに高く90%を超えています。


JAしもつけの管内図

 気候は、年平均気温13.7℃、年間平均降水量1,408mmで、比較的温暖で恵まれた環境にあります。冬は、太平洋側的特徴を示し乾燥した好天候に恵まれています。5~6月頃には寒冷前線の通過とともに降雹が多く発生し、また夏は全国でも有名な発雷地帯でもあります。
 主要な交通手段として、東北自動車道が縦断し、管内を横断する北関東自動車道も部分開通しており、全線が開通すれば大都市への交通アクセスはより一層便利になります。また、東に国道4号、南に国道50号、北西に国道293号が通り、県央や隣接県とも短時間でアクセスでき、産業などの大きな交通拠点となっています。

 本地域の農業は従来の米麦中心から園芸作物を取り入れた複合経営の方向にあり、首都圏内という有利な立地条件を生かした生産性の高い施設園芸作物(いちご・トマト・にら)を中心にきゅうり・なす・ぶどう・花きなどの振興が図られています。管内の農家総数は7,486戸あり、うち専業が949戸、第1種兼業が1,021戸、第2種兼業が5,516戸となっています。耕地面積の内訳は田が10,151ha、畑が2,505ha、樹園地が298haとなっています。


2.にら栽培の概要
 当地域でのにら栽培は昭和40年代に、水田の転作作物として露地ものの生産から始まりました。その後、ハウスによる冬にらの本格的な栽培が始まったのは、昭和50年代後半からです。平成に入ってからは品質重視の周年出荷体制の確立のために夏にらの雨除け栽培が増えました。

 現在JA管内には6つの生産組織が存在し、各組織ごとに生産出荷をしています。にら生産組織連絡協議会を設置し、組織間の連携さらに組織統合に向け取り組んでおります。生産者数171名、作付け面積42haで1戸当たりの作付け面積が30a弱程度となっていますが、1ha近く作付けをする大規模経営者も存在します。また、リース事業によるパイプハウスの導入などにより新規栽培者が増加しており、特に若い新規栽培者は初めから出荷調製機などの機械を導入し、大規模経営に取り組んでいます。

にら生産状況



出荷調製機による調整作業


品種構成比




粘着シートによる発生予察


3.生産体制

 管内ではセル育苗の導入による育苗の省力化、半・全自動定植機を利用した定植作業の機械化、出荷調製機による調整作業の省力化など、機械化一貫生産体制を進め、作業の省力化と品質向上に努めています。

 当JAのにらは、市場へ年間を通して出荷しています。品種は、試験的な栽培を含めると多くなりますが、主要なものは4品種となります。それぞれの品種の特性を生かした使い分けを行い、周年どり・冬どり・夏どりを組み合わせて周年出荷体制を確立しています。

 また、最近は夏期にネギアザミウマ(スリップス)の被害が非常に大きくなっており、登録薬剤が少ないため、生産現場では防除に苦慮していますが、誘引捕殺粘着シートによる発生予察や防虫ネットの使用等、資材を活用した物理的防除に取り組んでいます。


4.出荷体制

 当JAではにらは管内6ヶ所の集荷場で集荷され、取引市場に出荷されています。販売先は京浜・東北・県内の全21市場となっています。出荷規格は県統一規格に準じており、基本的にはAL、L、Aの3等級となり、葉幅や葉長の差により格付けされますが、主にAL品が出荷の中心となります。また全ての集荷場に予冷庫が設置されており、検査の終わったにらは直ちに入庫し、市場へトラック輸送するまで予冷処理し、品質管理の徹底に努めています。

にら周年出荷体系


5.販売戦略
(1) FG出荷
 管内の大平地区では平成11年度に、にら包装予冷施設を設置しました。これは、近年の消費動向により量販店からの1束ごとのフィルム包装による出荷要請に応えるためです。さらに、出荷調整作業の省力化を図り、労力軽減を含め生産の拡大と品質管理に重点を置いた有利販売により、一層の産地のブランド化を推進することともなっています。管内の組織では唯一、スーパーなどの店頭にすぐ陳列できるFG(フレッシュ・グリーン)包装で全量を出荷し「元気ニラ」のネーミングで販売しています。生産者が110gに束ねたにらを、通いコンテナで包装センターへ搬入し、センターで1束ずつ包装して、1箱40袋詰めに箱詰めし市場へ輸送します。基本的には毎日集荷を行い、京浜方面の取引市場5社の要望に応えられる体制をとっています。大平地区のにらは、包装センターが稼働する前から品質の高さでは定評がありましたが、現在は共同選別のため、生産者はさらに厳選したものを出荷するようになり、市場担当者からは「品質が良く、クレームはでたことがない」との話をいただくほど高く評価されており、栃木県内でも随一の高値販売となっています。


FG包装

(2) ミネラルにら
 管内の藤岡地区では、「同じにらでも他とは差別化を図りたい」との生産者の思いのもと、にらのミネラル栽培に取り組んでいます。ミネラル栽培とは、日本総合医学界理事長の中島常允氏が創始した農法で、生産者個々のほ場について、多量要素から微量要素までの土壌養分を分析し、その結果から必要なミネラル成分を補給・調整することにより、作物に適した健全な土づくりを基本とする栽培法です。藤岡地区では生産者の半数以上が取り組んでおり、一般栽培のものとは差別化して販売されています。この農法で栽培されたにらは「ミネラル成分が豊富で、甘みがありおいしい」「他のにらよりも棚持ちがする」と市場でも高く評価されています。


ミネラルにら

(3) 多様化する販売の対応
 JA営農部では、本年の4月より東京太田市場内の全農とちぎ園芸部東京青果事務所駐在として職員を1名派遣しています。目的は青果物流通の多くを取り扱う市場流通を研修し、専門的かつ高度な知識により、提案型販売を通じて多様化する青果物販売に対応することです。現在は次のような業務を行っています。
(1)JAしもつけ産青果物の品質調査
(2)     〃     販売サポート
(3)消費者ニーズ収集による産地へのフィードバック
(4)販売に対する商談

 その他有利販売につながる業務を遂行しており、にらをはじめとするJAしもつけ産青果物を少しでも高く販売するため日々奮闘しています。

一言アピール   にらは栄養価の高い緑黄色野菜で、ビタミンA、B1、B2、C、カルシウムが多く含まれています。また独特のにおいは、にらに含まれる成分の硫化アリルによるものです。硫化アリルの一種であるアリシンはビタミンB1の吸収を高める、胃腸の粘膜を刺激し消化を助ける、肉・魚の臭みを和らげるなどの働きがあります。

問い合わせ先
下野農業協同組合
 営農部園芸課
〒328-0011
栃木県栃木市大宮町1422
TEL 0282-29-7008
FAX 0282-29-7030
ホームページ
http://www.cc9.ne.jp/~ja-shimotsuke/




今月の野菜
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