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産地紹介


「夢大地かもと」
―熊本県山鹿市、植木町(すいか)―

鹿本農業協同組合  園芸特産部  部長 渡邊 和敏


1.地域の概要

 鹿本農業協同組合が管轄する鹿本地域は、熊本県の最北部に位置し、1市1町の山鹿市(平成17年1月15日、1市4町合併)、植木町で構成されています。総面積364.6km2の地域で、気象条件は平均気温15.3℃、平均年間降雨量2,006mm、初霜10月15日、晩霜5月6日と比較的温暖な気候です。

 交通手段としては、国道3号線が管内の中央を南北に縦断しており、また、九州縦貫自動車道が南部を横断し、植木ICがあるなど比較的交通の便に恵まれています。

 また、農業地帯区分は、北部は県境の中山間地帯、中部の平坦水田地帯、南部の畑作地帯と3つに大別されます。

 平坦水田、畑作地帯は、野菜、米、麦、畜産、果樹、花きなどが幅広く営農が行われていますが、その中で、施設園芸のすいか、メロンが生産団地を形成し、鹿本地域農業の機軸となっています。

 一方、北部の中山間地帯は、米、麦、畜産、果樹、筍、茶、花きなどの営農が中心となっていますが、近年、場所を選んで施設園芸を導入し、アスパラガス、いちごなどの産地化がなされています。

 鹿本地域が、すいかの大産地になった要因としては、畑作地帯の植木・鹿央地区は、昔、甘藷・養蚕が主体の営農体系で収益性が低い状況でしたが、すいかのトンネル・ハウス栽培の普及で、収益性が高まり、産地が拡大していったことや、水田地帯の山鹿地区などは、米とすいかの営農体系が拡大していったことなどが挙げられます。


2.産地の変遷

1 共同出荷体制
 すいかの共同出荷は、昭和29年に植木町の旧山本農協で清水園芸組合が結成され、熊本市の市場に共同出荷したのが始まりです。昭和32年からは北九州・福岡・筑豊地方に出荷が行われるようになり、昭和33年には各集落に園芸組合が設立されました。その後、農協組織(農協園芸部)に統合され、昭和36年7月14日、15日国鉄植木駅から大阪市場に初出荷されました。
 また、山鹿市、鹿央町においても、各集落ごとに出荷組合が結成され、昭和37年から農協共同販売が始まりました。

2 品種の推移
 当初の品種は、無地皮の「はやぶさ」・「三山」が主流で食味は良好でしたが、当時の道路状況が悪いため割れやすく、輸送性に難がありました。その後、輸送性に優れた無地皮の「光玉みどり」に変わり、縞皮の「あすか」、形状の良い「縞王」・「天竜2号」に変わりました。
 その後、現在は「祭ばやし」が当地域の代表的な品種となっています。

3 出荷方法の推移
 当初、植木駅から大阪に向けて出荷されたときは、麦藁で1玉ずつ包むという大変な作業を行っていました。その後、包装形態が紙袋に代わり、小字、大字単位で個人の納屋・公民館で集荷し、農協の指導員、園芸部会の役員が検査してから出荷しました。

 さらに、昭和44年に紙袋からダンボール出荷となり、各集落ごとに出荷所を設置し、農家が直接すいかをバラで持ち込み、そこで指導員、役員などが選果を行い、共選、共販体制が始まりました。ダンボールへの推進を図った当初は、生産者からはコスト高に繋がる懸念から、「東京の大臣様に食わすとか」といった皮肉をこめた声などもあり、苦労しました。

4 栽培面積の拡大―接木技術の普及―
 すいかの栽培技術は、当初は自根の苗をウリバエ対策として古新聞で四角い筒状に囲い、つるが這い出るまでそのままにしておく方法でした。自根栽培であったために8~10年に一度しか同じほ場で栽培できず、面積の拡大が進みませんでした。

 そこで、すいかの連作を可能にするために、すいかの接木(ユウガオの台木に毛糸ですいかの苗を結ぶ)が昭和6年に熊本県で最初に植木町で行われました。これをきっかけに、徐々に接木技術が確立され、隣接する市町へも普及しました。昭和35年頃にはプラスチック製のクリップが導入され、さし接木が始まりました。

5 育苗の推移―太陽熱育苗による苗の安定供給―
 育苗床は稲藁の踏み込み温床で、苗を牛糞練り床(牛糞と土を混合し、水で練り合わせ、適度の水分状態になってから9cm角程度に切る)に植え込み、被覆は窓枠を利用したガラスや紙にエコー油をひいたもので、保温にはコモ掛けをする方法でした。

 昭和30年代に入り、電熱育苗が導入されましたが立ち枯れ病の発生が多く、また、徒長苗になりやすいという欠点がありました。昭和42年に山本園芸組合が高知県の太陽熱だけによる育苗を導入・普及したことにより、ガッチリした苗が安定的に供給されるようになりました。

6 施設化への進展―施設化による安定―
 昭和30年代までのすいか栽培は雨との闘いでしたが、昭和41年に竹ホロによる大型トンネル(15尺)で栽培したところ、炭そ病の被害が完全に無くなりました。またその後、パイプハウスを建設したことにより、1番果を5月下旬に2番果を7月中・下旬に出荷ができるようになりました。

 以上の成果が見られたことから、熊本県では昭和45年からハウス建設への補助、大型トンネル建設への融資事業に踏み切りました。また、「熊本県人は熱しやすく隣人には負けたくない」という気質もあることから、「植木すいか」、「山鹿すいか」、「鹿央すいか」産地での施設化が急速に進みました。


3.近年のすいかの生産概要

1 栽培と品種
 現在の栽培体系については、下の図表のとおりです。


すいかの栽培カレンダー


2 すいかの過去5年の生産推移

3 生産体制―「夢大地かもと」の統一ブランド―
 農産物の生産基盤は、確固たる組織が不可欠であることから、JA鹿本園芸部では平成6年度に「夢大地かもと」の統一ネーミングを制定し、ブランドの確立、有利販売に努めるための生産体制を組織化しました。

 園芸部において、すいか、メロンの栽培耕種基準の内容検討(品種・栽培基準など)、栽培面積の部会員からの取りまとめ、すいか着果数の取りまとめおよび農協への報告、熟度査定会、本部役員による販売督励、園芸部の女性部による消費地量販店、地元直売所での対面試食会や宣伝会の実施などの活動を行っています。

4 出荷体制
 昭和61年に山鹿地区、昭和63年に植木地区、平成元年に鹿央地区にすいかの選果機械を導入し、平成12年にはこの3つの地区の選果ラインに光糖度センサーを導入し、「祭ばやし」「富士光TR」ともに糖度10.5以上のものを出荷することにより、高品質の生産に努め、さらなるブランドの確立に向けて出荷を図っています。 園芸部の組織図り




選果の様子
すいかの熟度査定会の様子


 
 
選果の様子
すいかの熟度査定会の様子


春夏すいか規格表

※ 重量目安と記載しているのは、機械選果のために容積より換算のため


5 販売戦略

 平成6年に「夢大地かもと」統一ネーミングで出荷を開始してからは、指定市場を90社から33社へ絞り込み、かつ、重点市場5社との定期的な取引会議や、指定市場の担当者との会議を各地区(関東、関西)で行っています。

 また平成12年産より、「おいしいすいかをつくる」という初心にもどり、温度や水分、肥料を徹底的に管理し、より糖度が高く食感の良い「よかよかすいか」に取り組み、さらに平成17年産からは生産者を5~6名単位にグループ化し、生産の段階からグループ毎に出荷先(東京青果など)を決めるなど、販売に対する意識をもっての生産に取り組んでいます。

 平成14年産より品種「祭ばやし」を本格的に導入しましたが、この「祭ばやし」は、今までのすいかが「かき氷」的な味と表現するなら、「アイスクリーム」の様なまろやかな味で、市場において高い評価をうけ、「夢大地かもと」を代表する品種となりました。

 また、長年市場から要望のあったM(5kg)2玉規格の出荷を、平成14年産より当JAで試験的に開始したところ、市場の評価が高かったことから、翌年から熊本全産地で取り組まれるようになりました。

 さらに、平成16年産から、すべてのすいかに生産者の顔写真付きシールを貼り、平成17年産からはQRコード(2次元バーコード)をつけて「安心・安全」をアピールし、各部会員が自己責任を担って出荷を行っています。
すべてのすいかに貼っているQRコード


 当JAでは、エコファーマー制度に沿って有機肥料、減農薬、太陽熱による土壌殺菌などによる生産を行うとともに、生産者の顔が分かる生産履歴など、部会員が自己責任を認識しての出荷体制を新たな販売戦略の武器として販売していきたいと思っています。

 また、市場法の改正により、多様な販売チャンネルが想定されることを踏まえて、JAに販売企画専任の職員を2名配置するなど、今後の販売チャンネルの多様化に対応していきたいと考えています。


一言アピール
すいかの品種
スーパーエース
:果肉が鮮紅色。シャリ感が強く、高糖度。

祭ばやし
:アイスクリームの様なまろやか味、高糖度。果皮色は比較的濃く、縞柄が中虎で整った見栄えのする外観。

ひとりじめ
:大玉のようなシャリ感と高い糖度をもった小玉スイカ。

富士光TR
:皮肌近くまで、色、質、味が変らない。肉質は緻密でシャリ感があり、糖度もよく上がり食味は良い。

栽培・出荷等の特徴
①有機肥料70%以上を使用して植え付けをしています。
②50%減農薬(慣行比)を目標に栽培を行っています。
③太陽熱などを使用した殺菌や土作りなど自然の恵みを活用しています。
④糖度センサーによる品質の最終チェックを行っています。


今月の野菜「すいか」 

今月の野菜
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